安藤ハザマ(本社:東京都港区、社長:福富正人)は、AI・データ解析を用いて、基本計画前段階の業務である企画段階のボリューム設計を自動化する構想をまとめ、現在システムを開発中です。
1.開発の背景
建築設計の最初期段階である企画段階のボリューム設計は、技術者の手作業で行われており、成果品提出までの期間や成果品の品質が、知識・経験に基づく個人の力量に左右される場合があります。
そこで当社は、企画段階のボリューム設計業務を自動化するプログラムを構築し、これまで経験の浅い設計者が4~5日程度要していたボリュームプラン作成を、概算コストを含め1日で自動作成できるようになることを目指しています。業務時間を5分の1に短縮することで、設計者はより創造的な設計を思考する時間を確保できるようになり、付加価値生産性を高めることができるようになります。
2.システムの概要
現在開発中のシステムは、設計者が計画敷地・建物の基本情報を入力後、いくつかの簡単な追加条件を入力することで、ボリュームプランと概算コストがセットで企画ボリューム案として提示されるものです。具体的には、①ボリューム形成プロセス、②プラン形成プロセス、③コスト算定プロセスの大きく3つのプロセスから成り、設計者の提案プラン作成、複数案の絞り込みをアシストします(図1)。
①ボリューム形成プロセス
ウェブサイト上に公開されている法令情報から該当敷地に関する都市計画情報を補足し、建築規制範囲を表示します(通称「鳥かご図」の生成)。設計者が、建築形態のタイプの別を選択すると、その中で建築可能な最大のボリュームを自動生成します。
②プラン形成プロセス
過去物件のデータベースから、計画の参考になる類似物件を複数表示します。設計者がその内一つを選択すると、類似案件の規則に従った配置・ゾーニングを自動生成します。
③コスト算定プロセス
企画ボリューム案の情報を基に、躯体、仕上、設備における過去物件の歩掛りデータを活用して、統計的手法により概算コストを算定します。
生成された企画ボリューム案は、BIMデータへと変換され、基本計画の提案資料作成、次の業務プロセス(基本設計)へとプロジェクトを継続することができます。また、生成された計画案は、データベースへ格納・ストックされ、次回以降の検討の学習データとして再活用されます。
ボリューム形成・プラン生成プロセスについては、武蔵野大学データサイエンス学部 武藤 佳恭教授(慶應義塾大学名誉教授)、野原ホールディングス株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:野原弘輔)、GH Advancers株式会社(本社:東京都港区、代表取締役:谷口敬太)と共同で開発を行っています。
3.開発の進捗と今後の展開
これまでの開発で、ボリューム形成プロセスとプラン形成プロセスを経て、企画ボリューム案を提示する部分については、限定条件下・用途において開発済みです(図2)。今後適用条件を拡張させながら、妥当性の検証を行い2022年度中に実物件への導入を目指します。
コスト算定プロセスについては現在開発中で、一部の用途で統計的手法によるコスト算定を試行するに至っています。さらに、将来的には基本設計段階において、上部躯体の部材断面を自動で算定し、数量積算できるようになることを目指しており、今後、一体のシステムとして利用できるように整備を進めていきます。