技術概要
DX(デジタルトランスフォーメーション)が求められている現代において、文化財・歴史的建造物の分野も例外ではありません。安藤ハザマは、昔から培われてきた職人の技術をデジタル化することによって、その技を保存して広く後世に伝えるとともに、若い職人の育成や制作時の検討材料として活用できると考えています。
特長
古写真からの3Dモデリング技術
彫刻欄間の表裏2枚の古写真から、3Dモデルを制作する技術を日本で初めて開発しました。複雑・精緻な造形物である彫刻欄間も、本技術により正確に立体的に再現することができました。
本技術を用いて制作したモデルを、3Dプリンタで出力した模型と組み合わせて活用すれば、試作品の制作や関係者間の情報共有も確実なものにできます。
錺(かざり)金具デジタルデータ化技術
錺金具とは、伝統建築において用いられている金具類の中でも装飾性の高いものをいい、微細な意匠に加えて金銀の光沢や、煮黒味(にぐろみ)という黒色が用いられていることが特徴です。錺金具の3Dスキャニングでは、光を対象物に照射して形状を測定するため、光を反射しない黒色や光沢のあるものはうまくスキャニングできず、微細な文様を再現することが難しいという問題がありました。こうした課題を、様々なスキャナーそれぞれが得意とする部分を組み合わせ、レンダリング技術とともに試行錯誤を繰り返すことにより解決し、名古屋城本丸御殿の錺金具の試作品について、金箔、煮黒味の色や質感、微細な彫金技術、泥七宝(どろしっぽう)の色艶や気泡などを忠実に再現しました。
本技術はパンチ工業株式会社と共同で、錺金具の製作者である株式会社後藤錺金具製作所の指導のもとに行ったものです。
木造歴史的建造物の3Dモデル仮組み技術
木造の歴史的建造物の修復・復原作業においては、解体した部材を元通りに組み建てなければなりません。長期間に及ぶ木軸部材の変形や反りなどは、設計図面から判断することが困難です。この課題を解決するために、軸部材の3Dモデルを用いた仮想空間上での仮組技術を開発しました。仮組みは、安藤ハザマの豊富な文化財・歴史的建造物の施工実績を基に、実際の施工フローに従っておこなっています。仮組みモデルを3D復原設計モデルに重ね合わせ、復原図の妥当性を検証することで、この手法の有効性を確認しました。本研究は株式会社アールテックとの共同研究で行ったものです。