安藤ハザマ(社長:野村俊明)は、低振動・低騒音の耐震補強工法「Trench-A工法(トレンチエース工法)」(※1)の適用範囲を枠付き鉄骨ブレース外側補強工法(※2)まで拡大し、このたび日本建築総合試験所の建築技術性能証明(改定)を取得しました。
従来の枠付き鉄骨ブレース外側補強工法は、建物内部での工事が最小限に抑えられ、補強後も室内側に補強部材を設置することがないため、従前と同様に建物を使用できるなど、建物使用者にとって使い勝手のよい工法でしたが、工事中の振動・騒音が大きく、建物を使用しながらの工事には不向きな面がありました。
「Trench-A工法」は、低振動・低騒音(※3)といった特長を活かして、2011年6月に建築技術性能証明を取得以来、事務所ビル、宿泊施設などの耐震補強工事で順調に採用件数を積み重ねてきましたが、内付け工法のみの適用であったため、当社は個々の建物により適した補強工法の提案ができるように枠付き鉄骨ブレース外側補強工法の開発を進めてまいりました。
今回、既存建物の外部に直接枠付き鉄骨ブレースを取り付ける直付け工法(※4) (図4-b参照)と、スラブを増設して既存建物の廊下やベランダの外側に鉄骨ブレースを設置する増設スラブ工法(※5) (図4-c参照)の2 つの工法で建築技術性能証明(改定)を取得したことで、低振動・低騒音といった本工法の特長を活かして建物を使用しながらの枠付き鉄骨ブレース外側補強工法を実現することができます。
また、RC増設壁補強工法の適用範囲についても、増設壁に設けることができる開口が、窓開口(開口が柱や梁に接しない開口)からドア開口(開口の1辺が梁に接する開口)に拡大したことで (図5参照) 、RC増設壁を配置しても通行に支障が無くなり、より使い勝手のよい位置に増設壁を配置することが可能となり、平面計画の自由度が大きく向上しました。
【今回の適用範囲拡大項目】(図6参照)
当社は低振動・低騒音の耐震補強工法である「Trench-A工法」のメニューが増えたことにより、今後も個々の建物に最適な補強工法を積極的に提案し、本工法のさらなる展開を図ってまいります。
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Trench-A工法(トレンチエース工法)
アングルをせん断伝達要素として用いる耐震補強工法であり、既存躯体と枠付き鉄骨ブレース等との接合部におけるせん断力の伝達要素(シアキー)として、あと施工アンカーを用いず、代わりにアングルをシアキーとして用いるものです。コンクリートカッタで柱や梁のかぶりコンクリート部分に溝を作り、そこにアングルを挿入してエポキシ樹脂接着剤で固定します。アングルのもう一方の端部を耐震補強部材側のコンクリートまたは充填モルタル部分に定着させることにより、あと施工アンカーと同じ機能を有します。(図1.2.3参照) -
枠付き鉄骨ブレース外側補強工法
既存架構の柱や梁の外側に枠付き鉄骨ブレース架構を既存架構に直付けしたり(直付け工法)、既存架構に取り付くスラブ等の利用あるいは新しく外側にスラブ等を増設して既存架構と離れて補強架構を増設する工法(増設スラブ工法)の総称。 -
低振動・低騒音
コンクリートカッタの騒音は振動ドリルの騒音に比べて、階上の部屋へ伝わる音が小さく、補強工事での実測では、“非常にうるさく電話の使用が困難なレベル”から、“いずれの部屋も普通の声で会話のできるOA機器室程度”にまで騒音レベルを下げられることを確認しました(表1)。振動についても、隣室で計測したところ、いずれにおいてもコンクリートカッタの方が振動ドリルより10dB程度小さいことが確認できました。 -
直付け工法
既存架構の柱や梁の外側に補強架構を直に取り付ける補強工法。 -
増設スラブ工法
既存架構に取り付くスラブ等の利用あるいは新しく外側にスラブ等を増設して既存架構と離れて補強架構を増設する工法。 -
枠付き鉄骨ブレース補強工法
柱と梁のみで構成されるオープンフレームの中に鉄骨ブレース(筋交い)と枠鉄骨を取り付けて補強する工法。 -
RC増設壁補強工法
柱と梁のみで構成されるオープンフレームの中に鉄筋コンクリート造の耐震壁を増設するか、既存の耐震壁の壁厚を増すことにより補強する工法。