安藤ハザマ(本社:東京都港区、社長:野村俊明)はこのたび、保有技術の「トンネルフェイステスター(TFT探査)」の開発を進め、ケーブルレス化を実現し、省力化を図るとともに、効率的なデータ取得を可能にしました。
(NETIS登録番号:TH-170003-A)(図1、写真1参照)
1.開発の背景
一般的に、山岳トンネル坑内における切羽前方の探査技術は、大掛かりで複雑な設備構成であり、狭いトンネル坑内では切羽を占有します。そのため、探査中は掘削作業を中断することになり、少なからず工程に影響があったため、当社は、2013年にこれらの課題を解決するコンパクトな切羽前方探査システム「トンネルフェイステスター(TFT探査)」を開発しました。
しかし、同システムは有線システムであるため、ケーブルに発破の飛石防護用の養生をする必要があり、受振器の増設も困難でした。今回、無線システム導入によるケーブルレス化で、大幅に設置作業を削減し、さらに受振器の増設を容易にすることで効率的なデータ取得を実現しました。
2.本システムの特長
本システムは、反射法弾性波探査(注1)であり、掘削発破を利用することから、非常に大きなエネルギーを持つ起振源とすることができるため、効率的に精度の高いデータの取得が可能となります。また、支保工であるロックボルト(L=3~6m)を受振器のウェーブガイドとして利用することで、掘削作業等に影響を与えることなく反射法弾性波探査を行えます。
今回、ケーブルレス化による改良と受振器を2台にすることによって、以下の省力化・効率化を実現しました。
- ケーブルレスとすることで、機材の設置や移設が簡便になり、約30分で設置完了できます。
- 受振器1台から2台へすることで、解析に必要な弾性波のデータ数を、従来の半分の計測期間(10回の掘削発破計測)で取得することが可能になりました。
- タブレットPCによる無線通信でデータ取得が可能なため、トンネル施工管理技術者が、現場から移動することなく、1時間程度で解析ができます(図2参照)。
- 機材費用は、既設の設備を利用することで、従来の技術(注2)と比べ3分の1以下となります。
- 受振器を2台とすることで、弾性波速度による詳細な地山評価を行うことも可能です。具体的には、切羽近傍の坑壁でハンマー打撃により発生させた弾性波を計測することで、往復走時による屈折法弾性波探査を簡便に行うことができます(図3参照)。
本システムは、東北大学 新妻弘明 名誉教授の指導のもと、これまでに多数のトンネル工事における検証実験を行い、トンネル施工に必要な精度を有することを確認しています。
3.今後の展開
現在、従来型から含めて、当社施工の山岳トンネル17現場へ展開しており、今後3次元化などへ向けて開発を進めています。
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発破などの起振により、人工的に弾性波を発生させ断層や地質境界などで反射する弾性波を計測することで、それらの位置を把握する探査手法。
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国内の山岳トンネルで最も普及したTSP202(AMBERG社製)では、設置から計測までに1.5日程度の時間を要し、その間は切羽での施工を中断する必要がある。

図1:TFT探査システム概念図

写真1:TFT探査システム構成

図2:掘削発破による切羽前方探査(反射法弾性波探査)
解析結果例(専用ソフトでの出力)

図3:ハンマー打撃による地山評価
探査結果例(屈折法弾性波探査)