技術概要
2011年3月に発生した東北地方太平洋沖地震にともなう原子力発電所事故により、福島県を中心とした東日本の広い地域が放射性セシウムに汚染されました。環境省を中心として、事故で降り注いだ放射性セシウムを取り除く除染作業が実施され、この除染作業で発生した放射性物質汚染土壌等は、最終処分するまでの間、福島県内に設置された中間貯蔵施設で保管されます。ここでは、除染や中間貯蔵に関連する技術を紹介します。
特長
フレコンの放射能濃度測定技術
除染作業では汚染された土壌表層部をはぎ取り、フレコンバッグに封入します。このフレコンの放射能濃度測定技術は、フレコンに封入された土壌の放射能濃度を、フレコンを解体することなく、精度よく測定する技術です。
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4トントラックに測定装置をマウントした状態で計測できるため、機動性があります。測定を行う仮置場間などの移動が容易です。
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測定するフレコンの吊り上げ、重量測定(デジタル秤)、濃度測定、フレコンの戻しの一連の作業サイクルに要する時間は40秒~1分です。
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実際の除染サイトにおいて、放射能汚染土壌の入ったフレコン内の土壌の放射能濃度を測定し、別途行ったゲルマニウム半導体測定値と比較した結果、フレコン濃度測定装置とゲルマニウム半導体測定値の平均誤差が10%以内であることを確認しています。
有機物分別技術
除染作業で除去された土壌等は中間貯蔵施設に搬入され、土壌と異物の分別を行い、土壌は中間貯蔵施設に保管、異物のうち有機物(可燃物)については焼却施設で焼却・減容化処理されます。この有機物分別技術は、水を使用しない乾式方式で土壌と有機物を効率よく分別する技術です。
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分別装置は、トロンメルの内部に土塊等の解砕用の回転翼を装着した機構となっています。回転翼がトロンメルドラム内で独立して回転することにより,有機物に固着した土塊を解砕し,有機物と土壌を効率的に分別します。
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河川堤防地区の発生土から雑草や植物根茎等を分別する作業で多くの使用実績がある技術です。
放射能濃度測定分別装置
中間貯蔵施設に搬入されたフレコン入りの除去土壌は、受入分別施設において破袋され、土壌から異物を取り除くとともに、土壌の放射能濃度を測定し、所定の設定濃度で高濃度土壌と低濃度土壌に分別されます。この放射能濃度測定分別装置は、任意の設定濃度で放射能汚染土壌を連続的に高濃度と低濃度の2種類に分別します。
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CsIシンチレータとMPPCの組み合わせを用いた濃度測定分別装置と、ベルトスケールで土壌重量を測定して土壌の放射能濃度を算出することにより、誤差平均10%以下で土壌濃度を連続的に測定することができます。
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本装置の処理能力は70トン/時間であることを実証試験により確認しています。
放射能濃度測定分別装置の処理の流れ