
図1:日々延伸型テールピース台車
連続ベルトコンベヤ方式では、トンネル掘削に合わせて、テールピース台車がベルトをけん引することでベルトを延伸する連続ベルトコンベヤと、ずりを破砕する移動式クラッシャーを用いてずり出しを行います。
「日々延伸型テールピース台車」は、延伸作業の手順改善と設備の工夫により、日々のトンネル掘削作業と並行して2~3名での延伸作業を行うことで、掘削サイクルタイム内での延伸作業を可能とする設備です。本設備により、掘削作業を休止することなく、効率的かつ作業の安全性を確保した連続ベルトコンベヤの延伸システムを実現します。
連続ベルトコンベヤ方式は、坑内の安全性と良好な環境を確保するために効果的な技術です。今後は日々延伸型テールピース台車の現場運用を通じ、さらなる山岳トンネル工事の施工の高度化を実現し、大幅な生産性向上を目指していきます。
1. 開発の背景
一般に、山岳トンネルの連続ベルトコンベヤ方式によるずり出し作業は、発破により破砕した掘削ずりをホイールローダで集積し、切羽後方に設置した移動式クラッシャーに投入します。投入したずりはクラッシャーにてベルトコンベヤで運搬可能な大きさまで破砕した後に、後方の連続ベルトコンベヤに載せ替えて、トンネル坑外の仮設ヤードまで搬出します。従来のタイヤ方式と比較し、『排気ガスの発生が少なく、環境に優しい』『坑内の重機往来が少なく、安全性が高い』等の長所があります。
しかし、ベルトコンベヤの延伸作業には高所作業車などの重機を使用し、多くの人数と時間を要していました。延伸作業を行う間は掘削ずりの運搬が出来ないため、月に2~4日程度、掘削作業が中断される事例が多く、トンネル掘削への影響を抑制することが課題とされていました。
2. 設備の特長
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「日々延伸型テールピース台車」は3つのステージとベルトの仮受け機構を装備することで、延伸作業の大幅な時間短縮と安全性向上を実現する設備です。
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吊りチェーン設置ステージと中間フレーム組立ステージにより、高所作業車を必要とした作業が台車上から行えるため、トンネル掘削作業を阻害せずに安全に素早く作業を行うことができます。またトランス・電線収納ステージにより、坑内に別途配置していた切羽用電源台車が省略できるようになります。
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キャリアベルト受けフレームとリターンベルト受けローラにより、コンベヤベルトを仮受けすることで、延伸作業を連続した作業工程とする必要が無くなり(図2)、作業員の空き時間を有効活用できるようになります。
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1回の延伸で中間フレーム2本(7.2m)まで対応可能です。日々延伸することにより、切羽と移動式クラッシャーの間隔を常に35~45m程度に保つことで、ずり投入を行うホイールローダの走行距離改善など、CO₂削減にも寄与します。

図2:延伸作業手順
3. 運用状況
模擬トンネルにおける延伸試験において、延伸開始から本復旧までの作業全体を15分程度で完了することができ、日々延伸型テールピース台車による効果を確認しました(写真1)。
後志トンネル(天神)他工事では、トンネル掘削作業と並行して中間フレームの組立てを行うなどの効率化を実現しています(写真2、3)。
月に2~4日を費やしていた延伸作業時間の改善、およびホイールローダでの運搬距離短縮によるずり出し作業時間の改善により、生産性が向上し働き方改革(4週8休)にも寄与しています。

写真1:延伸試験の状況

写真2:後志トンネル(天神)他工事における運用状況

写真3:トンネル掘削作業と並行した中間フレーム組み立て状況
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工事概要
工事名:北海道新幹線、後志トンネル(天神)他
発注者:独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構 北海道新幹線建設局
施工者:安藤ハザマ・伊藤・堀口・泰進北海道新幹線、後志トンネル(天神)他 特定建設工事共同企業体
工期:2019年11月1日~2025年6月30日
工事概要:トンネル施工延長4,460m、幅員約10m、高さ約8m