技術概要
城郭石垣をはじめとする文化財石垣の補修においては、その価値を損なわず、安定性を回復する必要があります。伝統的な技法による解体・積み直しが困難な状況では、石垣構造を破壊することなく、安定性の向上を図るための技術が必要です。安藤ハザマでは、関西大学と共同で開発した鉄筋挿入工法をはじめ、伝統的な間詰石工法についても、その補強効果を実験や解析で確認し、調査から補修・補強、維持管理までの技術を保有しています。また、石垣の耐震性の検証では、実物大石垣の振動実験を行い、基本的な特性を確認しました。
特長
石垣の補修・補強では、対象となる石垣の変状の度合いや、文化財的な価値、周辺環境などによって、対策工法を適切に選定する必要があります。
これまで、変状が大きい場合は、解体・積み直しされることが多かったのですが、現状の石垣を極力そのまま残したい場合や、周辺の条件などから工事そのものが難しい場合もあり、補強工法が検討される事例も増えています。こうした条件における補強方法として、鉄筋挿入工法を開発しました。
一方で、将来的には補修・補強を実施する計画がある場合は、各種計測工法を適用した日常の維持管理のための提案も土木工事等で培ってきた計測工が活躍しています。
解体・積み直し
変状が進み、補強だけでは安定性が保てない場合や、交通量の多い道路に面した石垣などでは、解体・積み直しが必要となります。この場合、基本的には伝統的な技法を有する専門技能者が工事を担当しますが、変状の要因を特定し、同様な変状の発生を避けるためにも、工学的な見地からの検討が必要です。
当社では、石材の強度の判定や伝統的な材料による地盤改良法の提案など、文化財を守るための技術的な支援を幅広く行っております。
鉄筋挿入工法の開発
鉄筋挿入工法は、石垣表面から防錆処理を施した鉄筋を打設することで、石垣の安定性を向上させる方法です。この工法の効果は、遠心載荷実験や実物大石垣による実験から確認されており、他の補強法が適用できないような狭小地などでの施工も容易です。
間詰石工の効果の検証
石垣を構成する石材である「築石」の間に配置される「間詰石」は、石垣の美観を整え、古くは忍びの者の侵入を防ぐ意味で重要なものとされてきました。一方で、工学的な実験や解析から、石垣の安定性向上にも大きな役割を果たしていることがわかりました。間詰石工は、こうした研究に裏付けられた伝統的技法による石垣の補修技術です。
計測工―日常の維持・管理―
変状度合いが大きくない場合は、計測工によるモニタリングが有効です。安藤ハザマでは、石垣の特徴を考慮して、適切な計測工を提案します。また、石垣の維持管理には、石垣カルテが不可欠ですが、この管理を容易にするための簡易なPC版の石垣カルテも開発しました。