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2018年


マルチスペクトル画像を利活用した地質状況自動評価システムの構築

2018年 2月 2日

安藤ハザマ(本社:東京都港区、社長:野村俊明)はこのたび、秋田大学、筑波大学と共同で、トンネル切羽や掘削のり面における地質評価の高度化・自動化を目指した「マルチスペクトル画像を利活用した地質状況自動評価システム」(特許出願:2017-083872)を開発し、施工現場における試験運用を開始しました。

1.開発の背景・課題

トンネルやダムなど山岳土木建設現場では計画地点の地質状況を調査し、その状況に応じて最適な設計および施工を実施することになります。ただし、調査・設計段階では種々の制約があるとともに調査精度自体に限界があることから、事前に広範の地山深部にわたり詳細な地質状況を把握することは困難です。そのため、施工段階でトンネル切羽や掘削のり面の地質状況を直接、詳細に確認することにより、事前に想定していた地質と実際との差異を評価し、その状況に応じて設計や施工計画を適宜見直すことが重要となります。また、地質状況の適切な評価には多くの場合地質専門技術者の知見が必要となります。しかし、適切なタイミングで全ての評価に地質専門技術者が立ち会うことは難しく、施工中の地質評価を適切かつ効率的に進めることが最適な現場運営の課題となっています。



2.本システムの概要

2016年に当社は、人工知能の画像認識技術の利活用による岩盤の工学的特性の自動評価システム(「トンネル切羽AI自動評価システム」注(1)を開発し、トンネル支保の設定根拠となる弾性波速度を、切羽の通常の写真画像から80%以上の認識率で自動的に特定することに成功しました。
今回開発したシステムは、マルチスペクトル画像注(2) (図1)の利活用によりAIによる自動評価のさらなる精度向上を目指したものです。トンネル切羽や掘削のり面でスペクトルカメラ注(3) (図2)によりマルチスペクトル画像を取得し、岩石種や風化程度などを自動的に判定します。火山岩と深成岩から各3種類、合わせて6種類の岩石供試体でスペクトル強度注(4)特性の形状(図3)を取得し、その形状と岩石種との関係を教師データ注(5) としてCNN法注(6)に学習させ、90%以上の正答率で岩石種を自動判定することに成功しました。



3.今後の展開について

現在、さらに多くの種類の岩石供試体を用いて岩種評価の自動化の検討を進めると同時に、風化や変質の程度など岩盤の工学的特性に影響を及ぼす要素を定量的に評価する手法を検討しています。また、岩石供試体での検討結果を基に面的に地質状況を自動判定する手法(図4)の開発に着手しており、現状では地質専門技術者に委ねられている地質図作成の自動化の検討も進めています。
今後も、当社は人工知能や有用なセンシング技術などを建設現場へ積極的に導入・展開し、施工中に必要となる各種評価の高度化・自動化、および施工の最適化・省力化に取り組んでいきます。


注(1)
「トンネル切羽AI自動評価システム」:地質専門技術者が経験的に把握している「新鮮岩〜弱風化岩〜強風化岩」と漸移的に変化する岩盤の外観を人工知能が精度よく認識する技術。トンネル支保の設定根拠となる弾性波速度を切羽写真によりAIが80%以上の認識率で特定する。(2016年9月20日公表 特許出願:2016-146956)
注(2)
マルチスペクトル画像:複数の波長帯の電磁波を記録した画像。目視で認識できる可視光線の波長帯の電磁波だけでなく、紫外線や赤外線、遠赤外線など人の目で見えない不可視光線の波長帯の電磁波も記録される。
 
注(3)
スペクトルカメラ:紫外-可視-近赤外線域で波長毎のバンド情報を分光イメージングできるカメラ。当社が今回採用したエバジャパン社製のスペクトルカメラNH-8は、3分程度の撮影時間で、波長範囲380nm-1,000nm のスペクトル反射特性が125 波長帯に分光して取得される。
 
注(4)
スペクトル強度:感光面に入射する光の照度、すなわち単位面積当たりの入射光束で表わされる。
 
注(5)
教師データ:機械学習を実施する際に事前に与えられたデータのことをいう。「例題=先生からの助言」とみなして、それをガイドに学習(=データへの何らかのフィッティング)を行うところからこの名がある。
 
注(6)
CNN法(Convolutional Neural Networks):脳機能に見られるいくつかの特性を、計算機上のシミュレーションによって表現することを目指した数学モデルであるニューラルネットワークを多層化した手法の一つで、畳み込みニューラルネットワークと呼ばれる。これに画像などのデータを入力すると、情報が第1層からより深くへ伝達されるうちに各層で学習が繰り返される。この過程で、これまでは画像や音声などそれぞれのデータの研究者、技術者が手動で設定していた特徴量が自動で計算される。
 

【図1】マルチスペクトル画像の概念図

【図2】スペクトルカメラ(エバジャパン社製 NH-8)の外観および撮影状況

【図3】マルチスペクトル強度特性図

【図4】トンネル切羽における風化度自動評価画像


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