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2021年


クラウド環境を活用した山岳トンネルの遠隔臨場支援システムを試行
−トンネル坑内および切羽における施工管理の効率化、接触機会の低減を実現−

2021年7月26日

安藤ハザマ(本社:東京都港区、社長:福富正人)、株式会社エム・ソフト(本社:東京都台東区、代表取締役社長:飯田昌宏)、日本システムウエア株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役 執行役員社長:多田尚二)、山口大学名誉教授中川浩二、筑波大学(キャンパス:茨城県つくば市、システム情報系教授:松島亘志)で構成する山岳トンネル遠隔臨場支援システム開発コンソーシアムは、山岳トンネル坑内および切羽における受発注者の接触機会の低減や施工管理業務の省力化を目的として、クラウド環境を活用した遠隔臨場支援システムを開発しました。2020年11月から現場(注1)での試行実施し、建設現場の生産性向上に効果があることを確認しました。
本コンソーシアムは、内閣府の官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)(注2)の枠組みを活用した国土交通省の「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」に選定されました。2021年3月に適用結果について国土交通省へ報告を行い、2021年5月に総合評価B(試行は一定の成果があり、技術の社会実装に向け今後の技術開発が期待される)の評定を得ました。

1.開発の背景
山岳トンネル工事における施工管理の効率化には、トンネル坑内を俯瞰して、坑内の数百メートルにわたる作業区間の重機や仮設備の配置を適切に管理することが重要です。しかし、山岳トンネル工事は、切羽の進行に伴って施工箇所が移動して作業区間が長くなることや、通常の無線通信では電波が届きにくいことなどから、トンネル全線にわたる施工情報を共有することが困難であり、トンネル全体の坑内状況を効率的に可視化する方法が求められています。
また、山岳トンネル工事では、トンネル掘削時に切羽の地質を評価するために切羽観察を実施します。切羽観察は切羽近傍で行う目視による観察が中心であり、その精度や定量化、安全性が課題となっています。さらに、所定の頻度で、受発注者の双方が切羽観察を行いトンネルの支保パターンを選定する岩判定を実施するのが一般的ですが、この岩判定にあたって作業調整による業務ロスが発生する場合があり、受発注者間のより効率的な地質情報の共有が課題となっています。

2.遠隔臨場支援システムの特長
遠隔臨場支援システムは「トンネル全線の可視化システム」と「切羽地質情報取得システム」から構成されます。各システムに実装した主な特長は以下のとおりです。

(1)トンネル全線の可視化システム(図1)
本システムは、当社が開発した「トンネルリモートビュー」(注3)を利用します。トンネルリモートビューは、360度カメラを取付けた車両で坑内を走行しながら撮影しデータを取得します。車速から走行距離を算出することで、GNSS等を使用できないトンネル坑内でも撮影位置情報を付与することができます。
トンネルリモートビューで取得した撮影データをクラウドサーバに保存し、受発注者が専用ソフトを用いることなくウェブブラウザ上で撮影データを閲覧できる機能を開発しました。閲覧画面の坑内距離カーソルをドラッグすることで坑内の任意の位置に移動します。画面上をドラッグすることで視点が回転し、任意の方向の坑内画像を確認することができます(図2)

(2)切羽地質情報取得システム(図3)
本システムは、従来の目視による切羽観察に代わるものとして、地質評価指標のうち、岩盤の圧縮強度、風化程度、割れ目間隔について定量評価を行います(注4)。他現場で運用を開始していた風化程度と割れ目間隔の評価に加えて、穿孔データによる圧縮強度の評価を当現場で開始しました。
本システムは、カメラやハロゲン照明、制御PCなどを1台の計測車両に搭載します。切羽で取得した計測データと穿孔データを集約し、専用のソフトで処理を行うことで評価結果が出力されます。
そして、本システムによる地質評価結果を受発注者がクラウド上で共有できる機能を開発しました。日々の切羽の地質評価結果をクラウド上にアップロードすることで、受発注者が遠隔地でも切羽の連続的な地質状況を把握できるようになります。本試行では、地質評価結果のクラウド共有による岩判定の省力化に対する効果について検証を行いました。

3.システム適用の効果
遠隔臨場支援システムの適用により以下の効果が得られました。

(1)トンネル全線の可視化システム
概略管理(日常の管理)
現場の状況を画面から把握することができ、施工管理の省力化が可能となりました。
詳細管理(品質出来形の確認)
施工中の覆工状況などを直接現場に行くことなく確認でき、接触機会を低減しつつトンネル工事の品質確保につなげることが可能となりました。
監督管理(発注者による管理)
クラウド共有により、発注者がトンネル全線の坑内状況を容易に把握することができ、現場巡視の省力化が可能となりました。
教育・広報・パトロール
若手職員の教育や一般向けの広報資料のほか、遠隔でのパトロールへの活用に効果が期待できます。

(2)切羽地質情報取得システム
評価の高度化・省力化:従来の担当者による定性的評価が解消され、また、経験の少ない職員でも切羽評価が可能となりました。従来の目視観察結果との比較では、支保パターンの選定では、一致率が100%、各評価項目では圧縮強度で95%、風化度で90%となり、高精度な地質評価が可能となりました。また本システムの活用により、切羽の地質評価に要する時間を約50%削減することができました。
現場臨検の省力化:本システムを用いて受発注者が地質情報を共有することで、定常の岩判定を遠隔実施として、現場臨場を省略することが可能となりました。本試行の場合、現場臨場頻度を約5割程度減できる効果があることを確認しました(図4)
安全性の向上:観察者が切羽に立ち入ることなく十分に離れた位置(約10m)から撮影作業を行うため、職員の肌落ち災害の防止に寄与しました。

4.今後の展開について
今後、計測できる項目の追加や取得画像の高精細化といったシステムの改良を進め、当社の山岳トンネル現場に適用して施工管理のさらなる効率化に取り組んでいきます。また、既設トンネルや導水路などの維持管理工事における点検・調査や災害時の状況確認への活用を検討していきます。


注1:


試行現場
国土交通省中国地方整備局発注 玉島笠岡道路六条院トンネル工事
(工期:2019年3月〜2021年12月)
注2:




官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)
2016年12月に総合科学技術・イノベーション会議と経済財政諮問会議が合同で取りまとめた「科学技術イノベーション官民投資拡大イニシアティブ」に基づき、600兆円経済の実現に向けた最大のエンジンである科学技術イノベーションの創出に向け、官民の研究開発投資の拡大等を目指し2018年度に創設された制度のこと。 (PRISMはPublic/Private R&D Investment Strategic Expansion PrograMの略)
注3:

山岳トンネル工事の坑内状況を可視化−トンネルリモートビューの開発−
(安藤ハザマ:2020年6月22日公表)
注4:

山岳トンネル切羽の地質を自動判定 −圧縮強度、風化度、割れ目状態を定量評価−
(安藤ハザマ:2019年12月11日公表)




図1:トンネル全線の可視化システム構成図


図2:システムの閲覧画面


図3:切羽地質情報取得システム構成図


図4:現場臨場を省力できたと考えられる箇所(赤線)


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