安藤ハザマ(本社:東京都港区、社長:野村俊明)は、株式会社ムーヴ(東京都府中市、社長:吉田誠一)の協力を得て、打ち込まれるコンクリートの品質管理情報をリアルタイムで管理・集計する「コンクリートの打込み管理システム」を開発しました。実現場での運用を開始し、NETIS登録も完了しました(NETIS登録番号:KT-160096-A)。
1. 背景・課題
構造物の建設において、コンクリートの品質管理は非常に重要です。コンクリートの一体性確保には、コンクリート打込み時の1層の高さ、および下層と上層との打重ね時間間隔の管理が大切であり、各工事現場で台帳を作成して管理しています。これまで管理台帳の作成は手作業が中心であり、機器設置の煩雑さからシステム化は進んでおらず、省力化等が課題となっています。
2. 新システムの特長
本システムは、打ち込まれるコンクリートの高さを、レーザー距離計を用いて連続的に自動測定し、1層の高さおよび打重ね時間間隔を測定箇所および品質管理者のタブレットに自動表示するシステムです(図-1)。作業中の1層の高さや層数の変更にも自動で対応できます。品質管理担当者の省力化と同時に、品質管理情報のリアルタイムかつ正確な測定・管理により品質管理の向上を実現できます。

【図-1】「コンクリートの打込み管理システム」概要図
1) 省力化
・機器の設置が容易で、準備作業の省力化が可能。
・品質管理情報(1層の高さ・打重ね時間間隔)が自動で測定され、結果が表示されるため、品質管理担当者による測定や計算が不要。
・帳票が自動作成されるため、手作業による帳票作成業務が不要(表-1)。

【表-1】帳票出力結果の例
2) 品質管理の向上
・現在の打重ね時間間隔や1層の高さの計画値と実績値が、常時打込み箇所のタブレットに表示されるため、作業員も管理情報を常に把握でき、品質管理精度の向上が期待できる。
・打重ね時間間隔に対するワーニング機能により、コールドジョイント(注1)の防止に繋がる。
3) 小規模化で経済的なシステム
・システムは、タブレット3台、レーザー距離計2台、ルーター1台のみの小規模な構成であり、コンクリート中に埋込むセンサー等の消耗品がないため、経済的。
3.実現場へのシステムの適用結果
本システムを、当社施工の浄水場配水池、ボックスカルバート、および橋梁下部工事に適用し、以下の効果を確認しました(写真-1)。
①システム1式の現場への設置は、1人で10分以内に完了しました。
②品質管理情報の測定およびタブレットへの自動表示ができ、品質管理者だけでなく現場の作業員も管理情報を常時確認できました。
③品質管理情報は正確に集計・保存され、帳票として出力できることが確認できました。

【写真-1】システムの適用事例
4. 今後について
国土交通省が推進するi-Constructionでは、コンクリート工事の現場打込み作業の効率化も対象となっています。また、コンクリートライブラリー第148号「コンクリート構造物における品質を確保した生産性向上に関する提案」(平成28年12月土木学会発行)では、各現場の環境温度や配合の違いによって打重ね時間間隔を合理的に選定する提案もされています。 当社は、本システムを積極的に展開し、前述のような生産性向上施策に貢献してまいります。
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コールドジョイント
コンクリートを打ち重ねる時間の間隔を過ぎて打設した場合に、前に打ち込まれたコンクリートの上に後から重ねて打ち込まれたコンクリートが一体化しない状態となって、打ち重ねた部分に不連続な面が生じること。構造物の耐力、耐久性、水密性を低下させる原因となる。(日本コンクリート工学会「コンクリート診断技術`16」より)