安藤ハザマ(本社:東京都港区、社長:福富正人)は、神奈川大学岩田衛教授の指導のもと、耐震ブレースである「安藤ハザマ座屈拘束ブレース(AH‐BRB)」を開発し、建設中の「MFLPプロロジスパーク川越」に初適用しました。本技術により、建築物の耐震性能向上とローコスト化が可能になりました。
本技術は一般財団法人 日本建築総合試験所から建築技術性能証明(GBRC 性能証明 第17‐04号)を平成29年4月27日付で取得しています。
1. 開発の背景
ブレースは、建物全体の剛性を高め、地震時の建物の変形を小さく抑える効果があります。座屈拘束ブレースは、地震力に抵抗する芯材(注1)を鋼材やコンクリートで覆い、芯材の座屈(注2)を防止したブレースで、高い耐震性能が必要な大型の物流施設、ショッピングセンターやオフィスビルなどに使用されています。通常の鉄骨ブレースは、ある一定以上の圧縮力を受けると座屈を生じ不安定な挙動を示しますが、座屈拘束ブレースでは鉄骨ブレースで座屈が生じる大きさ以上の圧縮力を受けた際にも、引張力を受けた場合と同様に安定した耐震性能を示します。これにより、建物全体の耐震性能を向上させることができます。
当社は自社製品を開発することにより、ローコスト化を実現しました。
2. 安藤ハザマ座屈拘束ブレース(AH‐BRB)の特長
今回開発した「安藤ハザマ座屈拘束ブレース(AH‐BRB)」(以下、AH-BRBとする)は、コ字形の拘束鋼材(注3)にコンクリートを充填した1組の座屈拘束材で芯材を挟み込み、溶接により一体化した座屈拘束ブレースです(図1)。芯材は、可能な限り溶接部分を減らすため、塑性化部(注4)の断面を平板状としています。
AH‐BRBの特長は、以下の通りです。
適用範囲
芯材の大きさと使用する鋼種の組合せにより、ブレース耐力を自由に設定できます。鉄骨(S)造以外にも柱RC梁S造(注5)やCFT造(注6)の建物にも適用でき、さらに新築の場合だけではなく耐震改修を行う建物にも適用可能です。
BAランク(注7)相当のブレース
本技術は、BAランク相当の建築技術性能証明を取得しているため、建物の設計用地震力を小さく抑えることができ、経済的な設計が可能になります。
経済的な断面
座屈拘束材で芯材を挟み込むため、座屈拘束材の幅を芯材端部(接合部)の幅より小さくすることができます(図2)。また拘束鋼材は任意の大きさで製作できるので、座屈拘束材の断面を芯材の大きさに合わせ従来より小型な形状とすることができます。
なお、本ブレースの構造性能は、構造実験(写真1)で検証されており、優れた耐震性能を有することが確認されています(図3)。
3. MFLPプロロジスパーク川越への適用
当AH-BRBを、今回、川越市で建設中の大型物流施設「MFLPプロロジスパーク川越」(図4)に初適用しました。本建物は、当社の設計・施工による地上4階建て、延床面積が約130,000m2の大型物流施設であり、226本のAH-BRBを採用しています。2018年10月の竣工に向け建設工事を進めており、AH-BRBの取り付け(写真2)も始めています。
4.今後について
物流施設をはじめとしたさまざまな建物にAH‐BRBを積極的に展開するとともに、今後も改良を進め、性能向上、適用建物範囲の拡大、およびさらなるローコスト化を目指していきます。
-
芯材
ブレースに生じる引張力や圧縮力を負担する鋼材。 -
座屈
ブレースが圧縮力を受けたときに、急激に芯材が折れ曲がることで、圧縮力を負担できなくなる現象。 -
拘束鋼材
芯材の座屈を防ぐため、芯材を覆うように設ける鋼材。 -
塑性化部
ブレースに引張力や圧縮力が生じたときに伸縮する部分で、芯材長さ方向の中央部分。 -
柱RC梁S造
鉄筋コンクリート(RC)造の柱と鉄骨(S)造の梁を組合せた構造。 -
CFT造
角型や円形の鋼管にコンクリートを充填した柱と鉄骨(S)造の梁を組合せた構造。 -
BAランク
ブレースの種別で、BA、BB、BCの3つのランクがあり、BAランクが最も構造性能が高い。

図1:AH‐BRBの構成

図2:芯材端部(接合部)と座屈拘束材の幅

写真1:構造実験の様子

図3:AH‐BRBの履歴特性

図4:MFLPプロロジスパーク川越の完成イメージ
「MFLPプロロジスパーク川越」建物概要
発 注 者 : 三井不動産株式会社・プロロジス
建 設 地 : 埼玉県川越市南台
建物用途 : 倉庫業を営む倉庫
設 計 : 株式会社安藤・間一級建築士事務所
施 工 : 株式会社安藤・間
構造種別 : 柱RC梁S造(一部柱梁ともS造)
規 模 : 地上4階建
法延面積 : 131,298.64m2

写真2:AH-BRBの取り付け