株式会社安藤・間(本社:東京都港区、社長:野村俊明/以下、安藤ハザマ)と株式会社日立ソリューションズ(本社:東京都品川区、代表取締役社長:柴原節男/以下、日立ソリューションズ)は、IEEE802.15.4対応無線(※1)を用いた屋内位置把握システム(図1参照)を実用化しました。本システムは、日立ソリューションズの「GeoMation 屋内位置把握ソリューション」をトンネル工事現場に適用したものです。
日立ソリューションズはシステムの開発、実証実験の計画・実施を、安藤ハザマはトンネル工事現場にシステムを実装するために必要な仕様の検討や、適用性の判断、実証実験用の現場の提供を行いました。
本システムにより、トンネル工事現場などの屋内空間における作業員の安全管理や、作業効率化を図ることができます。
なお、本システムはNETIS(新技術情報提供システム) (※2)に登録されています。(NETIS登録番号:KT-160040-A)

図1:屋内位置把握システム全体概要図
※1:IEEE802.15.4
米国に本部を有するIEEE(アイ・トリプルイー)により策定された標準規格で、消費電力も小さく通信距離が数十mと長い。ZigBee(ジグビー)という通信規格の下位レイヤ(物理層、MAC層)としても利用されている。
※2:NETIS
民間企業等で開発された新技術に係る情報を、共有及び提供するためのデータベースであり、国土交通省によって運営されている。
1. 背景・課題
トンネル工事現場などの屋内空間では、GPS衛星からの電波が受信できないため、RFID(※3)による有線方式のシステムを用いて対象物の位置を特定・管理していますが、トンネルの掘削状況に応じて電気工事が必要になり、専門技術者によるシステムの運用・管理が必要になります。また、対象物の位置は特定できても、体調不良による転倒などを把握することはできないため、安全面での課題が残ります。人手不足が心配される昨今、少ない人数で現場の生産性を維持・向上させるためには、現場内における作業員や重機の位置把握や動線管理を確実に行い、より効率的な現場運営を行う必要があります。
※3:RFID
ICと小型のアンテナが組み込まれたタグやカード状の媒体から、電波を用いて非接触で情報の読み書きする自動認識技術。
2. 本システムの特長
今回、両社で検証したシステムは、従来のRFIDによる有線方式とは異なり、IEEE802.15.4対応無線を用いた無線方式となります。無線方式にしたことで、延伸箇所にルータを置くだけでシステム構築ができます。トンネルの延伸(掘削)にあわせて通信ケーブル等を延長・敷設する必要が無いため、システム構築にかかる労力・コストが抑えられるほか、トンネル内に設置する機器は「ルータ」のみとなり現場職員による管理・運用が可能です。また、「タグ」および「タグ」を検知する「ルータ」は1つあたり数千円と非常に安価であり、「ルータ」を短い間隔で数多く設置することができるため、低コストでより精密に位置を検知することが可能です。システムは以下の機器で構成されています。
(1) タグ[モノワイヤレス社製 TWE-Lite 2525A](図2参照):
- 位置を特定する対象(ヒト、モノ)に装着します。
- 定期的に電波を発信し、ボタン電池(CR2032)で約6ヶ月、稼働します。
- 内蔵の加速度センサーによりタグ装着者の動き(転倒など)を検知します。
(2) ルータ[モノワイヤレス社製 MoNoSTICK](図3参照):
- 位置管理したいブロックごとに設置します。
- タグの電波を受信し、その情報を隣のルータへ転送し続けることで、サーバまで転送します。
- 接続しているルータが故障した場合、自動的にひとつ先のルータに接続し情報を転送します。(図4参照)
- AC100Vもしくはモバイルバッテリーで約1ヶ月(20,000mAhのものを利用時)、稼働します。
(3) サーバ兼監視用コンピュータ(Windows):
- トンネル出入口付近や事務所等に設置します。
- 親機となるルータを取り付けることで、ルータからの情報を受信し、データを管理します。
- 管理対象の作業員や重機の位置を表示します。

図2:タグ サイズ:25mm x 25mm x 10mm

図3:ルータ
3. 実証実験の結果
本システムを安藤ハザマが施工中のシールドトンネルの現場に適用し、以下の効果を確認しました。
(1) 以下の条件下で、設置した全てのルータにおいて無線ネットワークが問題なく構成できることを確認。
【条件】
- ルータ同士は50m間隔、ルータは17個設置(トンネル入り口から850mまで)
- トンネル内径 3m
- 壁面はスチールセグメント、RCセグメントが混在
- トンネル内に約90°の急曲線部がある
- 所々に障害物あり(トランスや大型ポンプなどの高圧電流ケーブル、手すり、退避場など)
(2) タグをヘルメットに装着した作業員がルータに沿って移動した際に、移動にあわせて、管理パソコン上で作業員の位置をリアルタイムに表示すること確認。
(3) 任意のルータの電源を落とした際に、そのルータに接続されているルータが、他のルータに自動的に接続し、電源を落としたルータ以外のシステムが問題なく稼働していることを確認。(図4参照)
4. 今後について
安藤ハザマと日立ソリューションズは、今後、トンネル現場への導入を推進するとともに、トンネル現場以外の土木現場や建築現場への適用も視野に入れて、さらなる適用性の検証および技術改良を重ねていく所存です。

図4:ルータが故障した場合の自動転送