土木施工のIT化
社会資本は調査・計画、設計、施工、維持管理までのライフサイクルが長いため、その整備・管理においては、作業の効率化や生産性の向上を図ることのできる技術が必要です。「GNSSによるIT施工システム」はITを活用した新時代の技術を施工に組み込んだものであり、施工精度を上げて出来形と品質を良くし、施工効率を高めてCO2削減にも寄与します。
IT施工システムの全体像

作業の効率化と品質の確保。これらを同時に実現できる基幹技術がGNSS(Global Navigation Satellite System)、人工衛星を利用した位置計測システムです。GNSSによる3次元位置データと時刻データを、経験と実績に基づく施工技術と結合させることで、建設生産プロセスの合理化と技術競争力の強化をめざします。
特長
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工期・工程短縮による環境負荷低減
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施工情報の活用による監督検査の省力化
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位置情報と時刻情報による施工証明
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施工から維持管理への情報連携
IT施工システムの具体例
掘削管理

建設機械の3次元位置と事前に登録した地盤データベースを対比させながら地盤を掘削。掘削量の最適化により生産性を向上させます。
構造物・法面の連続変位Web監視

施工中の構造物や法面を常時観測し、過大な負荷や外的要因により機能を損なう変形・変位が発生していないかどうかをモニタリングしています。
敷均し管理・締固め管理

GNSSなどの計測データを瞬時に解析して出来形や地盤剛性を求め、機械操作に反映。作業効率化を図り、機械稼働時間の短縮化による省エネを実現します。
車両運行管理

ダンプ等の車両運行データ(積荷と位置、時刻)を常時監視することで、指定材料の運搬実績を証明。また、不法投棄などの違法行為や不経済走行も見逃しません。
IT施工システム 次世代ヘの挑戦

マレーシアペトロナスツインタワー。完成当時世界一の高さを誇った超高層ビルの施工を支援。
超高層ビルの施工出来形を計測することは難しいが、GNSSを用いれば構造物の外周に位置する基準点との対比が容易となり、絶対計測精度が向上する。特に高層階になるほど威力を発揮する。

文部科学省管轄、高エネルギー加速器研究機構が実施する国際的実験を側面から支援。
約300km離れたニュートリノビームの発射地点と受信地点の間の相対的位置計測をGNSSで実現。
建設工事に直接関連したこのような長基線計測は他に例がない。

農林水産省所管、マリノフォーラム21が実施した人工海底山脈建設工事。
長崎県生月島の沖合5km、水深80mの海底に、石炭灰利用のコンクリートブロックを海上から投下して、延長100mの山脈を建設。投下位置や海底地形をGNSSを中心としたシステムで計測。