安藤ハザマ(本社:東京都港区、社長:野村俊明)と株式会社横河住金ブリッジ(本社:茨城県神栖市、社長:小山清一)は、このたび、シールドトンネルの特殊部に用いるセグメントに高耐力を有する特殊合成セグメント「TUF(タフ)セグメント®(Tough United Full sandwich Segment)」 を共同で開発しました。
シールドトンネルには、例えば道路トンネルの地中拡幅部や横坑との接続開口など、切拡げ施工(※1)による特殊部があります。また、用地や地中埋設物などの制約により、従来の円形断面ではなく矩形断面を採用する場合も増えています。これら特殊部や矩形断面では大きな断面力が発生するため、高い耐力を持つ特殊部用のセグメント(鋼製セグメント、合成セグメント)が用いられてきました。
しかし、シールドトンネルの大深度・大断面化の進展とともに、特殊部では荷重や断面力がいっそう増大するため、セグメントの桁高が一般部に比べて大きくなり、外径等の断面が大きくなったり、建築限界など必要な内部空間が確保できなかったりといった問題が生じてきます。
そこで両社は、大きなレベルの断面力に対する十分な耐力と、セグメントの薄肉化とを同時に実現した「TUFセグメント」を開発しました(図1参照)。 TUFセグメントは、外面を覆った鋼製部材と、その内部に充填したコンクリートとを完全に一体化した合成構造です。これまでもさまざまな合成セグメントが開発されていますが、TUFセグメントは、スキンプレート(※2)に最大30mmの厚肉鋼材を使用し、内外面に最大厚さ100mm×幅200mmのフランジ(※3)を設けることで、今までにない高耐力を実現しました。
TUFセグメントの特長は次のとおりです。
1.高耐力・高じん性
セグメントの断面内に鋼材を豊富に配置しているため、高い耐力とじん性(破壊に対する抵抗性)を発揮できます。
2.セグメント桁高の抑制
スキンプレートやフランジに厚肉鋼材を採用することにより、セグメント桁高を抑制し(表1)、内部空間を確保できます。
3.高い耐久性・止水性
全面を鋼材で覆っているため、コンクリートのひび割れによる漏水がなく、長期的な耐久性・止水性を確保できます。
4.優れた施工性・経済性
セグメントの重量や施工条件によっては、セグメント組立て後にコンクリートを現場で充填することも可能で、組立て時のセグメントを軽量化し、施工性が向上できます。
両社はこのTUFセグメントについて、以下のとおり性能と実用性を確認しました。
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実物大(幅1.0m×桁高0.6m×弧長5.0m)での試験体製作により、厚肉鋼材の曲げ加工精度や組立精度、組立手順、溶接性などの製作性を確立するとともに、寸法などの製作精度を確認しました(図2参照)。
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実大規模の曲げ載荷試験により、十分な耐力を保有していることを確認しました(図3および図4参照)。
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現場におけるコンクリートの充填状況を模擬した試験を実施し、充填性を確保できることを確認しました(図5参照)。
今後両社は、道路・鉄道における大断面・大深度シールドトンネルの特殊部や、大きな矩形断面のシールドトンネルなどにおいて、TUFセグメントを積極的に提案してまいります。
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切拡げ施工
シールドトンネルを掘進後、地中でセグメントを部分的に撤去して、拡幅したり、開口を設けたりすること。 -
スキンプレート
セグメントの内外面を覆う鋼材。通常は外側のみだが、TUFセグメントでは内面側も鋼材で覆っている。 -
フランジ
側板の上下端に取り付けた板状の鋼材で、セグメント断面の端部に配置することで効率的に耐力を向上させることができる。
【図1】TUFセグメントの概要

【表1】従来型セグメントとの比較

【図2】TUFセグメントの製作状況
試験体製作により、製品の製作性や製作精度を確認しました。

工場での製作状況

製作完了後の仮組み状況(3ピースを組立て)
【図3】曲げ載荷試験状況

最大荷重9,020kN載荷時の状況
(曲げモーメント8,900kN・m)

載荷前の試験体

載荷後の試験体
【図4】曲げ載荷試験結果
グラフに示すとおり、理論終局荷重を上回り十分な耐力を確保していることを確認しました。

荷重~たわみ曲線
【図5】現場状況を模擬した打設試験状況
セグメント組立て後に、現場でコンクリートを充填することを想定した現場充填試験を実施し、施工性・充填性が十分に確保できることを確認しました。

荷重~たわみ曲線

コア抜き孔(地山側から内空側を撮影)
試験体コア抜きによる充填確認(隙間や空隙がないことを確認)