安藤ハザマ(本社:東京都港区、社長:野村俊明)と西武建設株式会社(本社:埼玉県所沢市、社長:宮本文夫)は、千葉工業大学工学部・山田丈富教授の指導のもと、コニシ株式会社(※1)(本社:大阪市中央区、社長:横田隆)の協力を得て、「鉄骨ブレース無溶接耐震補強工法」の適用範囲を拡大し、このたび、一般財団法人日本建築総合試験所の建築技術性能証明(GBRC性能証明 第12-14号 改定)を共同で再取得しました。
「鉄骨ブレース無溶接耐震補強工法」は、接着剤により鉄骨ブレースを取り付ける耐震補強工法で、2012年に共同開発し、同年8月に性能証明を取得しています。
この工法は、建物の鉄骨柱のうちガセットプレートとの接合部分について、ショットブラストにより塗装の除去と鉄骨面の目荒らしを行った後、あらかじめ目荒らししたガセットプレートを、エポキシ樹脂系接着剤(※2)を用いて建物の鉄骨柱に取り付けるもので、溶接などの火気を使用しないのが特長です。(図1参照)(図2参照)
一方、エポキシ樹脂系接着剤には、高温時に接着強度が低下する性質があるため、日射等により温度が30℃(接着強度の基準温度)を大きく超える部位(例:夏季の屋根面の鉄骨部材など)に適用する場合は、建物を補強するブレース(※3)の設置数を増やすなどの対応が必要でした。
また、本工法の適用は、鉄骨柱にH形鋼または角形鋼管を用いた建物のみに限定され、山形鋼などを組み合わせた非充腹形部材(※4)を柱に使用した建物には適用できませんでした。
今回の改定・再取得にあたっては、これらの課題を解決するため、以下のとおり技術改良を実施しました。
1.適用接着剤の改良
コニシ株式会社が新たに開発した耐熱型接着剤(※5)は、高温時でも接着強度が低下せず、基準温度時(30℃)と同程度の強度を保持できます。これにより、夏季の屋根面の鉄骨部材などに適用する場合でも、補強ブレースの設置数を基準温度時と同じとすることが可能となりました。
2.非充腹形部材への適用
これまでは、H形鋼または角形鋼管を用いた建物のみへの適用でしたが、山形鋼などを組み合わせた非充腹形の柱部材を使用した建物にも適用範囲を拡大し、耐震補強を必要とするより多くの建物への適用が可能となりました。(図3参照)(図4参照)
本工法については、プレキャストコンクリート部材製造工場の耐震補強工事において適用実績があります。他にも可燃物を取り扱う工場等の耐震補強工事に関する問い合わせを多数頂いております。
今後は、火気を使用しないという本工法の特長を生かして、可燃物を取り扱う工場等の耐震補強工事を中心に、本工法を積極的に提案してさらなる普及展開を図るとともに、いっそうの技術改良を目指してまいります。
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コニシ株式会社
1870年創業。1952年に合成接着剤「ボンド」を開発、発売開始。日本を代表する接着剤のトップブランド。東証一部上場。 -
エポキシ樹脂系接着剤
一般的にエポキシ基を含有する化合物をアミン類や酸無水物などで硬化させる接着剤。接着力や耐久性に優れている。 -
補強ブレース
柱と梁で囲まれた軸組に対角線上に配置された部材で、地震などの水平方向の力を引張力または圧縮力で抵抗する補強部材。「筋交い」ともいう。 -
非充腹形部材
山形鋼または溝形鋼などを組み合わせ一つの部材としたもの。これに対して、H形鋼および角形鋼管は「充腹形部材」という。 -
耐熱型接着剤
コニシ株式会社が開発したエポキシ樹脂系接着剤。一般的な常温硬化型エポキシ樹脂の特徴である「高温時に接着強度が低下する」という性質を改良して、高温時(60℃)でも接着強度が低下しないようにした。

【図1】鉄骨ブレース無溶接耐震補強工法の概要

【図2】大空間建物の屋根面水平ブレース補強

【図3】非充腹形部材への適用

【図4】非充腹形部材への適用(接合部詳細)