安藤ハザマ(本社:東京都港区、社長:野村俊明)は、大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構(KEK。本部:茨城県つくば市、機構長:山内正則)と共同で開発した「中性子遮へいコンクリート」(以下「本製品」という。)について、技術改良により生産性の向上を実現し、あわせて、お客様のさまざまな要求に対して最適な製品をご提供できるよう、製品ラインアップを充実させました。
本製品は、中性子(※1)に対して普通コンクリートの1.7倍(約40%の壁厚減)の遮へい性能を持つコンクリートとして2007年に開発され、2010年に特許を取得しました(特許第4532447号)。工場でプレキャストコンクリート(PC)として製造され、大強度陽子加速器施設J-PARC(茨城県那珂郡東海村)の物質・生命科学実験施設(MLF)のビームライン遮蔽体など、これまでに6件の適用実績があります。
本製品については、中性子の利用拡大に伴い引き続き需要が見込まれることから、これまでの適用実績をふまえて、以下のとおり改良を行いました。
1.生産性の向上
本製品の開発にあたっては、シミュレーション解析により骨材量と遮へい性能の最適化を実施していますが、製造過程での生産性の課題として、ホウ素を含んだ特殊骨材の影響によるコンクリートの硬化遅延がありました。そのため当社は、硬化遅延の改善と骨材量の最適化とを実施し、プレキャストコンクリート工場での型枠転用回数を従来の2倍以上にすることを可能にしました。また、これにより、従来品から約5%のコストダウンを実現しました。
この最適化により遮へいに必要なコンクリート厚さが増加しますが、その幅は従来品と比べ最大でプラス3.5cmにとどまるため、施設設計において計画に対する影響はほとんどありません。
2.製品ラインアップの充実
中性子は、その特徴(水素の可視化や分析を可能にする)により、燃料電池や水素吸蔵合金の開発等に用いられており、また、医療分野でも中性子を用いたがん治療(BNCT)(※2)の研究が盛んに行われています。
このように、高度医療や水素社会の実現に向けて中性子の利用拡大が期待されていますが、利用施設に要求される遮へい性能は、施設の利用目的ごとに異なります。今回、製品ラインアップに従来品のほか改良品が加わり、お客様のさまざまな要求に応じた遮へい性能の製品をお届けすることが可能となりました。
各施設を建設する時に中性子遮へいコンクリートを用いることで、建物重量の軽減や壁厚の低減が可能となり設計自由度が向上するため、お客様のさまざまなニーズに応えた建物をお届けでき、お客様満足度の更なる向上が期待できます。
当社は今後、中性子を利用する各施設の建設にあたり、これら施設に対し、本製品の導入を積極的に提案してまいります。また、本製品の更なる改良を通じて、中性子の有効利用に寄与していく所存です。
【補足説明】
中性子遮へい性能試験結果(2014年実施)
中性子による被ばく量を100分の1に減衰させるために必要な中性子遮へいコンクリートの厚さは、従来品では38cm、改良品で41.5cmとなります。

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中性子
放射線の一種。物質の透過力が強く、また人体に与える影響も大きいため、安全上、徹底した遮へい・防護が求められる。 -
BNCT
ホウ素中性子捕捉療法。中性子とホウ素との反応を利用して、腫瘍細胞のみを選択的に破壊する治療法。現在は臨床研究の段階。

技術改良した中性子遮へいコンクリート