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2008年

「実物大石垣の大型震動実験を実施」

 

〜 ハザマ・関西大学 〜

2008年11月18日

城郭石垣の地震時安定性を実物大模型で検証

    ハザマ(社長:小野俊雄)と関西大学(学長:河田悌一)の「環境都市工学部地盤防災工学研究室 西形准教授」は、今年3月に共同発表した「個別要素法による石垣の安定性評価技術の開発」に続き、城郭石垣(注1の安定性原理を解明し、その修復に役立てるために、大型振動台(注2 を用いた実物大模型実験を行いました。伝統的工法(注3によって構築された実物大の石垣による振動実験はこれまでに例がなく、この成果は学術的にたいへん貴重なもので、伝統的な石積み構造物の耐震性評価や修復事業で活用できるものです。

   城郭などの石垣は、近代工法と違ってモルタルなどを使わない空石積み(注4であり、現代の土木技術の視点では地震時の安定性には大きな問題があるとされてきました。事実、古文書などの記録によると、過去の大地震で崩壊した石垣も少なくありません。しかし、その一方で、大きな地震を経ても築造後400年間安定性を保っている石垣も多数あります。
   石垣の地震時の安定性が工学的手法により評価できれば、文化財として貴重な石垣の保存・保護に大いに役立つだけでなく、石積み構造を新設構造物へ展開する可能性が開けるものと考えられます。こうした伝統的工法による石垣の地震時の挙動については、これまで小型の模型実験等による研究が行なわれてきましたが、こうした実験では実際の石垣の挙動を再現するにはどうしても限界があります。また、個別要素法のような数値解析によるシミュレーション(注5の適用も進められていますが、その解析結果の妥当性を評価するには今回のような大型実験が欠かせません。

    このほど、ハザマと関西大学は、城郭石垣の構築・補修において経験豊富な石工によって、ほぼ実物大の伝統的石垣を大型振動台の上に構築し、最大で、阪神・淡路大震災の最大加速度(818gal)(注6に匹敵する振動を加える実験を行いました。実験結果は、現在共同で分析・評価中ですが、伝統的技法による石垣の耐震性はこれまで考えられていたよりも優れていることがわかってきました。さらに、一定の振動レベルまでは一体として挙動し安定していた石垣が、それを超えると急激に不安定化が進むことや、実際に城郭石垣などで多数見られる、「孕み出し」(注7が地震によって生じることも確認されました。
    この実験には、関西大学以外からも、土木、建築、歴史分野における石垣の研究者に立ち会っていただき、助言を受けております。こうした多面的な視点で検討した研究成果は今後学術論文としてとりまとめ、関連学会などで発表するとともに、両者が共同で開発した石垣の解析技術の有効性を確認・検証し、修復工事に活用していきます。

実験石垣(加振前)
写真-1 実験石垣(加振前)①
 
実験石垣(加振前
写真-2 実験石垣(加振前)②
 
振動により変形した石垣
写真-3 振動により変形した石垣
 
振動により段差が生じた石垣
写真-4 振動により段差が生じた石垣
 
専門家との意見交換
写真-5 専門家との意見交換

注1 城郭石垣
日本の石垣は世界でも類を見ない「反り」を持ち、文化財として価値が高い。しかし、その大半は1600年の関が原の合戦前後に構築されているので、およそ400年以上経過し、経年劣化やその間の地震・豪雨に加えて、明治政府による取り壊しや第二次大戦で被害を受けたものが多い。

注2 大型振動台:
ハザマ技術研究所の大型振動実験施設では、最大積載重量80t、最大変位±300mm、最大加速度3Gの大型高性能の三次元振動台により、大規模試験体を用いた信頼性の高い構造物の地震時挙動が再現できる。 一般土木・建築構造物をはじめ、超高層ビルや原子力施設、地中構造物などの各種構造物、さらに地盤をシミュレートした試験体の水平動2方向に上下動をも加えた同時加振実験が可能である。主な諸元は以下のとおり。

表-1 大型三軸振動台の諸元
項目 仕様
テーブル寸法 X:6m x Y:4m
最大積載重量 80 tf
加振方式 Electro-Hydraulic servo mechanism
最大変位 X:±300mm Y:±150mm Z:±100mm
最大加速度 X:1G Y:3G Z:1G(35t 積載時)
振動数 DC - 50Hz

注3 伝統的工法
石積み方法は、年代、地域および地盤条件などにより様々で、石材の加工方法、積み方、仕上げ方などに特徴がある。石垣の修復・復元事業においては、こうしたことを十分考慮し、極力オリジナルに近い方法での施工が望まれる。

注4 空石(からいし)積み
伝統的工法による石垣は石材間にモルタルなどを充填しない工法が採られている。こうした工法は空石積みと呼ばれる。これに対してモルタルを用いる近代的な工法を練石積みと呼ぶ。

注5 数値解析によるシミュレーション
石垣のような構造物の挙動をシミュレーションするには、従来の有限要素法(FEM)のような連続体としての解析ではなく、個々の石材の挙動を表現することができる解析技術が必要である。ハザマと関西大学が共同で開発した「個別要素法による石垣の安定性評価技術」もこうした解析技術の一つであり、粒状に独立した要素を用いて地盤等を表現することで、不連続体の挙動を解析する技術。当初は土石流や落石、雪崩などのシミュレーションに適用されることが多かったが、最近では適用範囲が拡大し、三次元解析も行われるようになってきた。特に動的な解析に適しており、変形の状況をアニメーションで表現することも可能。

注6 阪神・淡路大震災の最大加速度
1995年(平成7年)1月17日に発生した兵庫県南部地震(阪神淡路大震災:M7.3)では、神戸海洋気象台において最大818galの加速度を記録した。

注7 「孕み出し」
城郭石垣などでは、石垣の中段部が前方に押出される変状が見られることが多いが、これを「孕み出し」と呼んでいる。

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