プロジェクトストーリー

Project

プロジェクトストーリー

Project

柔軟な発想と
高い技術力が融合した
工期短縮を実現する
画期的工法

  • ■用 途:
  • 劇場(ホール)・ホテル・事務所・駐車場
  • ■発注者:
  • 一般財団法人日本青年館/独立行政法人日本スポーツ振興センター
  • ■概 要:
  • 地下階=SRC造・地下2階/地上階=S造・地上16階・塔屋1階/敷地面積6,671.16㎡/建築面積2,637.56㎡/延床面積31,844.03㎡/最高高さ69.60m

「日本青年館・
日本スポーツ振興
センタービル」
建設プロジェクト

新国立競技場建設に伴い、東京・神宮外苑エリアにおいて施設の再配置計画が進行している。その中で、ホテルやコンサートホールを有し、全国各地の青年団活動を支える本部事務局もある複合施設「日本青年館」の移転・建替が行われることとなった。
特にこのコンサートホールは、ミュージカルや演劇、音楽ライブなど、数々の公演が行われてきた歴史ある大ホールとして知られていた。昨今、公演開催の需要が高まりを見せているが、首都圏に点在する大ホールの老朽化が著しく、閉鎖や改修工事による休業が相次ぎ、会場数不足が深刻化している。また、首都圏への旅行客数が増加していく中、ホテルの客室不足は観光産業の課題の一つである。今回の移転・建替において求められたのが、コンサートホールやホテルの休業期間を最短にし、営業を早期に再開することだった。安藤ハザマは課題解決のために「1階先行床工法」「メガトラスのリフトアップ工法」を採用し、5ヵ月間の工期短縮を実現した。

地下階と地上階の同時施工と
大型の鉄骨梁「メガトラス」の
リフトアップ工法

今回、新たに建設した「日本青年館・日本スポーツ振興センタービル」は地下2階、地上16階の建物で、コンサートホール・ホテル・事務所を有する複合施設。競争入札時の提案にあたっては、移転・建替によるコンサートホールやホテルの営業停止期間をいかに短縮するかが最重要テーマであった。品質の高いものをどうやって早く完成させるか。そのための発想力と、それを実現させるための技術力が問われた案件だ。安藤ハザマは、与えられた難題に対して二つの提案をした。一つ目が「1階先行床工法」である。これは、掘削、基礎工事の後、地下階を施工する前に1階の床を先行してつくる工法だ。そうすることで、地下の工事と地上の工事を同時に進めることが可能となる。そして二つ目が「メガトラスのリフトアップ工法」である。この建物は、1階から4階までを占めるコンサートホールの上に、事務所やホテルが載る構造である。柱のない大空間を演出するために、鉄骨を三角形状に組み合わせた高強度・高剛性の巨大な梁「メガトラス」をコンサートホールの天井に採用し、上層階を支える計画となった。一般的には、仮設を設けた上階でメガトラスを組み立てるが、ここで安藤ハザマは1階床でメガトラスを組み立ててから吊り上げる「リフトアップ工法」を提案したのだ。上階で組み立てるための大掛かりな仮設を設置する工程がなくなるだけでなく、高所作業の削減によって作業員の安全性確保や作業効率の向上にも繋がる。さらに1階での作業であれば、雨天時にテントなどの養生対応ができるため、品質の確保、工程の遅延防止といったメリットも生まれる。この二つの提案が、プロジェクト受注の決め手となった。

早期完成に向けて現場で生み出されたアイデア
現場と本社のチームワークで難題を克服

受注後、設計部や技術部などの提案メンバーからバトンを受け取った現場のメンバーたちは、提案時に計画された工法を実際にどのように進めていくのか、何をすれば実現できるのかと細かな検討に入った。早期完成に向け、現場から生み出されたアイデアの一つが構台(建設機械・車輌の走行や資材の仮置きに使用される仮設の台)の拡張である。都心にはダンプカーの残土搬出において厳しい規制があり、ロスタイムが生じてしまうため、通常8m程度の構台の幅員を10mに広げた。その結果、重機とダンプカーが行き来できるようになり、ダンプ換算で約330台分にも及ぶ残土搬出を効率良く行うことができた。
続いて、「1階先行床工法」に着手。計画の細部の詰めは、現場を誰よりも知る現場のメンバーに委ねられた。詳細な施工計画をつくり上げ、基礎工事などを経て、1階床の施工を着実に進めていった。そして地下の工事と並行して、「メガトラスのリフトアップ工法」に取り掛かった。この工法における懸念事項は、メガトラスを吊り上げたときに自重で部材がたわむこと、そして最大板厚90mmの鉄骨部材に溶接による縮みや歪みができることだった。そのため、正確な精度管理が必要だった。ここで大きな力を発揮したのが、本社の技術部や構造設計部などの経験豊富な構造技術者たちだ。彼らは事前に構造解析に基づいた施工段階ごとのシミュレーションを実施した。そして、その結果をもとに臨んだリフトアップ当日、およそ500トンの部材が計画通り約4. 5時間で高さ16mに到達。現場メンバーと本社メンバーの協働により、精度の高いメガトラスのリフトアップに成功したのである。

無柱の大ホールとなる空間上部にリフトアップした高強度・高剛性のメガトラス(三角形状に鉄骨を組み合わせた巨大な梁)

確かな高い技術力とノウハウが
遺憾なく発揮されたプロジェクト

その後、メガトラスの上階では、大型クレーンで仮設足場や鉄骨などが次々と運ばれ、事務所やホテルとなる部分の工事が急ピッチで進められた。日を追うごとに建物の鉄骨は空に向かって高さを増していったが、それに伴いメガトラスより上部の鉄骨には、設計時に考慮されていない変形が生じた。この鉄骨部分の変形は、順次ジャッキを利用して矯正されていった。また、上階の鉄骨の組み立てと同時に、下層階の内外装の仕上げ工事が着々と行われた。異なる機能を持つ複合施設は、単一用途の建物と比較すれば克服すべき課題が少なくない。所長はもとより、施工管理など各担当者の責務も大きく、技術者の知見のみならず、いくつもの壁を乗り越えていく推進力が求められた現場だった。言うまでもなく、鳶工や型枠大工、鉄筋工、内装工などの協力会社との緊密な連携は、円滑かつスピーディーな工事進捗に欠かせない要素だった。それらの結集によって、5ヵ月の工期短縮を実現。地下2階、地上16階、低層階に1,249席のホール、高層階にレストランや220室のホテルを備えた「日本青年館・日本スポーツ振興センタービル」は、2017年8月にグランドオープンを迎えた。安藤ハザマの確かな高い技術力とノウハウ、経験値が遺憾なく発揮されたプロジェクトだった。

プロジェクトに参画して

Member’s Voice
  • 塩瀨 奈保美
    施工管理担当 塩瀨 奈保美 2012年入社
    工学部建築工学科卒

    入社して4件目の現場でしたが、何もかもが初めて経験することばかりでした。地下階の施工管理を担当しましたが、仮設工事の図面作成では戸惑うことも多々ありました。ただ、自分が計画したものがかたちになったときの感動や達成感は、これまでの現場以上に大きなものがありました。今後もさまざまなことを吸収し成長していきたいです。

  • 上村 直樹
    事務担当 上村 直樹 2015年入社
    工学部環境共生工学科卒

    今回のようなビッグプロジェクトの場合、事務担当も現場に常駐し、工事が円滑に進むように、事務業務だけでなく事務所の環境整備、作業員の受け入れ業務なども幅広く担当します。ものづくりに関わり、建物がつくられていく醍醐味や迫力を目の当たりにでき、充実した日々を過ごすことができました。完成したときの喜びは忘れられません。

  • 松本 祐司
    施工管理担当 松本 祐司 2010年入社
    デザイン学部建築学科卒

    ここまで大規模な現場は初めてでした。施工方法なども初めて経験することが多くて驚きの連続でしたが、これまでの経験を活かして最適な工法の選定に努めました。目指していたのは、この建物に寄せられていた期待を超えるものづくりをすること。無事に工事が終わり、満足のいく成果が出せたと思っています。やりがい十分の現場でした。

  • 片山 喜隆
    構造解析担当 片山 喜隆 1996年入社
    工学部建築工学科卒

    メガトラスのリフトアップなど、本工事の検討内容が非常に複雑で高度な構造解析が必要とされたため、社内外のサポートを受けながら課題を解決していきました。かつて当社が施工した東京ビッグサイト会議棟でも、同様のリフトアップ工法を採用していたので参考になりました。構造技術者として、非常にやりがいあるプロジェクトでした。

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