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2016年


山岳トンネル切羽の地質状況を人工知能により自動評価
− 建設現場にもAI利活用の時代へ −

2016年9月20日

安藤ハザマ(本社:東京都港区、社長:野村俊明)はこのたび、日本システムウエア(本社:東京都渋谷区、社長:多田 尚二)と共同で、トンネル切羽における地質評価の高度化・自動化を目指した「トンネル切羽AI自動評価システム」(特許出願:2016-146956)を開発し、施工現場における試験運用を開始しました。

1. 開発の背景・課題
トンネル建設では、計画地点における地質状況を詳細に把握し、その状況に応じて最適な設計および施工を実施することが重要となります。ただし、山岳トンネルは一般的に延長が長く調査範囲が広いため、調査・設計段階において、種々の制約があるとともに調査精度自体に限界があることから、事前に広範の地山深部にわたり詳細な地質状況を把握することは困難です。このため、施工段階においては、トンネル切羽の地質状況を直接、詳細に確認することにより、事前に想定していた地質と実際との差異を評価し、その状況に応じて支保パターンの変更や追加対策工を検討し、設計や施工計画を逐次見直すことが重要となります。
掘削時の地質状況観察は、通常、1日1回、数m間隔で実施され、切羽観察記録として整理されます。そして、企業者と現地で行う地山判定の立会時点で、既掘削箇所は吹付コンクリートが施されているため、地質状況を直接確認することはできません。そのため、その時点で唯一直接確認できる切羽の地質状況を評価するとともに、切羽観察記録を基に近傍の地質状況を確認し、地山判定を行います。また、地山判定の全てに地質専門技術者が立ち会うことは難しく、現場技術者が上述した情報のみから、トンネル掘削の進捗に伴う地質状況の変化の確認や、切羽における岩盤の工学的特性の評価などを適切に実施することは困難な場合があり、これまで課題となっていました。

2. 本システムの概要
これに対して、今回開発した「トンネル切羽AI自動評価システム」は、人工知能の画像認識技術を活用し、切羽写真から岩盤の工学的特性を自動評価するものです(図1参照)。開発にあたっては、当社開発のTFT探査(図2参照)(※1)より得られる切羽の弾性波速度(※2)と、その地点の切羽写真を教師データ(※3)として、CNN法(※4)による人工知能の機械学習を多数の切羽で実施しました。これにより、地質専門技術者が経験的に把握している、新鮮岩〜弱風化岩〜風化岩と漸移的に変化する岩盤の外観と、弾性波速度との関係を人工知能が精度よく認識することが分かりました。現時点で、掘削が完了した花崗岩を地山とする2地点のトンネルにおける「学習」を完了し、切羽写真より弾性波速度を8割以上の認識率で特定することを確認しています。

3. 今後の展開について
今後、掘削中のトンネル現場での試験運用結果をもとに、支保パターンはもとより、余掘りや掘り残し部を最小限にする最適な火薬量の設定などに関して自動評価の高精度化を図っていきます。そして、本システムを当社施工の全トンネル現場と連動して適用できるシステムへ進化させるとともに、さらに、他工種や地質以外の工学的特性の自動評価への適用に関する検討を併せて進めてまいります。
このように、当社は人工知能活用技術を施工現場へ積極的に導入・展開し、施工中の様々な場面で必要な各種評価の高度化・自動化、そしてこれに伴う施工の最適化・省力化に取り組んでいきます。

※1:TFT探査(Tunnel Face Tester)
トンネル掘削発破を震源として、切羽近傍に設置したセンサーで地中に伝播する弾性波を測定することにより、切羽前方の地山不良部分布箇所の特定、切羽近傍の弾性波速度算出を同時に実施する探査手法。
※2:弾性波速度
地震や発破などを震源として地中を伝播する波の速度であり、既往の研究により、岩盤の工学的特性との相関関係が確認されている。広範の地山深部に建設されるトンネル現場の調査段階において、地表面から弾性波探査を実施することにより得られる、トンネル掘削箇所における弾性波速度より岩盤の工学的特性を推定する事例が多く、設計段階において支保設計の設定根拠として活用されている。
※3:教師データ
機械学習を実施する際、事前に与えられたデータのことをいう。「例題=先生からの助言」とみなして、それをガイドに学習(=データへの何らかのフィッティング)を行うところからこの名がある。
※4:CNN法(Convolutional Neural Networks)
脳機能に見られるいくつかの特性を、計算機上のシミュレーションによって表現することを目指した数学モデルであるニューラルネットワークを多層化した手法の一つで、畳み込みニューラルネットワークと呼ばれる。これに画像などのデータを入力すると、情報が第1層からより深くへ伝達されるうちに、各層で学習が繰り返される。この過程で、これまでは画像や音声などそれぞれのデータの研究者、技術者が手動で設定していた特徴量が自動で計算される。

図1:トンネル切羽AI自動評価システムの概念図

図2:TFT探査の概念図


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