TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)は、自然資本・生物多様性に関する企業のリスク管理と開示枠組みを構築するために設立された国際的組織で、2023年9月に開示枠組である最終提言を公表しています。
今般、安藤ハザマ(本社:東京都港区 社長:国谷一彦)は、同提言に基づく情報開示を実施します。
- 1. マテリアリティの適用
- 当社グループの事業活動が自然に与える影響と自然の変化が当社に与える影響の両方を踏まえてマテリアリティ(重要課題)を特定し、情報開示を行います。
- 2. 開示のスコープ
- 当社グループの主要な事業である国内建設事業(コンクリート等主要資材の原材料採取・材料製造および工事の施工)選定根拠は「3.戦略:(1)対象のバリューチェーン」に記載のとおり。
- 3. 自然関連課題がある地域
- 国内建設事業の主要拠点である建設工事現場
- 4. 他のサステナビリティ関連の開示との統合
- TCFD提言に基づく気候変動に関する情報開示を踏まえて本情報開示を策定しておりますので、今後統合を検討してまいります。
- 5. 検討した対象期間
- 短期:3年以内、中期:3年超10年以内、長期:10年超
- 6. 地域社会等影響を受けるステークホルダーとのエンゲージメント
- 「2.ガバナンス(2)地域社会等影響を受けるステークホルダーに対するエンゲージメントと人権方針」に記載のとおり。
1. ガバナンス
(1)体制
自然に関する依存、影響、リスク、機会は、環境戦略委員会において審議されます。環境戦略委員会には事業部門の代表者及び役員が参加し、自然に関する依存、影響、リスク、機会の特定及び顕在化した際の影響分析、その対応策の検討を実施します。その結果で重要なものについては、経営会議を通して取締役会に報告されます。
事業等に重要な影響を与える可能性のあるリスクについては、内部統制・リスク管理委員会において、リスクマネジメントの検討・審議が行われ、サステナビリティ委員会での審議を経て、取締役会へ報告されます。自然への影響によるリスクに関しては、環境戦略委員会と連携し対応しています。(体制図)
(2)地域社会等影響を受けるステークホルダーに対する人権方針とエンゲージメント
当社グループは、人権方針において、「事業活動が先住民族を含む地域社会の人々に与える影響に配慮し、地域社会との共生に努める」「自社の事業活動による人権への影響とその対応について、関連するステークホルダーと、対話や協議を行います」と定めており、また調達基本方針において、「基本的人権の尊重」や「地域社会への貢献」を定め、サプライチェーンも含め、人権尊重と地域とのコミュニケーションを通じて、社会との共生に努め、事業活動を行っています。工事現場においては、着工前の近隣住民説明会等を通じて、近隣住民との信頼関係構築を図っております。
2. 戦略
当社グループは、自然に関する依存・影響とリスク・機会の特定のため、TNFD提言で推奨されているLEAP(Locate、Evaluate、Assess、Prepare)アプローチによる分析を実施しました。
Locate:自然との接点の発見
(1)対象のバリューチェーン
当社グループの売上の約9割を占める国内建設事業(土木事業、建築事業)を対象範囲とし、TNFD提言が推奨するツールを参考に、自然との関わりが大きいと考えられる工事の施工と主要資材の原料採取・材料製造を分析対象としました。下流については事業規模の観点(建物・構造物の管理、解体、廃棄)および多様な業種の建物・構造物(建物・構造物の運用)となることから、対象外としています。
(※1) SBTN(Science Based Target Network:自然関連の科学に基づく目標設定のためのガイダンスを開発しているイニシアチブ)が開発した自然への重大な影響を評価するツール。影響が大きい資材としてセメント・砂(コンクリートの原材料)、鉄、木材が含まれている。
(※2) 国連環境計画、世界自然保全モニタリングセンター等が開発した自然関連の依存・影響の特定ツール。次ページに分析結果を記載。
(2)優先地域の特定
一定規模以上の国内工事現場130拠点について、生態学的に影響を受けやすい地域の自然に接する事業拠点を特定するため、TNFD提言の要注意地域の定義に則り、自然保護区等生物多様性にとって重要な地域や生態系の自然状態が保たれている地域への隣接状況および物理的な水リスクの観点から分析を行いました。具体的には、TNFDが推奨するWWF(世界自然保護基金)のBiodiversity Risk Filter、Water Risk Filterを活用し、以下の①~④のいずれかにおいてリスク評価が「Very High(VH)」(スコア4.2以上)の工事現場としました。
①「生物多様性にとって重要な地域」(自然保護区等)
②「生態系の完全性が高い地域」(人の手が入らず自然状態が保たれている度合が高い地域)
③「生態系の完全性が急速に低下している地域」
④「物理的水リスクが高い地域」(渇水、洪水、水質汚染等によるリスクが高い地域)
要注意地域として特定された現場については、環境マネジメントシステムに基づき、生物多様性保全を含む環境影響評価および環境リスク要因の特定・管理(目標設定、対策立案と実施、定期的なモニタリングと改善)をすることにより自然への悪影響を防止しています。なお、工事現場は期間の定めのある事業であり入れ替わるため、今後は原則年1回、要注意地域の特定と分析を実施する予定です。
(※)工事価格10億円以上の工事現場(建築改修工事を除く、2026年1月時点)
なお、バリューチェーンの上流は、拠点の特定ができていないため、優先地域の特定は実施しておりません。
Evaluate:自然への依存・影響の特定・評価
TNFD推奨ツールであるENCOREによるバリューチェーン上流と直接操業の自然への依存と影響の分析結果は以下のとおりです。
特にバリューチェーン上流については、原材料採取段階において、生態系サービスへの依存度や自然への影響度が大きいことがわかりました。
ENCOREの結果
Locateフェーズで特定した優先地域の工事(トンネル、道路等)について、ENCOREの結果を踏まえて社内検討し、事業活動が依存している主な生態系サービスおよび自然に与えている主な影響要因を以下のとおり整理しました。
事業活動が依存している主な生態系サービスおよび自然に与えている主な影響要因
Assess:自然に関するリスクと機会の特定・評価
(1)シナリオについて
リスク・機会の分析にあたり、TNFDが推奨する移行リスク(社会の関心)と物理リスク(自然の状態)の顕在化の程度を軸とした2つのシナリオを設定しました。
社会の関心:自然の保全回復に関連する規制・政策、企業・投資家等の取組姿勢
自然の状態:自然資本の損失や生態系サービス低下の顕在化度合
(2)リスクと機会の特定・評価
自然への依存と影響、各シナリオの外部要因(社会の関心度、自然の状態)を踏まえてリスクと機会を特定しました。特定したリスクと機会を「影響の大きさ」と「顕在化する可能性」の2軸により評価した結果、以下のとおり重要なリスクと機会を選定しました。気候変動によるリスク・機会に加えて、機会については、緑化等の生物多様性に配慮した案件の需要増加を認識しております。
| リスク分類 | シナリオ | 内容 | 対策 | |
|---|---|---|---|---|
| 移行 | 政策 | 1 | カーボンプライシングによる資材調達価格の上昇 | TCFDと共通 |
| 物理 | 慢性 | 2 | ヒートストレスによる建設技能者の生産性低下 | TCFDと共通 |
| 急性 | 2 | 自然災害の頻発化・甚大化に伴うサプライチェーンの分断による資材調達費の増加 | TCFDと共通 | |
| 機会分類 | シナリオ | 内容 | 対応策 |
|---|---|---|---|
| 製品 生態系の保護・ 復元・再生 |
1 | 緑化等環境配慮設計による建物の需要拡大 | 関連技術の開発推進 |
| 製品 | 2 | 激甚化する自然災害に適応するため、防災・減災、国土強靭化の需要が高まり、関連工事の売上高が増加 | TCFDと共通 |
TCFD提言に基づく気候変動関連財務情報開示は以下のとおりです。気候変動と生物多様性は相互に関連する課題であることから、統合的な開示を検討してまいります。
Prepare:当社取組の開示
生物多様性保全に関連する取組は、以下のとおりです。
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設計段階の在来種に配慮した植栽計画立案を支援するツール「いきものプラス」
-
生物多様性関連データベース「いきものインフォ」
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事業エリアにおける動植物の情報をWEB上で共有できる「環境情報GIS」
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設計者の緑化計画をサポートする緑地設計支援システム「UUell(ウェル)」
生態系保全技術
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技術研究所における実証フィールド(周辺の生物に配慮した緑化等)
緑化技術
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環境負荷低減を目的とした熱水除草、植物アレロパシーの利用
IPM管理(総合的病害虫・雑草管理)
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技術研究所の敷地でABINC認証
環境認証取得
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工事現場における希少動物の保護事例等
建設事業への展開
30 by 30アライアンスへの参画
-
EPD(環境製品宣言)取得事例
国際規格に準拠した環境影響評価
安藤ハザマ 2025年8月5日リリース
ISOに準拠した建築物LCAで、EPDを取得
3. リスクとインパクト管理
環境戦略委員会において、自然関連の依存・影響・リスク・機会の洗い出しを行っています。リスクと機会は、当社グループのバリューチェーンを念頭に、当社グループ全体への影響を抽出し、各シナリオの下で起こりうる財務的影響を想定し、「影響の大きさ」および「顕在化する可能性」を評価軸として、総合的に重要度を評価しています。
特定されたリスクのうち重要なものに対して、取締役会及びサステナビリティ委員会の監督の下、環境戦略委員会及び内部統制・リスク管理委員会を中心にリスクの回避、軽減、移転、保有に関する方針の策定や対応策の立案など、全社を通じたリスクマネジメントを行っています。また、対応策の実施状況並びにその効果についてモニタリングを実施しています。
4. 指標と目標
TNFD提言が推奨するコアグローバル指標を参考に指標を設定しております。
| 自然変化 | 指標 | 測定指標 | 2024年度実績 (目標) |
|
|---|---|---|---|---|
| 1 | 気候変動 | GHG排出量 | GHG排出量削減率 | TCFD参照 |
| 2 | 汚染・汚染除去 | 土壌に放出された汚染物質 | 土壌汚染対策法の遵守 | 違反なし(違反なし) |
| 排水排出 | 排水量 水質汚濁防止法の遵守 |
209.9万㎥ 違反なし(違反なし) |
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| 廃棄物発生・処理 | 産業廃棄物排出量 混合廃棄物排出率 |
56.7万t 1.8%(3.0%以下) |
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| 大気汚染 | 大気汚染防止法の遵守 | 違反なし(違反なし) | ||
| 3 | 資源の使用・補充 | 水ストレスが高い地域の取水量・消費量 | 取水量・消費量 | 国内において水ストレスが高い地域はない |
| 高リスク天然一次産品 | 砕石、セメント、鋼材、木材の消費数量 | 砕石:15.0万㎥ セメント:10.6万t 鋼材17.1万t、鉄筋5.6万t |
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