安藤ハザマ(本社:東京都港区、社長:野村俊明)は、混合柱梁接合構法「APRSS(エープラス)構法」について、一層の合理化のために適用範囲拡大の改定を行い、このたび、一般財団法人日本建築総合試験所の建築技術性能証明(GBRC 性能証明 第07-04号 改定2)を再取得しました。
APRSS構法は、鉄筋コンクリート(RC)造の柱に鉄骨(S)造または鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造の梁を接合するハイブリッド構法(※1)で、梁の鉄骨が柱梁接合部を貫通していることが特徴です(図1参照)。建物の用途、梁のスパン、および積載荷重などの条件に応じて梁の構造を自由に選択でき、物流倉庫や生産・商業・病院施設など十分な空間性を必要とする建築物を対象としています。また、S造と比べて鉄骨の使用量を抑えられるなど、コストダウンにも対応しています。
今回の改定・再取得にあたっては、以下のとおり技術改良を行い、一般的なS造に対して躯体費で5~10%のコストダウンを可能としました(図2参照)。
1.鉄骨ブレースの併用
従前は純ラーメン構造(※2)での適用に限られていましたが、今回、鉄骨ブレースを併用できるようになりました。建築物のスパンや積載荷重などに応じて鉄骨ブレースを適所に配置することで、柱・梁の断面寸法や鉄筋の使用量を適切に抑え、次のとおりコスト削減を図ることができます。
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部材重量の軽減
RC柱をプレキャスト(PCa)化する場合には、運搬や揚重に適した部材重量とすることができます。
さらに、鉄骨ブレースが柱型枠と干渉しないよう、取り付け部分の先端を梁スパン中央側へ偏芯(※5)させることにより、柱型枠の工期短縮とコストダウンを図っています(図3参照)。
2.RC造柱とS造柱の接続
RC造の柱の上部にS造の柱を接続することで、部分的にS造柱を採用できます(図2参照)。
例えば、軽量な屋根を支持する最上階などでは、小断面のS造柱を採用することで、RC造柱と比べて、合理性と経済性を図ることができます。
3.S造梁の偏芯接合
建物外周では、梁を柱幅方向に偏芯させて接合できるため、外壁を取り付けるための金物や外周に跳ね出したスラブを受けるための補強材を大幅に削減できます(図4参照)。
当社はAPRSS構法をはじめとするハイブリッド構法(※6)について、1997年以来、12件の適用実績があります。当社は今後、さまざまな大スパン建築物の建設において、ハイブリッド構法を積極的に提案してさらなる普及展開を図るとともに、いっそうの技術改良を目指してまいります。
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柱梁接合部の補強方法は次の2種類があり、用途に応じて使い分けが可能(図1参照)。
(1)帯筋タイプ…意匠性が考慮される建物外周等に適している。
(2)ふさぎ板タイプ…鋼板を型枠として建物内部の柱等に適している。 -
柱と梁で構成される構造。柱と梁が剛に接合されることにより、地震時や風などの水平の力に対して粘り強く抵抗する特性がある。
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日本工業規格(JIS)の熱間圧延鋼材。
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板状の鋼材を所定の形状に溶接して成形した鋼材。
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ここでは、鉄骨ブレースの軸芯の延長線が柱梁接合部の中心(柱の軸芯と梁の軸芯の交点)と交わらないという意味(図3参照)。
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当社が保有するハイブリッド構法には、APRSS構法のほか以下のものがある。

「帯筋タイプ」

「ふさぎ板タイプ」
【図1】APRSS構法(柱梁接合部の詳細)

【図2】技術改定の概要

【図3】ブレースの取り付け位置

【図4】鉄骨梁の偏芯接合