安藤ハザマ(社長:野村俊明)と住友大阪セメント(社長:関根福一)は、堺孝司教授(香川大学工学部安全システム建設工学科)の指導のもと、コンクリート製造時の二酸化炭素(CO₂)排出量が少なく、ひび割れ抵抗性が高い「ローカーボンハイパフォーマンスコンクリート」を開発しました。
一般的なコンクリートに用いられる普通ポルトランドセメント(※1)は、CO₂排出量が多いことが知られています。産業副産物由来のコンクリート用混和材(※2)である高炉スラグ微粉末(※3)やフライアッシュ(※4)はCO₂排出量が少ないため、これらをセメントの一部として用いることは、コンクリート製造時のCO₂排出量を削減する有効な手段となり得ます。 この代表的な例が従来型の混合セメント(※5)であり、その中で最も使用量の多い高炉セメントB種(※6)は、CO₂排出量は少ないものの、ひび割れ抑制効果に課題がありました。 また、近年、CO₂排出量を大幅に削減する観点から、セメントを混和材で高置換する研究が行われていますが、通常の方法では強度や耐久性を確保することが困難となるため、特殊な材料や設備などが必要であることが課題でした。 これらの課題を解決するために開発したのが「ローカーボンハイパフォーマンスコンクリート」です。本コンクリートは、セメント質量の40%をフライアッシュと高炉スラグ微粉末で20%ずつ置換えたもので、以下の特長を有しています。
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長期的に強度が増加します(図1参照)。
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コンクリート製造時のCO₂排出量を約45%削減できます(図2参照)。
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コンクリートの発熱量が少ないので、ひび割れを大幅に抑制できます(図3参照)。
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生コン工場が通常使用しているセメント品種および設備で製造できるので、「ローカーボンハイパフォーマンスコンクリート」の安定供給が可能となります。
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フライアッシュの有効利用を推進できます。
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セメント質量を60%確保しており、長期耐久性に不安がありません。
今後は、実構造物での試験施工などを行いながら、生コン工場における品質管理手法を確立し、本コンクリートの汎用的な使用を実現したいと考えています。
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普通ポルトランドセメント
ポルトランドセメントの一種。工事用または製品用として幅広い分野で利用でき、国内で使用されるセメントのおよそ70%を占めている。 -
コンクリート用混和材
強度、耐久性および打設作業の容易性などの改善を目的としてコンクリートに混和される材料。 -
高炉スラグ微粉末
高炉で銑鉄を作る際に発生する副産物。 -
フライアッシュ
石炭火力発電所で発生する副産物。 -
混合セメント
高炉スラグ微粉末、フライアッシュおよびポゾラン反応性があるシリカ質材料などをポルトランドセメントに混合して製造したセメント。高炉セメント、シリカセメントおよびフライアッシュセメントなどがある。 -
高炉セメントB種
ポルトランドセメントに混合する高炉スラグ微粉末の分量が30%を超え60%以下である混合セメント。