安藤ハザマ(代表取締役社長:野村俊明)と日本基礎技術株式会社(代表取締役社長:中原巖)は、放射性廃棄物埋設施設において外部とのバリア層となる高密度のベントナイト(※1)混合土層を、汎用機械によって施工する「ベントナイト混合土吹付け工法」を開発しました。
放射性廃棄物の埋設施設では、地下水の流入に伴う放射性核種(※2)の周辺地盤への移行を抑制するため、バリア層が設けられます。バリア層には、地下水を通りにくくする能力(「低透水性」といいます)や耐久性が求められるため、ベントナイトを用いた高密度土質系材料が適していると考えられています。
ベントナイトと砂を混合した混合材料は、天然材料であり、高密度とすることにより長期の耐久性を見込めるバリア層となります。しかし、高密度を確保するためには、建設重機の大きなエネルギーで締固めや転圧を行なう工法、あるいは、あらかじめ工場でプレス製造したベントナイトのブロックやペレット(粒状体)を現場で積上げ・充填する工法が検討されてきました。
今回両社が開発した「ベントナイト混合土吹付け工法」は、より簡便で自在に、高品質のベントナイト混合土層を構築するものであり、次の特長を持っています。
- 汎用機械である小型圧力釜式吹付機(図1参照)について、圧力釜の内部において材料を送るための撹拌翼の形状および配置の変更(特許出願中)(※3)や空気供給法の改良等を加えることで、粘性の高い材料の吹付けを可能にしました。また、吹付け工法であるため狭隘部や斜面部にも対応が可能です。
- ベントナイトを15%、砂を85%配合(乾燥質量比)した混合土を、平均で毎時約2トンの速さで吹付けることにより、高密度(湿潤密度で2.0トン/m3程度)かつ低透水性(透水係数10-8m/秒以下)のバリア層を構築することができます。(図2~図4参照)。
- 吹付けた混合土のリバウンド率(定着せずに跳ね返る率)を概ね15%以下に抑え、施工の効率化を図っています。
本工法によって、従来は締固めや転圧が困難であった埋設施設の法面(のりめん)の斜面部や地下空洞内の狭隘部(図5参照)でも、ベントナイト混合土層の施工が容易になりました。
また、現在国が計画中の「除染廃棄物の中間貯蔵施設」では、難透水性土壌層の設置が検討されていますが、本工法は、斜面部における難透水性土壌層の施工にも適用が可能です。
今後両社は、本工法の実用化に向けて引き続き改良を重ね、バリア層の一層の高品質(密度の向上および密度のばらつきの低減)や施工の効率化を図ってまいります。
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ベントナイト
海底・湖底に堆積した火山灰や溶岩が変質してできた粘土の一種。水を吸うと体積が数倍に膨らむのが特徴。地下水を通りにくくする性質や水に溶けたイオンを吸着する性質を持つ。 -
放射性核種
放射線を出す性質を持つ核種(原子核)。人工的に生み出された放射性核種と、天然に存在する放射性核種とがある。 -
特許名称「ベントナイト系材料の吹き付け装置」。2012年6月に特許願提出済み。

図1:吹付機本体

図2:吹付け状況(1)

図3:吹付け状況(2) ロボットによる吹付状況

図4:吹付け状況(3) 適用性検討状況
出所:松本江基、笠博義、木村誠、石濱裕幸、荻原績、千々松正和、新井英夫、箕輪英中、吹付け工法による急勾配法面へのベントナイト混合土層の施工、第68回年次学術講演会講演概要集、土木学会、Ⅶ-094、pp.187~188、2013.9

図5:トンネル内での埋め戻し材の施工(イメージ)