安藤ハザマ(本社:東京都港区、社長:福富正人)は、ICTにより山岳トンネル工事の生産性、安全性を大幅に高める取り組みとして「山岳トンネル統合型掘削管理システム(i-NATM®)」(注1)の開発を推進しています。その一環として、「切羽出来形取得システム(注2)」「発破パターン作成プログラム(注3)」などの発破作業の高度化技術を開発してきました。
この度、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構北海道新幹線建設局発注の北海道新幹線、後志トンネル(天神)他工事(注4)に、これまで開発した発破の高度化技術と古河ロックドリル株式会社(本社:東京都千代田区、社長:荻野正浩)製の全自動ドリルジャンボ(注5)を適用し、技術を連携することで発破における穿孔作業の完全自動化を実現しました(写真1)。
1.発破の高度化技術
後志トンネル(天神)他工事では、発破の高度化技術と全自動ドリルジャンボを連携することにより、山岳トンネル工事の生産性向上に向けて取り組んでいます。発破の高度化技術では、発破後の掘削出来形や穿孔位置などの施工データをリアルタイムに反映した最適な発破パターンを作成することができます。また、「切羽地質情報取得システム(注6)」も活用することで切羽評価の結果も発破パターンに反映することができます。
さらに、全自動ドリルジャンボを用いることで、最適な発破パターンを確実に再現した発破が可能となります。従来の全自動ドリルジャンボの運用では、その複雑な機能を効果的に利用するためには、専門知識を有する専任のオペレータが必要でした。これに対し、当社の開発技術を連携することにより、通常のトンネル作業員1名で操作できる施工体制を構築しました。
2.後志トンネル(天神)他工事における取り組みと今後の展開
後志トンネル(天神)他工事では、穿孔作業をオペレータ1名で行うことにより、穿孔作業の省人化を図っています。さらに、これまでに開発してきた技術を活用した発破の最適化サイクル(図1)を実践することにより、オペレータがドリルジャンボを直接操作する従来の施工方法に比べて約40%の余掘り量低減効果も確認できています。
現在、後志トンネル(天神)他工事では、鋼製支保工を設置しない区間の施工を開始しました。鋼製支保工を設置しない区間では、内空断面の仕上がりの目安となる鋼製支保工がないため、掘削面を平滑に仕上げることが困難となります。当社の発破の高度化技術によって作成した発破パターンをもとに全自動ドリルジャンボを用いて正確に穿孔することで、鋼製支保工を設置しない区間においても掘削面を平滑に仕上げることができています(写真2)。
今後、後志トンネル(天神)他工事では、長孔発破を行う硬岩地山区間の施工が想定されています。硬岩地山における長孔発破では、余掘り量を低減しつつ、岩盤を確実に破砕することが工事の生産性を確保する上での重要な課題となります。当社は、発破の高度化技術と全自動ドリルジャンボの連携を図ることにより、山岳トンネル工事の大幅な生産性向上を目指します。
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山岳トンネル統合型掘削管理システム
自動化、遠隔化技術を活用して施工技術の高度化を図るとともに、施工情報を集中管理するプラットフォームを構築し、山岳トンネル施工の抜本的な合理化を進めるものです。 -
切羽出来形取得システム
3Dスキャナを搭載した計測車両とトンネル坑内に設置したトータルステーションを連携させることで、発破後の切羽出来形を短時間かつ高精度に取得するシステムです(図2)。 -
山岳トンネル工事の発破作業を最適化
-発破パターン作成プログラムで最適発破を実現-
(安藤ハザマ:2019年10月4日公表) -
工事概要
工 事 名 : 北海道新幹線、後志トンネル(天神)他
発 注 者 : 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構 北海道新幹線建設局
施 工 者 : 安藤ハザマ・伊藤・堀口・泰進北海道新幹線、後志トンネル(天神)他
特定建設工事共同企業体
工 期 : 2019年11月1日~2025年6月30日
工事概要 : トンネル施工延長4,460m、幅員約10m、高さ約8m -
全自動ドリルジャンボ
発破パターンや穿孔順序などの情報を事前に登録しておくことで、穿孔作業を自動で行うことができます。これにより、従来はオペレータ2~3人で行っていた穿孔作業を1人で行うことが可能となります。また、全自動ドリルジャンボは、岩盤の変化に対して、フィード・回転・打撃といった穿孔作業における重要な3要素をより効率的・高精度に自動制御する機能を有しており、複雑な地質構造を対象とする我が国の山岳トンネルに対応することができます。 -
山岳トンネル切羽の地質を自動判定
-圧縮強度、風化度、割れ目状態を定量評価-
(安藤ハザマ:2019年12月11日公表)

写真1:全自動ドリルジャンボ

図1:発破の最適化サイクル

写真2:鋼製支保工を設置しない区間における内空断面の仕上がり

図2:切羽出来形取得システム