安藤ハザマ(本社:東京都港区、社長:国谷一彦)は、これからの自動施工やプレキャスト化の拡大を見据え、プレキャスト製品など既製品の製作誤差や組立時の施工誤差による建築限界(注1)への影響を回避することを目的として、既製品組立シミュレータを開発しました。既に組み立てられた既製品の施工誤差と製作誤差を反映した既製品の出来形、さらに設置時の誤差を考慮し、組み立て後の構造物の出来形をシミュレーションすることが可能になります。
1.開発の背景
プレキャスト製品など既製品を組み立てて構造物を構築する工事では、既製品設置時に出来形管理基準の規格値で定められた誤差以内に納まるように、調整部材などを使いながら次の既製品を組み立てます。例えば、積み木を積む時に、人は既に積んである積み木の状態を認識し、手に持っている積み木の形も認識しながら、最終的に希望する形になるように積んでいきます。工事も同じように、施工済みの現況や既製品それぞれの出来形と完成後の構造物としての出来形を考慮しながら施工していきます。
製造業などでは部品の形状および組み立てのそれぞれの誤差(公差)を考慮することが普及しており、これらをデジタル情報として扱い、部品ごとの公差を調整したり組み立て誤差を考慮したシミュレーションをしたりするツールも存在します。一方、土木分野ではこのような考え方が十分に普及していないため、広く使用されているCADでもサポートされておらず、ツールも存在していません。現状では、こうした誤差に対しては、施工中に現地で調整部材などを使いながら対応して工事を進めています。
今後i-Constructionにより自動施工やプレキャスト化が進むと、既製品の製作誤差や組立時の施工誤差を認識できるとともに、調整部材などを使用した事前の施工シミュレーションができる機能がBIM/CIMモデルには求められていくと見込んでいます。
2.システムの概要
- 複数の3Dモデルを組み立てるシミュレータをAutoCADプラグイン(拡張機能)で開発しました。
- 組立時に接する現況の点と組み立てる部材の点を複数指定し、指定した点同士の差の総和が最小になるように配分して配置することができます(図2)。
- 3Dモデルを配置することで、誤差を含んだ組み立て後の形状を視覚的に確認できます。
- AutoCADプラグインなので、3Dモデルにも点群データにも適用可能です。
- ヘルマート変換(注2)により誤差配分するので、誤差配分の根拠が明確になります(図3)。
- 変換時に各点の重みづけができるので、計測ミスなどの外れ値を発見できます(図4)。
3.今後
今後、実物を計測するレーザースキャナなどと組み合わせて、現場での実証と適用を進めていきます。具体的には石垣の積み上げや消波ブロックの設置検討から適用を始める予定です。
従来、設計の立場では認識しにくく、施工の立場でも現地合わせで対応していた形状・配置の誤差を予め視覚化することでデジタルツインを実現し、品質、生産性向上につなげていきます。
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建築限界
構造物を配置しないよう確保する空間 -
ヘルマート変換
座標変換の一つ。スケール(縮尺)さえ同じであれば、変換前と変換後の面積は変わらない