安藤ハザマ(本社:東京都港区、社長:野村俊明)は、このたび、デンカ株式会社(本社:東京都中央区、社長:山本学)とニシオティーアンドエム株式会社(本社:大阪府高槻市、社長:西尾英一)と共同で「大容量・低リバウンド吹付けコンクリートシステム」を開発し、山岳トンネル工事の吹付けコンクリートの施工時間を半減することに成功しました。
1.開発の背景
山岳トンネルにおける吹付けコンクリートの施工時間は、掘削・支保工の施工サイクルの15 %程度と大きな比率を占めています。
これまでに、吹付けコンクリートの施工の効率を上げるために、コンクリートの時間当りの吐出量を増やす取組も行われてきましたが、吹付けコンクリートは圧縮空気の力でコンクリートを吹き飛ばして壁面に付着させる仕組みであるため、吐出量を増量しすぎると、壁面に付着せずに落下するコンクリート(リバウンド)が増えてしまうという問題点があり、多くの現場で、10~15 m3/hの吐出量で、20~30 %のリバウンドを許容して施工している状況が続いています。
2.大容量・低リバウンド吹付けコンクリートシステムの特徴
今回開発した「大容量・低リバウンド吹付けコンクリートシステム」では、吐出量の大容量化とリバウンド率の低減を極めて高いレベルで両立しました。
大容量の吹付けコンクリートを施工する際には、コンクリート圧送時の脈動が大きな問題となります。コンクリートの脈動は、壁面付着の要となる急結剤の不均一な添加状態を誘発しリバウンド量の増加につながるとともに、仕上げなどにおける繊細なノズル操作を難しくし、大容量での施工を困難にします。
そこで、コンクリートの脈動防止、急結剤の均一な添加を目的として以下の対策を行いました。
(1) 大容量のシリンダ摺動型ポンプを採用
大容量のコンクリート圧送時にも脈動の少ないシリンダ摺動型ポンプを改良して、吹付け機に搭載しました。また、添加ノズルを大容量に適した形状に改良しました。
(2) 液体急結剤の採用
急結剤のコンクリートへの混合性を高めるために、従来の粉体タイプに替えて液体急結剤を採用しました。
(3) ベースコンクリートの高規格化
液体急結剤を均一に混合させることと、ノズルの操作性を向上させることを目的に、単位粉体量(セメントおよびフライアッシュ)の増量と高性能減水剤の採用により、流動性が高くストレスのない圧送が可能なワーカビリティのベースコンクリートを新たに開発しました。
3.施工実績
二つの山岳トンネル現場で実施した試験施工では、実吐出量は最大で28.7 m3/h、リバウンド率は5~10%を達成しました。大容量化にもかかわらず、リバウンド率は従来の吹付けシステムの実績値(安藤ハザマ実績値:20~30%程度)を大幅に下回っており、確実なコンクリートの付着が得られていることが確認されました。
また、坑内の作業環境保全に直結する発生粉じんも、吐出量の大幅アップにもかかわらず、従来の吹付けコンクリートの同等以下の発生量となっています。
試験施工の結果を受けて、当社では「大容量・低リバウンド吹付けコンクリートシステム」を9月5日より国土交通省中国地方整備局発注の「鳥取自動車道智頭用瀬トンネル南工事」注(1)に適用し、本格運用を開始しました。
4.今後の展開
今後、安藤ハザマでは、「大容量・低リバウンド吹付けコンクリートシステム」を全国のトンネル現場に展開し、掘削のサイクル改善を図り、トンネル工事の生産性の向上に努めてまいります。
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工事名称 :鳥取自動車道智頭用瀬トンネル南工事
工事場所 :鳥取県八頭郡智頭町市瀬地内
発注者 :国土交通省中国地方整備局
施工者 :安藤ハザマ
工 期 :平成27年7月8日~平成29年12月28日
工事概要 :智頭用瀬トンネルは、鳥取自動車道の智頭IC付近に位置する、全長2,392m、
内空断面積58.0㎡の2車線道路トンネル。本工事では、そのうち南工区(L=785m)を施工する。

表1:試験施工の実績値(吐出量を変化させて試験した結果の例)

図1:大容量・低リバウンド吹付けシステムの概要

図2:油圧2ピストン式シリンダ摺動型ポンプ

写真1:ベースコンクリートの性状

写真2:施工状況