安藤ハザマ(本社:東京都港区、代表取締役社長:福富 正人)と富士ソフト株式会社(本社:神奈川県横浜市、代表取締役 社長執行役員:坂下智保)は共同で、Microsoft 社が提供するヘッドマウントディスプレイ端末である「HoloLens 2」(注1)を活用した室内環境可視化技術「環境ウォッチ ver.2」を開発し、安藤ハザマ技術研究所にて運用を開始しました。
本技術では、「環境ウォッチ」(注2)で備えた事前実施したシミュレーション結果の表示機能に加え、センサで計測した温度や湿度などのデータをリアルタイムで室内にAR(注3)表示することが可能となりました。
利用者は事前のシミュレーションと現在の室内の状況を実スケールで確認でき、これまで見落としがちであった問題点を発見するツールとして活用できます。室内環境改善や設備運用上の課題を早期発見することにより、お客様価値の向上に寄与します。

図1:システム概要
1.開発の背景
2018年に発表した「環境ウォッチ」はデモンストレーションにご参加いただいたお客様から高い評価を得ました。しかし、室内環境の事前シミュレーション結果を表示する機能に特化していたことから、リアルタイムで室内の環境状況を見える化したいという声が利用者から多数寄せられました。そこで「計測データのリアルタイム表示機能」と「クラウドでのコンテンツ管理機能」を追加し、新たに「環境ウォッチ ver.2」として開発しました。
2.システムの特長
①室温などのセンサデータのリアルタイムAR表示
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センサ類で計測した室内環境の変化を、クラウド連携により2分間隔でモデルに反映させながら実空間に表示できます。(図2)
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クラウドに蓄積したデータを利用し、時間を遡って室内環境を確認することも可能です。
②複数現場の3Dコンテンツをクラウド上で同時管理
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専用のWebアプリを使用することで、複数の現場の室内環境データ(3Dコンテンツ)(注4)をPC上で簡単に管理できます。
③QRコードを要所に配置し、表示位置の正確性を向上
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3Dコンテンツの位置合わせにはQRコードを使用します。複数箇所に設置することで、端末を利用中に生じる、実空間とコンテンツの位置ズレを常に修正することができます。(図3)

天井設置の(空気)温度センサのデータを計測用サーバで収集し、そのサーバからクラウドを介して環境ウォッチver.2に転送することで、実空間でのリアルタイム表示を実現。上図は空調の効果で室内温度が変化した様子

図3:QRコードスキャン状況
3.適用事例
2022年2月に安藤ハザマ技術研究所にて当該技術を適用し、運用を開始しました。所内に設置しているZEB実証エリア(注5)にて温度センサデータと連携した室内温度分布のリアルタイム表示機能を適用するとともに、事前の3Dシミュレーション結果や設計BIMデータを複数切り替えてAR表示する機能を適用しています。
4.今後の展開
竣工検査時の空調設備の確認と室内温度計測支援や、建物引き渡し時のお客様とのコミュニケーションツールとして、設計業務や施工現場へ積極的に展開を図る予定です。
また、現在は、温度や湿度などスカラー量のドット表示のみの対応ですが、今後は風向風速などのベクトル量やサーモグラフィのような面データ表示への対応に取り組み、本技術の活用の幅を広げていきます。加えて汚染物質の拡散度合や空間の快適性の可視化など、適用先拡大に向けて開発を進めていきます。
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Microsoft HoloLens 2(マイクロソフト ホロレンズ 2)
URL:https://www.microsoft.com/ja-jp/hololens
Microsoft 社が開発した自己完結型ホログラフィックデバイス。目の前の現実世界に、仮想世界のホログラムを重ねて表示させることで、現実世界と仮想世界を複合した「Mixed Reality」(複合現実)を実現する。ヘッドマウントディスプレイ状のデバイスで、単体で動作するため、歩行範囲に制限がなく、両手も空くため、業務での活用が進められている。
※HoloLens 2、Microsoftは、米国 Microsoft Corporationの米国、日本及びその他の国における登録商標または商標です。
※記載されている会社名および商品名は、各社の登録商標または商標です。 -
室内環境可視化技術「環境ウォッチ」を開発
-ARにより室内の温度・気流を可視化-
(安藤ハザマ:2018年2月13日公表) -
Augmented Reality(拡張現実)
人が知覚する情報を拡張する技術。現実に3Dオブジェクトを重ねて表示することで、そこに物体、現象を見ることができる。 -
3Dコンテンツ
本技術によりAR表示する、温度・湿度センサデータや事前シミュレーション結果の3Dモデルを総称してこのように呼称。 -
ZEB実証スペースを整備・運用開始
-安藤ハザマ技術研究所 本館棟にて-
(安藤ハザマ:2020年7月1日公表)