安藤ハザマ(社長:野村俊明)は、2006年に旧安藤建設と旧ハザマで共同開発した地震リスク評価プログラムHASEL(Hazama Ando System for Earthquake Loss Estimation:呼称ヘーゼル)について、解析機能を強化したバージョンアップを行いました。
地震リスク評価プログラムHASELは、建物の建設地点の地震危険度評価、構造物の損傷確率評価、最大予想損失PML(Probable Maximum Loss)(※1)評価、事業停止期間評価などの解析機能を持ち、パソコン上で短時間に一貫計算するプログラムで、デュー・ディリジェンス(不動産価値評価)の地震リスク評価、耐震改修提案に活用してきました。
HASELは、過去の地震被害データの統計値に基づく評価法と、建物の最大応答を精度よく評価する応答スペクトル法(※2)による評価法の2つの解析機能を有しています。
今回のバージョンアップでは、これまでの一質点系モデルを基本とした応答スペクトル法に、多質点系モデルによる応答評価機能(※3)を付加したことで、中高層ビルのPML評価や事業停止期間を、より詳細なモデルで算定することが可能となりました。
さらに、建物の構造体の評価だけではなく、非構造部材や建築設備、生産設備を含むシステム機能の耐震性を評価する解析機能を強化し、たとえば生産工場における生産ラインに着目した機能回復率(事業停止期間)の評価(※4)を行なうことが可能となりました。
当社は、本年4月に安藤ハザマとして新たなスタートを切りましたが、本プログラムを中高層ビルのデュー・ディリジェンスの地震リスク評価のみならず、物流倉庫や生産工場の生産ラインを考慮した耐震対策提案、耐震対策の費用対効果の説明(費用対効果の見える化)等に活用し、企業の事業継続計画(BCP)支援に積極的に展開して参ります。
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最大予想損失率PML
最大級の地震(約500年に1回起きるような地震)が発生した場合の、建物の予想被害額(修復費用)の新築費用(再調達価格)に対する割合。最近のオフィスビルや物流倉庫の賃貸物件では、設計段階でPMLを15%以下にするよう求められる場合がある。 -
応答スペクトル法
周期ごとの最大応答を表す応答スペクトルと建物の固有周期から応答値を求める方法。 -
多質点系モデルによる応答評価機能
地震動を受ける建物の応答値を、等価一質点系モデルに縮約し、建物代表高さの応答加速度、応答変位を評価していたものから、多質点系モデルによる応答評価に展開し、中高層建物の各階の応答加速度や層間変形角を予測し、建物の各階の損傷程度を適切に評価する。
等価一質点系モデルと多質点系モデル -
生産ラインに着目した機能回復率(事業停止期間)の評価
建築設備や生産設備から構成される主要な生産ラインを、直列システムにモデル化し、各部位の脆弱性調査に基づき、想定される地震動に対するシステム全体の機能回復率と復旧期間の関係(下図)を予測する。この図から、システムのボトルネックを明らかにし、耐震対策の効果を検証することができる。
耐震対策前後の機能回復率と復旧期間の関係から、耐震対策の効果を把握