安藤ハザマ(本社:東京都港区、社長:野村俊明)は、このたび、日本で初めて(※1)、実建築物での「カーボンフットプリント宣言認定」(以下、CFP宣言(※2)認定)を取得しました(写真1参照)。CFP宣言は、一般社団法人 産業環境管理協会(以下、産業環境管理協会)が運営する「カーボンフットプリントコミュニケーションプログラム」(以下、CFPプログラム(※3))に定められる第三者検証機関の承認を経て取得できるものであり、信頼性の高い環境ラベル(※4)といえます。

写真1:CFP宣言認定証
カーボンフットプリント(以下、CFP)とは、原材料の調達から廃棄・リサイクルに至るまでの商品・サービスのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量をCO2に換算し数値で「見える化」し、商品・サービスに分かりやすく表示する仕組みです。
実際にCFP宣言認定を取得するにあたっては、予め認定対象の温室効果ガス排出量の算定基準となる「カーボンフットプリント製品種別基準(CFP-PCR:Carbon footprint of a Product- Product Category Rule)」を策定し、認定を受ける必要があります。安藤ハザマでは、2014年5月にRC造建築物に限定したCFP-PCRの認定を取得しましたが、今回の実建築物への適用にあたって、鉄骨造、木造、プレキャスト造や混構造等のあらゆる構造種別についても算定できるようにCFP-PCRを拡張し改めて認定を取得しました。また、CFPの算定範囲は、運用時(建物の通常使用時)および設備に関しては対象外としており、躯体および仕上げに関する新築・改修時および廃棄・リサイクル時に限定しています。これにより、材料や工法によるCO2削減ポイントをより効果的に把握し、お客様に対して、環境負荷低減の観点から材料・工法等の提案を行うことが可能となりました。
今回CFP宣言認定を取得した建築物は、茨城県つくば市の技術研究所に隣接して建設した安藤ハザマの研修用宿泊施設「TTCつくば」(TTC=Technology Training Center)(写真2参照)です。本施設の建設に伴うCO2排出量は、耐用年数65年あたり4,100t(1.5t/m2)と「見える化」しました(図1参照)。

Technology Training CenterTSUKUBA
(略称:TTCつくば)
用 途:研修用宿泊施設
工 期:2015年9月~2016年5月
構 造:鉄筋コンクリート造
地上3階建て
延床面積:2,755.58m2
寮室120室
写真2:TTCつくば

図1:CFP算定結果の数値表示(見える化)
こうした「見える化」された情報は、建築物のライフサイクルにおける各段階や項目ごとに細分化でき、次のような目的に向けて活用できます。
- 発注者、設計者、施工者の間でCO2排出量に関する情報を共有し、具体的なCO2削減対策などへ適用できます。
- CO2削減ポイントをより効果的に把握し、発注者に対して、環境負荷低減の観点から材料・工法等の提案を行うことが可能となります。
- 「見える化」した情報を蓄積することで、建物種別や用途に応じた環境負荷の少ない材料・工法等の研究開発をより効率的に推進できます。
さらに「TTCつくば」では、CFPにより算出されたCO2排出量の一部(247t:資材製造段階と施工段階の排出量の10%)を、J-クレジット制度(※5)に登録されている地元茨城県などの森林間伐促進プロジェクトのクレジットを購入したり、自社保有のクレジットを活用することによりオフセット(埋め合わせ)しました(図2参照)。建築物を対象としたカーボン・オフセット(※6)はこれまであまり行われていませんでした。CFPを活用することにより建物のライフサイクルの一部もしくは全体でのCO2排出量という定量的な指標に基づいたカーボン・オフセットが可能となります。

図2:CFPを活用した「TTCつくば」のカーボン・オフセット
今後はお客様に向けて、技術提案等でCFPマークによるCO2排出量の「見える化」を推奨し、環境負荷低減の観点から材料・工法等の提案を行っていきます。また、CFPとカーボン・オフセットを組み合わせた環境負荷低減への取組みを推進し、低炭素社会の実現に貢献してまいります。
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日本で初めて
2016 年9月28日現在、安藤ハザマ調べ。 -
CFP宣言
「CFPマーク」、「数値表示」、「追加情報」および「CFPプログラムウェブサイト(https://www.cfp-japan.jp/)において公開される登録情報」をいう。 -
CFPプログラム
2009 年に経済産業省等の主導で開始された「CFP制度試行事業」を、2012 年から産業環境管理協会が引き継ぎ、本格運用を開始した制度。 -
環境ラベル
製品やサービスの環境情報を、製品や包装ラベル、製品説明書、広告などを通じて消費者に伝えるもの。 -
J-クレジット制度
省エネルギー機器の導入や森林経営などの取組による、CO2などの温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「クレジット」として国が認証する制度。 -
カーボン・オフセット
CO2等の温室効果ガスの排出量に見合った温室効果ガスの削減活動(森林間伐、植林等)に投資すること等により、排出される温室効果ガスを埋め合わせるという考え方。