安藤ハザマ(本社:東京都港区、社長:福富正人)は、建設作業の安全性向上を目的に、HOYAデジタルソリューションズ株式会社(本社:東京都中野区、社長:Seevali Fernando)(注1)が提供する、スマートウォッチを活用した安全管理システム「SafeNAVI」(注2)を建設現場向けに改良し、運用を開始しました。
1.背景
近年、建設作業員の高齢化や猛暑による現場の過酷化が進む中、作業員の状況を日常的に管理する重要性が一段と高まっています。しかし、作業員の配置は広範囲に渡るため、職長あるいは職員が作業員を一括で管理し、顔色確認や注意喚起を促すことが困難でした。
その対策として、当社ではIoT技術を活用した安全管理システムの開発を進めており、作業員が働く上での安全確保に努めています。
2.安全管理システムの概要 (図1)
「SafeNAVI」は作業員一人一人の作業環境や体調をリアルタイムに一元管理するシステムで、作業員が装着するスマートウォッチ(写真1)と、現場の各所に設置する温湿度センサ、データを集約するクラウド、各デバイスとクラウドとのデータ通信を中継するゲートウェイやスマートフォンにより構成されています。スマートウォッチから計測されたバイタルデータ(心拍数等)や位置情報、温湿度計から計測された環境データをクラウドに集約することで、作業員の各データをWeb上の一覧画面(図2)から確認することが可能です。
当社では、本システムを用いて作業員個人のバイタルデータや環境データから作業状況を総合的に判断し、スマートウォッチへの通知によって休憩やウォータータイムの実施を促す運用を進めています。
システムの特長は以下のとおりです。
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スマートウォッチ本体の振動によって、作業員が作業中でも見逃すことなく通知を確認することができます。
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クラウドからスマートウォッチへは任意のメッセージを送信できるため、作業員個人に合わせたアラートメッセージを通知することが可能です。
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スマートウォッチからクラウドへの通知送信する機能もあり、スマートウォッチアプリのヘルプボタンから救援を要請することが可能です。
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多様な作業員配置に適用するために、スマートウォッチとクラウドの通信方法は2通りあり、中継機(ゲートウェイ)を現場内に設置する方法と、中継機となるスマートフォンを作業員が所持する方法が選択ができます。
3.建設現場への適用と効果
現在、本システムをシールドトンネル工事現場である「葛西橋通り付近管路新設工事」(注4)および「つつじヶ丘付近管路新設工事」(注5)に適用し運用しています(図3)。
トンネル坑内などの現場敷地内だけではなく、現場敷地外のガードマンなどへも適用し作業内容や場所を問わず、作業員の状況を把握することが可能になりました。スマートウォッチを通じて作業員が自身のバイタルデータ等を閲覧できるようになり、作業負荷に対する意識を向上させる効果も得られています。
4.今後の展開
今後は、建設現場におけるより効果的な運用方法を検討し、建設現場向けにスマートウォッチアプリケーションや管理システムの機能拡充を進めます。また、本システムをシールドトンネル工事以外へも積極的に展開し、建設作業員が安全に働ける現場環境の実現を目指していきます。
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HOYAデジタルソリューションズ株式会社について
https://www.hoyads.com -
SafeNAVIについて
https://www.hoyads.com/solution/iot -
暑さ指数(WBGT)
暑さによる厳しさを表す指標であり、労働や運動時の熱中症予防に用いられる。Wet-Bulb Globe Temperatureの略称。黒球温度、湿球温度及び乾球温度をもとに算出される。 -
葛西橋通り付近管路新設工事
発注者 :東京電力パワーグリッド株式会社
施工者 :安藤ハザマ・関電工 共同企業体
工事場所:東京都江東区新砂3丁目6番地先~東京都中央区新砂1丁目28番地先
工期 :2017年3月1日~2021年8月31日 -
つつじヶ丘付近管路新設工事
発注者 :東京電力パワーグリッド株式会社
施工者 :安藤ハザマ・若築 共同企業体
工事場所:東京都調布市西つつじヶ丘1丁目8番地~調布市東つつじヶ丘1丁目16番地内
工期 :2019年6月17日~2022年7月29日

図1: 安全管理システムの構成

写真1: スマートウォッチアプリ画面

写真2: スマートウォッチへの通知例

図2: 作業員の一覧画面例

図3: シールドトンネル工事での適用イメージ