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気仙川水門土木工事の地図

気仙川水門土木工事の地図

太平洋へと流れる気仙川の河口に建設する水門工事には少し変わった事情が。
解決のためにはさまざまな工夫が隠されていた!

陸前高田の安全を守る!超~巨大な水門工事

東京から東北新幹線に乗り、北へ向かうアンころハザ麻呂
おや?なにやら不安げな表情だけど…?

ハザ麻呂 アンころよ、雪が降っておるようじゃが…現場は休みではないのか?」
アンころ 「まだそういう連絡は来てないなあ。とはいえ…寒そう〜」

冬の東北は初めての2人。新幹線を一ノ関駅で下車して、大船渡線に揺られること約1時間半。さらに気仙沼駅からBRT(バス高速輸送システム)に乗り換え30分ほど経つと…。

アンころハザ麻呂 「海が見えてきた〜!」

到着したのは岩手県の陸前高田市。目の前は見渡す限りの太平洋、気仙川の河口に施工中の水門が今回の現場です!

ご存知の通り、陸前高田は2011年3月11日に発生した東日本大震災で甚大な被害を受けた地域。復興に向けて周辺では防潮堤の建設や、住宅・商業施設などの高台かさあげ工事などが進んでいる。現場のすぐ近くには、大津波にも耐え抜き、震災のシンボルとして残されている奇跡の一本松も。

  • 奇跡の一本松 奇跡の一本松

    事務所から撮影した奇跡の一本松。
    現在は震災遺構として後世に受け継ぐために、
    モニュメントとして整備されている

住民の皆さんが安心して暮らせる水門づくり

事務所で迎えてくれたのは、ほんわかした雰囲気の所長・マァちゃんと、頼れる兄貴風の副所長・コウちゃん

  • ゴルフ好きのマァちゃんです。ベストスコアは70台
  • 浦和レッズ命のコウちゃんです
マァちゃんコウちゃん 「いらっしゃ〜い。陸前高田へようこそ」
ハザ麻呂 「本日はよろしくお願い致す。雪の中での屋外作業、ご苦労であるな」
マァちゃん 「よほどの大雪でもない限り作業は行うよ。陸前高田は岩手県でも南部の海沿いで、雪も少なく比較的温暖な気候。別名“岩手の湘南”と呼ばれているんだよ。我々は“岩手の湘南ボーイ”というわけだ(笑)」
アンころハザ麻呂 「(い、岩手の湘南ボーイ…?)」
  • 気仙川の虹

海には虹が見えることも多いそう。大きく美しい虹はマァちゃんが撮影したもの

マァちゃん 「ところで、2人は周辺の様子は見てきたかな?」
アンころ 「来る途中に少しですが…。報道である程度の状況は知っているつもりでしたが、実際に震災遺構として残されている建造物などを見ると、想像以上の被害の大きさに胸がつまりました」
  • 震災前
  • 震災後

震災前(左)と震災後(右)の写真。右側に位置する市街地の大部分が浸水し、
かつては防潮林で日本百景に選ばれた「高田松原(たかたまつばら)」も姿を消した

マァちゃん 「この現場で作っている水門は、大地震などの災害が起きた際に、太平洋から気仙川への津波の侵入を防ぐためのもの。いわば、住民の皆さんが安心して暮らせるための大事な砦なんだ。県内でも最大規模の水門なので、しっかりレポートしてね」
  • 海水門の完成イメージ

海側からの水門の完成イメージ。水門に連結して、防潮堤と高田松原の再建も進んでいる(他社施工)

いざ現場へ!想像以上のスケールの大きさに圧倒

事務所で話していると、雪も止んで晴れ模様に!
自称・晴れ男というコウちゃんは「僕の日頃の行いがいいからね」とニヤリ。

コウちゃん 「では、現場に行ってみよう!」
  • 水門構造物

    目の前に高くそびえる水門構造物!
    思わず口を開けて見上げてしまう

ハザ麻呂 「いざ近くに来てみると…かなり大きいのう」
コウちゃん 「当工事の水門は、左右岸の延長が211 m、高さ30.6mの堰柱(せきちゅう)が6基ある5径間の構造だよ。それぞれの堰柱の間には、『カーテンウォール』と呼ばれる海面高12.5mまであるコンクリート製の壁と、鋼製の『ゲート』が設置されるんだよ。津波の時はゲートを下げ、カーテンウォールとゲートで川への津波の侵入を防ぐ仕組みで、数十年~百数十年の頻度で発生する津波を防げる想定なんだ。それぞれの堰柱の上には操作室があるけれど、大津波警報などに反応して自動的にゲートを閉められるようになる予定だよ」
アンころ 「操作する人の身の安全のために、無人で操作できるようになっているんですね」
  • 水門構造図

    水門本体の概要がこちら。水門本体の他に、両岸を行き来できる管理橋や、右岸側の防潮堤なども工事に含まれる

意外とシンプル!?水の中で水門をつくるには?

ハザ麻呂 「ところでコウちゃん殿、水門には堰柱やその土台といった巨大な物体を水の中につくらねばならぬが…。重い酸素ボンベを担いで水中で作業するのは、さぞ大変なのでは?」
コウちゃん 「本当にそうだったら大変だね(笑)。その答えは、上から見るとわかるよ!」

一行がやって来たのは、海面高17.5m、現場が一望できる操作室。現在作業中というあたりを見てみると…。

アンころハザ麻呂 「水がない!?」
  • 水門工事

    本来は海であるはずの場所が陸になっている。
    これはいったい…?

コウちゃん 「工事範囲を『仮締切』と呼ばれる壁でグルリと囲って、中の海水をポンプで抜いているから陸地になっているんだよ。工事はⅠ期とⅡ期に分けていて、半分ずつ完成させながら進めているんだ。Ⅰ期工事は完成していて、現在はⅡ期工事を施工しているよ」
アンころ 「そうすることで陸と同じように作業ができるってわけですね」
  • 水門工事地図

    Ⅰ期では赤色の線、Ⅱ期では青色の線のように仮締切を設置。陸続きに囲み、中の海水を抜いて作業する

コウちゃん 「仮締切の設置後に全部の海水を抜くのには約1週間かかったよ。その後の工事中も、河床から湧き出る水などを排水するために、ポンプは常に動かしているんだ。排水は、地元の漁協さんなどと相談して、水質に影響のないように配慮しながら処理しているよ」
ハザ麻呂 「生態系を壊さず、環境に配慮した工事を心がけておるのじゃな」
コウちゃん 「Ⅰ期とⅡ期に分けているのは、川全体を外側に迂回させることができないからなんだ。川を半分に分けてⅠ期工事で右岸側の3径間、Ⅱ期工事で左岸側の2径間を完成させるから工期が7年もかかるんだ」
アンころ 「ところで、いま見えているところでは何をつくっているんですか?水門本体からは離れていますよね?」
コウちゃん 「水叩(みずたたき)といって、水門本体を護るためのコンクリートの床板だよ。水の流れで水門本体が洗掘されないためにあるんだ。さらに、水叩の上下流には2t/個の根固めブロックを設置しているよ。そう、これは、水叩の洗掘防止のためだね!」
  • 水門工事見取り図
アンころ 「水叩を含めると、水門の奥行きは67m。奥行きもかなり大きいんですね」
コウちゃん 「完成後は水中に隠れてしまうから誰にも気づかれないけどね。見ることができるのは、いまのうちだよ!」
  • Ⅰ期工事の仮締切撤去前

    Ⅰ期工事の仮締切撤去前(川の水を入れる前)。
    現在は、右岸側3径間の本体底版・水叩・根固め
    ブロックは川の底に

1日にミキサー車400台がフル稼働!?メインイベント「コンクリート打設(だせつ)」

アンころ 「この現場ならではのエピソードってありますか?」
コウちゃん 「う〜ん、いろいろあるけれど…。コンクリートの打設かな」
ハザ麻呂 「コンクリートの打設?そんなものは土木工事の基本じゃろう。新入社員研修でもやっておったぞ」
コウちゃん 「基本なんだけど、なにしろこれだけ大きな構造物をつくるには、相当な量のコンクリートが必要だからね。この水門工事では、全体で約62,000立米(りゅうべい)ものコンクリートが使用されているんだよ」
ハザ麻呂 「竜兵衛とは…はて、どこの御仁かの???」
アンころ 「いやいや、人の名前じゃなくて…。立米は立方メートル(㎥)のこと。つまり、一辺1mの立方体62,000個分ものコンクリートが使われてるってこと!」
  • 竜兵衛…?はて?どなたかの? 立米(㎥)
コウちゃん 「建設業界ではよく使われる言葉だね(笑)。コンクリートは一気に打設しなければならないので、大量に打設する日は特に気が引き締まるよ。当工事では1日で1,000 ㎥以上打設することが、全部で22回もあるんだ」
アンころ 「一番大きいものだと、どれくらいのサイズになるんですか?」
コウちゃん 「中間床板という底版部分が、幅23.2m、奥行き35m、高さ2m。1日で約1,600㎥、400台分ものミキサー車が絶えず訪れる一大イベントなんだよ」
ハザ麻呂 「ミキサー車400台!?小仏トンネル(東京・八王子の有名な渋滞スポット)も真っ青の大渋滞ではないか…!」
  • コンクリートミキサー車400台 1台4㎥
コウちゃん 「大量に打設する日は2か月以上も前に決めるんだ。コンクリートが大量に必要だから2か所の生コンプラント(生コン工場)を終日貸切にするからね。また、コンクリートを流し込む大型のポンプ車も4台予約する。だから、悪天候などの理由がない限りは絶対にその日に打設しなければならないんだよ。工程の遅れは絶対に許されないから打設日まで工程管理は重要なんだ」
ハザ麻呂 「うぅ…聞いただけで胃が痛くなってきた」
コウちゃん 「もちろん、当日の品質管理も超重要!打設前の鉄筋・型枠などのチェック、打設中の状況確認、打設後の養生などなどなど…。失敗は許されないからね!当日の天候にも左右されるので、臨機応変な対応も必要になってくる。雨でコンクリートの水分量が増えてしまうとコンクリートが十分な強度を保てなくなってしまうからね」
アンころ 「基本だけど、知恵や経験が生きてくるんですね。奥深いコンクリート打設の世界…!」
コウちゃん 「その通り♪もっとも、僕は日頃の行いがいいから雨になったことはないけどね(ニヤリ)」
アンころハザ麻呂 コウちゃん、恐るべし…!」

1日の工程の遅れも許されない…意外な理由とは?

コウちゃん 「その他にも、工程計画は苦労したね。この現場では、工程を遅らせられない特殊な事情があるんだ」
ハザ麻呂 「なにやらワケありのようじゃな。我輩で良ければ聞くぞ」
コウちゃん 「もちろんひとつは、一刻も早く地域の皆さんの安全を守る水門を完成させるため。そしてもうひとつは…大切な“彼ら”が帰ってくるためなんだ」
アンころハザ麻呂 「か、彼ら…?」
  • コウちゃんとアンころとハザ麻呂

    ハザ麻呂、本当にわかってるの…?

コウちゃん 「気仙川はサケの遡上(そじょう)が盛んで、秋になると産卵を迎えたサケたちが川に帰ってくるんだ。そのため毎年9月末~1月末の期間は騒音・振動を与えるような水中の工事を控える必要があるんだよ」
アンころ 「“彼ら”って、サケのことだったんですね」
コウちゃん 「さらに、春にはアユの遡上やサケの稚魚の放流もある。だから、これらの時期は、ある作業ができないんだ。さて、ある作業とは何でしょう?」
ハザ麻呂 「もしや、先ほど説明のあった仮締切ではないか?こればっかりは水中での作業じゃろう!」
コウちゃん 「大正解!ハザ麻呂、冴えてるね〜」
ハザ麻呂 「ホ〜ッホッホ♪当然じゃ」
コウちゃん 「仮締切は6月~9月末の間に完成させなければならないから、工程的に非常に厳しいんだ。海からの作業も増員し、最大時は4班の船舶を使ってなんとか完成させたよ。その時期は、台風も来るし…本当に大変だったよ…」
  • 仮締切は陸上班に加えて海上班も投入

    仮締切は陸上班に加えて海上班も投入。
    100t~200t級のクレーン付台船4班が集結した

コウちゃん 「さらに工程の話をすると、ゲートの設置は他社の施工になるので、通常の進め方だと、Ⅰ期の水門構造物工事完成→Ⅰ期のゲート設置→Ⅰ期の仮締切の撤去となる。しかし、それではサケの遡上シーズンと重なるため、作業ができない期間が発生してしまうんだ」
  • 通常の工事だと
アンころ 「河川を半分ずつ囲って工事をしないといけないから、Ⅰ期の仮締切を撤去しなければⅡ期の作業に取りかかれないんですね…」
ハザ麻呂 「サケがやって来るまでに、Ⅱ期の仮締切設置まで終わらせねば…!コウちゃん殿、なんとかならぬのか!?」
コウちゃん 「はい、なんとかしました(笑)。水門構造物工事とゲート設置を同時に進められるように、いろいろな工夫をしたんだ。例えば、ゲート工事の作業スペースを確保するために水門構造物工事の足場を空中に浮かしたり、特殊な型枠を使ったり。ここでは細かい説明は省くけど、さまざまなアイデアとゲート工事業者との協力体制で工程を短縮したんだ。構造物工事とゲート工事を同時に進めるのは前例も少なく、いろいろ苦労したよ…(遠い目)」
  • こうやって工夫!

さらに、管理橋の施工にもひと工夫。通常は現場で一からつくるところを、福島県の工場で分割して製作したパーツを納入し、現場で接合して架設することで工期の短縮に成功。さまざまな工夫の結果、無事に遡上シーズンまでに予定していた工程を完了できた!

  • 製作済みの橋のパーツ
  • クレーンで引き上げる

製作済みの橋のパーツを7つ接合してクレーンで引き上げて架設。
現場で鉄筋・型枠を組みコンクリートを打設する工程がカットできる

コウちゃん 「現場によっていろいろな事情がある。それをクリアするために工夫して進めるのは大変だけれど、僕たちの仕事のおもしろさでもあるんだよ」
ハザ麻呂 「見事な働きぶりじゃ!きっとサケも喜んでおることじゃろう」
  • 産卵に行ってきまーす

20代の若手社員が大集合!

今回、若手インタビューを受けてくれたのは、入社3年目のまっつん

  • 3年目のまっつんです。週末は仙台でバレーボールをしています。
アンころ まっつんは、自分からこの現場を希望したと聞いてるけど、東北出身なの?」
まっつん 「生まれは佐賀県です。震災の時はまだ学生で九州にいたのですが、安藤ハザマで働くことが決まり、全国各地に現場がある中で、せっかくなら復興の力になれるものを担当したいと思いました」
ハザ麻呂 「現場ではどんな仕事を担当しておられるのかな?」
まっつん 「堰柱や水叩の現場での施工管理、鉄筋の発注管理などです。最近は自分に任せてもらえる仕事も増えてきました。地域の人の安全を守る水門をつくることのやりがいも感じています」

まっつんの他にも、この現場は若手社員が多いとのことで、せっかくなら登場してもらうことに。コウちゃんの「若手集合〜!」のかけ声で、20代の社員が大集合!

  • ゲーム大好き!1年目のもっちーです。 福岡生まれの九州男児!2年目のなおきんぐです。 現場の癒し系3年目のゆきちゃんです。 休日は家族サービス!5年目のたーちゃんです。
アンころ 「この現場で働いてみて、どうですか?」
たーちゃん 「ここは若手も多いので、わからないことがあると気軽に相談し合えるのが良いですね」
ゆきちゃん 「明るい現場になるように、職人さんたちとはコミュニケーションをとるように心がけてます。仕事に関する内容はもちろん、時には冗談を言うこともあります(笑)。日々勉強の連続です」
なおきんぐ 「2年目になって現場にもようやく慣れてきたように思います。自分の担当も任されるようになり、ますます仕事が楽しくなってきました」
もっちー 「新入社員研修後、配属されて4か月目です。現場の印象は…何より水門の大きさに驚きました。いまは先輩方のサポートをしていますが、早く担当を持てるようにがんばりたいです!」
ハザ麻呂 「活気もあるし、和気あいあいとした良い現場であるな」
コウちゃん 「後輩の面倒を先輩がよく見てくれているおかげだね。入社年次が近いと先輩も後輩の悩みに気づきやすいし、後輩も相談しやすい。若手社員を指導する僕たちも助かっているよ」
アンころ 「そんな若手たちをお兄さん的ポジションで見守るコウちゃん副所長と、優しいマァちゃん所長もいるからこそ、信頼関係が築けているんですね。ナイスチームワークで完成に向けてがんばってください!」

取材も終わり、帰りは気仙沼でちょっと寄り道!ここには過去に訪問した気仙沼市気仙沼駅前地区災害公営住宅があるのだ。

  • 気仙沼駅前災害公営住宅

    2017年5月に完成。
    現在は被災した方々の住まいとして活用されている

アンころ 「東北のいたるところで復興は進んでいるんだね」
ハザ麻呂 「進んできてはいるが、まだまだ十分ではない。これからも進めていかなければならぬな。…ところで、現地へ訪れた者ができる大事な復興支援を忘れてはおらぬだろうか?」
アンころ 「というと…?」
ハザ麻呂 「地元のおいしいものを食べるのも復興支援のひとつではなかろうか。サケやイクラ、ウニ、牡蠣、ホタテ、気仙沼といえばフカヒレも忘れるわけにはいかぬ…!遅れをとるでないぞ!」
アンころ 「いざ!東北グルメの旅へ!」
  • 東北はうまいものがいっぱいじゃ! もう…食べることばかり… と言いつつ、しっかりと東北グルメを手に入れているアンころ

<工事概要>

工事名称 二級河川気仙川筋砂盛地区河川災害復旧(23災589号)水門土木工事
所在地 岩手県陸前高田市気仙町字砂盛地内
発注者 岩手県
施工者 安藤ハザマ・戸田建設・豊島建設特定共同企業体
工期 2013年3月7日~2020年2月28日
工事概要 水門工(土木工事)…1基(5径間)
水門操作室上屋建築…6棟
管理橋工…195m
旧水門解体工・護岸コンクリート工・仮設工 他
取材時期 2018年12月

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