株式会社安藤・間(代表取締役社長:国谷一彦)、西松建設株式会社(代表取締役社長:細川雅一)、佐藤工業株式会社(代表取締役社長:平間宏)、株式会社フジタ(代表取締役社長:奥村洋治)、三井住友建設株式会社(代表取締役社長:柴田敏雄)(以下、「共同開発会社5社」)は、仮設材としてのみ使用されていた山留め壁形鋼材を本体建物の地下外壁として利用し、地下外壁工事の省力化、建設コストの低減そしてCO₂削減に寄与する「CUW工法」(山留め壁の応力材と後打ち鉄筋コンクリート造壁を構造的に一体化させた壁体工法)について、免震建物にも適用可能となったことをお知らせします。(一般財団法人日本建築総合試験所の建築技術性能証明(GBRC性能証明第02-13号改1))これにより、免震建物への適用がスムーズとなり、CUW工法の利用をさらに促進します(図1)。
図1:CUW工法による地下外壁の例
1. 開発の背景
従来の地下工事では、山留め形鋼材(H形鋼、I形鋼)は掘削時の仮設材としてのみ使用され、工事後は埋設されたままになっていました。そこで、共同開発会社5社は、資源の有効活用を目指し、2002年にCUW工法で建築技術性能証明を取得し、これまでに22件の実績を重ねてきました。
20年以上の実績から得られた知見やノウハウを活かし、さらなる省力化・コスト削減・CO₂削減を実現するため、構造実験の実施や設計施工指針を更新し、このたび建築技術性能証明を改定しました(図2)。
図2:建築技術性能証明書
2. CUW工法の概要と特長
CUW工法は、山留め壁の構造要素である形鋼材(H形鋼またはI形鋼)と地下外壁や擁壁などの後打ち鉄筋コンクリート造壁を、頭付きスタッドなどの接合要素で一体化して壁体として利用する技術です。
本工法の特長は、「重ね壁(注1)」と「合成壁(注2)」という2通りの設計方法を選択できることです。これにより、建物の構造や立地条件、山留め壁の種類、荷重状況に応じた最適な設計が可能となり、安全で合理的な地下外壁を構築します。またそれにより、コンクリート数量や掘削土量の削減につながり、環境負荷低減にも貢献します。
なお、実大規模の構造実験による安全性検証や、実際に使用されていた山留め壁の掘り起こし調査による耐久性確認も行っています。
3. 改定内容
今回、建築技術性能証明を改定した主な内容は以下の通りです。
① 地震等の短期荷重に対する設計方法の追加
従来、通常の地下外壁に関しては長期荷重に対する設計のみを行い、地震等の短期荷重に対する設計は行わないことが一般的でした。しかし、基礎構造の合理化を目的に地震時水平力の一部を地下外壁に負担させる場合のほか、規模の大きい建物や免震ピットの地下外壁などでは、地震時水平力に対する設計が必要となります。そこで、構造実験結果を見直すことで短期荷重に対する構造性能を確認し、設計指針に短期荷重に対する設計方法を追加しました。
② 免震ピットの地下外壁(立上り壁)と基礎スラブの接合部分(隅角部)に関する設計方法の追加
CUW工法を免震建物に適用する際には、免震ピットの立上り壁に作用する側圧(注3)によって生じる断面力を基礎スラブに伝達できる隅角部を構築することが、構造物の安全性を確保するうえで必要です。しかし、これまで立上り壁と基礎スラブの接合部分に関する具体的な設計方法が示されていませんでした。
そこで、構造実験によって応力伝達機構を確認し、立上り壁と基礎スラブの接合部分の設計方法を確立し、設計指針に追加しました(図3、写真1)。
図3:合成壁を適用した立上り壁の概要
写真1:立上り壁の構造実験状況
③ 山留め壁に生じた施工誤差への対応方法の追加
山留め壁形鋼材が地盤側にずれて施工された場合、合成壁における接合部材の先端が後打ち鉄筋コンクリート造壁の鉄筋に達しないことがあります。従来は溶接金網等を用いて補強を行っていましたが、補強の合理化を目指して、U字型鉄筋による補強方法を考案し、構造実験により耐力を確認した上で施工指針に追加しました(図4、写真2)。
図4:合成壁を適用した立上り壁の概要
写真2:補強効果確認の構造実験状況
4. 期待される効果
本工法により、地下工事の省力化、工事費の削減、後打ち鉄筋コンクリートの壁厚縮小による室内空間の確保、CO₂排出量削減などの効果が期待できます。また、今回の改定により隅角部の設計方法を確立したことで、免震建物への適用をさらに推進することが可能になります。
免震ピットの立上り壁にCUW工法(合成壁)を適用した試設計(壁高さ5m)では、従来工法と比較して、壁厚および鉄筋量が低減することで躯体数量が削減し、施工コストを20%、さらにCO₂排出量を22%低減できることを確認しました。(注4)
5. 今後の展開
本工法は、土圧・水圧が大きく作用する深い地下構造を有する建物や立上り壁を有する免震建物の地下外壁の壁厚や鉄筋量を効果的に低減できる技術です。
今回の改定を踏まえ、共同開発会社5社は、これまで適用に課題を有していた深い地下構造をもつ建物や免震建物に対しても当工法を積極的に提案し、施工への普及、展開を図ってまいります。
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形鋼材と後打ち鉄筋コンクリート造壁それぞれが独立した曲げ抵抗部材とみなせる形式
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形鋼材と後打ち鉄筋コンクリート造壁の両者が一体の曲げ抵抗部材とみなせる形式
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地下外壁に常時作用する地盤や地下水による圧力、地震時に周囲の地盤と建物の揺れ方の違いにより地下外壁に作用する地盤の圧力
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効果(施工コスト、CO₂排出量)は建築物や山留め壁の仕様・規模、地盤条件などにより異なる。試算は、立上り壁のコンクリートと縦筋、接合部材を対象にした結果