東京・臨海編
臨海副都心のランドマーク
東京ビッグサイト
日本最大級の展示施設であり、国際的な展示会やビッグイベントを数多く開催するのが東京国際展示場だ。一般的には「東京ビッグサイト」の名称で知られている。臨海副都心のランドマークとして有名な施設であり、経済や文化交流といったコミュニケーション・ハブとして機能してきた。そんな東京ビッグサイトの象徴である会議棟(コングレスタワー)の建築プロジェクトを紹介する。
東京ビッグサイトの象徴となる会議棟
東京ビッグサイトは、東京都による臨海副都心開発から生まれた。臨海副都心は、東京の7番目の副都心として湾岸エリアの埋め立て地に計画されたもので、台場、青海、有明北、有明南からなる。
そうした新しい都市づくりの中で、経済的・文化的なコミュニケーション・ハブとしての役割を期待されて計画された東京ビッグサイトは、約26.6万㎡の敷地に、東西南の3つの展示棟を擁する計約11.5万㎡の総展示面積を誇る国内最大級の展示会場だ。
世界に誇る自動車産業の国内最大イベントのジャパン・モビリティ・ショー(旧:東京モーターショー)や国内屈指の集客を誇り、今や文化として世界への文化発信の地ともなったコミックマーケットの開催地にもなっており、国際交流やビジネス機会の創出など、東京だけでなくニッポンのブランド向上に貢献する施設となっている。
東京ビッグサイトの中でも特に目を引くのが、会場入り口となる会議棟である。ピラミッドを逆さまにしたような幾何学的な造形と、チタン製パネルとガラスで覆われた外観は、他ではなかなか見られない斬新さがあり、国内外から展示会場を訪れた人々に強いインパクトを与えている。
“これまでにない造形”を実現するために採用した工法とは?
東京ビッグサイトのシンボルとなる会議棟は、安藤ハザマ(当時:ハザマJV)が建設を担当した。
巨大なピラミッドを逆さまにして、それぞれを4本の柱で支える構造は、これまでにない造形であった。逆ピラミッドの内部は1,000人を収納する大会議室などを含む3層構造で、一辺が90m、重量は内装が未完成の施工時でも約6,500tにも及ぶ。また、現場は海に面した埋め立て地にあり、建物を傷める強い潮風にさらされる。独創的なデザインだけではなく、地盤や気象条件など、いくつもの困難な施工条件が大きな課題となっていた。
そこで採用されたのが、通常の建物のように下から積み上げるのではなく、地上で作られた逆ピラミッドの構造体を4本の柱を使って空中に引き上げる「リフトアップ」という工法である。一辺が90mにもなる3層構造という巨大な構造体を持ち上げる試みは、当時としても前例のない挑戦だった。
世界でも前例のない大構造物のリフトアップ工事であったため、課題も山積みであった。検討項目は100項目にも及び、事前に鉄骨の変形や温度変化、風や地震への対応、施工時の精度管理など、多岐にわたる検証が重ねられた。
クリアランスはわずか2㎝、時速2.7m、針の穴を通すような精密な作業
実際のリフトアップでは、合計64基の油圧ジャッキを使い、コンピュータ制御で構造物を吊り上げた。引き上げる構造物と柱の間の隙間が、わずか2㎝しかなかったため、その隙間を超音波センサーで計測・管理し続けた。
引き上げのスピードは1時間に2.7m。慎重に作業を進めながら、3日間をかけて23.35mを吊り上げ完成させたのだ。
ちなみに、リフトアップ前日には震度3の地震が発生していた。すでに構造物を吊り下げた状態であったが、備えられた設備が揺れを抑えており、構造物への大きな影響はなかった。ある意味この地震そのものが、リフトアップの安全性の確認に役立ったという。
事前の入念な検討とそれを実現する高い技術、そして現場スタッフのチームワークが、誰もが目を見張る会議棟を実現させた。当時の先進的な施工技術が投入されたこの建造物は、安藤ハザマが培ってきた「挑戦」というDNAを象徴するひとつと言える。その優れた建築品質は、「BCS賞(建築業協会賞)」の受賞という形で高く評価されている。
建築の枠を越えて“文化のシンボル”に
世界最大のリフトアップ工法を経て会議棟が完成し、東京ビッグサイトは1996年4月に開業した。東京の新橋から新交通システム「ゆりかもめ」を使えば約30分というアクセスの良さもあり、すぐに人気の施設となった。
2007年には累計来場者数1億人を突破し、2015年には2億人、2023年には3億人を突破している。現在では、年間300件を超えるイベントが開催され、年間1,200万人以上が訪れる国内有数の展示施設となっている。臨海副都心エリアそのものも、平成から令和にかけて非常に大きな発展を遂げてきた。
その発展を支える存在のひとつである東京ビッグサイトには、展示会やイベントを通して、多くの人や企業、文化がここに集まり、新たな交流やビジネスが生まれている。
東京ビッグサイトは、臨海副都心の発展を支える都市のインフラとして“ひとつの建築”の枠を超え、“文化のシンボル”として機能し、前例のない挑戦の先に生まれたこの建築は、人と都市をつなぎ続けている。
【工事概要】
| 工事名 | 東京国際展示場(仮称)管理会議棟新築工事 |
|---|---|
| 発注者 | 東京都財務局 |
| 工期 | 1992年10月~1995年10月 |
海と人との交流の場
東京都葛西臨海水族園
葛西臨海公園の象徴的な存在であり、幾何学的なガラスドームが特徴の葛西臨海水族園。「海と人間との交流の場」をテーマに、1989年(平成元年)にオープン。数々の日本初・世界初の展示を導入し、今なお多くの人々に愛され続けている。この東京湾岸の新たな風景を形作った、安藤ハザマ(当時:ハザマJV)の技術の結晶を振り返る。
充実の展示と体験プログラムで6,000万人超が来場
恩賜上野動物園にあった水族館を、移転・拡充して生まれたのが葛西臨海水族園だ。東京駅から電車で約20分という好立地で、国内屈指の規模を誇り、1989年のオープンからこれまで6,000万人を超える人が訪れている。
世界で初めてクロマグロの群泳展示を実現した巨大な2,200㎥の水槽や、100羽を超えるペンギンなど、世界中から集められた500種を超える海や水辺の生き物が展示されている。充実した展示だけでなく、「しおだまり」や「ガイドツアー」などの体験型展示やプログラムが数多く用意されていることも魅力だ。小さな子供から大人までが楽しめることも人気の理由だろう。
そのガラスドームの3階部分がエントランスで、1階と2階が展示スペースだ。ユニークなのは、エントランス階の4分の3が水をたたえた噴水池となっており、その中央に幾何学的なガラスドームがそびえ立っていること。水族園へのアプローチは、まるで海へ入ってゆくようなイメージを抱かせるものになっている。
来園者は、入り口に立つだけで海とのつながりを感じられ、来場する多くの人々にとって、身近でありながら価値の高い水族館として愛されてきた。
まるで美術館のような外観・当時の最先端技術を尽くした巨大水槽
葛西臨海水族園がある葛西エリアは、かつて地盤沈下などによって水没した民有地の復元から始まった土地である。そこから、豊かな自然と都市機能が調和する新たな街づくりを目指して開発がスタート。その湾岸地区整備の一環として、また恩賜上野動物園開園100周年を記念して計画されたのが、葛西臨海水族園であった。
安藤ハザマらが施工を担当した本館は、地上3階建て延べ床面積13,299㎡の円形の3層構造となる。テーマは「海と人間との交流の場」であり、その実現のため、世界中から海や水辺の生き物が集められた。また、展示方法や内容も世界初や日本初といったものが数多く採用された。
水族園のシンボルであるトラス構造によるガラスドームに注目が集まることが多いが、水族園としての展示施設の施工にも当時の最先端技術が使われている。たとえば世界初となったクロマグロの群泳展示水槽は、当時の日本最大のものであり、大型のアクリルパネルを現場でつなぎ合わせる工法は、その後、日本各地の大型水槽にも採用されるようになった。
また、水槽の施工だけでなく、埋立地特有の軟弱地盤に対応する基礎杭の打ち込み、美しい外観を実現するコンクリート打放し仕上げ、さらにはリアルな海底を再現する擬岩の製作など、多くの技術と工夫が注ぎ込まれた。こうした取り組みは高く評価され「BCS賞(建築業協会賞)」を受賞するという確かな実績を残している。
子供から大人、教員、研究者まで幅広い人々が活用
葛西臨海水族園では、いくつもの充実した体験プログラムが用意されている。
ウニやカニといった磯の生き物に触れあう「しおだまり」の展示は小さな子供に大人気の展示だ。また、より詳しく知りたい人には「ガイドツアー」や、小学生や中学生、高校生向けの団体プログラムだけでなく、小学校教諭向けのプログラム、さらには研究職に向けた博物館・飼育実習や、環境省や他団体などの外部機関と連携する調査・研究プログラムまでも用意されている。一般来園者だけでなく、教育機関などとも協力しながら、海と人々との交流の場を提供している。
オープン以来、葛西臨海水族園という場を舞台に、6,000万人を超える人々が海と交流してきた。その数字こそ、安藤ハザマが携わった葛西臨海水族園が、今なお社会に価値を提供し続けている証と言えるだろう。
【工事概要】
| 工事名 | 東京都葛西臨海水族園 |
|---|---|
| 発注者 | 東京都財務局 |
| 工期 | 1987年5月~1989年9月 |
東京・臨海周遊グルメドライブ紀行
日本各地の優れた食と安藤ハザマの仕事をグルメドライブでつなぐ。
手がけてきた施工実績は人々に親しまれながら、地域の暮らしとともに時を重ねていく。
1978年創刊の自動車情報誌『CAR and DRIVER(カー・アンド・ドライバー)』とともに、
その周辺エリアで楽しめる絶品グルメや立ち寄りスポットを巡るドライブプランを紹介しよう。

(自動車誌『CAR and DRIVER』
優れた食を数多く有するニッポン。
貴方の人生は、素晴らしい食との出会いで、より豊かなものとなるはずだ。
今回のドライブ旅の舞台は首都・東京と臨海エリア。ここには無数の出会いがある。
下町の老舗と東京豊洲市場の2つのグルメスポットを巡る
東京が世界中の優れた食が集まる世界屈指のグルメ激戦地なのはいうまでもないが、今回は歴史ある優食スポットを紹介する。それは享保3年(1718年)創業の両国の老舗[もゝんじや]。[もゝんじ]とは百獣を意味し、猪(いのしし)など動物の肉を扱う店が[もゝんじ屋]と呼ばれた。もとは漢方薬店だったが、薬のひとつである猪が[山くじら]と称して人気となり、料理店に転身したという。そんな江戸から続く[もゝんじや]の看板料理は、八丁味噌と江戸の桜味噌を合わせた味噌仕立ての[猪鍋]。甘めの味噌と猪肉が生み出すその味は感動もの! 最近は若年層のお客さんも多いとか。300年間もファンが通い続けるのも納得の味である。
Pick up
墨田川の両国橋近くに店を構える[もゝんじや]。看板の猪鍋と鹿刺身を含む[猪鍋とお料理三品コース](7150円+サービス税)が人気だ。単品は[猪鍋](4840円+サービス税)、[鹿刺身](1980円+サービス税)、[猪ひれ炭火焼](2200円+サービス税)
そんな下町の味の余韻に浸りながら続いて向かったのは豊洲市場の場外市場となる[豊洲 千客万来]。1階から3階にわたって飲食店が並び、8階には足湯を備えた展望デッキと、立ち寄り温泉までが揃う。時間に余裕があるなら、ゆっくり過ごすといいだろう。
下町気分を味わいたいなら東京スカイツリーの足元の最新の水辺商業施設[東京ミズマチ]を散策するといい。ここでカフェ巡りをするのもいいし、ドライブがてらに東京湾アクアラインの海ほたるSAまで足を伸ばして、スイーツを楽しむのも一興である。
Pick up
東京市場の場外市場となる[豊洲千客万来]。江戸の街並みをイメージした施設には、約70の店が並ぶ。写真は、羽釜で炊き上げたご飯を使う、豊洲奈良屋の[まぐろの中落ち定食](小1800円/中3000円/大5500円)
東京スカイツリー®の足元にある最新の水辺の商業施設が[東京ミズマチ]だ。写真のような上質な和菓子を楽しめる[いちや]をはじめ、カフェやお洒落なショップが並んでいる
東京湾アクアラインの唯一のSAが[海ほたる]だ。富士高原の井出種畜牧場の新鮮な牛乳を使ったスイーツを用意する[IDEBOK]や、オリジナルのパン類の[うみぱん]など人気の飲食店が揃っている
大都市・東京をあえてドライブ旅で巡るという楽しみ方
ニッポンの首都・東京でドライブを楽しむなら、臨海エリア中心とするのがオススメだ。なぜなら新宿や渋谷といった山手エリアは、渋滞がひどく、クルマでの眺望もいまひとつ。一方、臨海エリアなら眺めの良い高速道路も多く、道も比較的に空いているからだ。
今回のグルメドライブのスタート地点は、下町にある[東京スカイツリー®]とした。ここはいわずと知れた東京を代表する観光スポットであり、[東京ソラマチ]や[東京ミズマチ]などの商業施設も充実している。今回、紹介した[もゝんじや]は東京スカイツリーからクルマで約15分、[豊洲市場]のある豊洲までは約40分。下町から千葉方面に進めば、広々とした[葛西臨海公園]や[地下鉄博物館]があり、商業・レジャーが融合した先進的なベイエリアが広がる。
Pick up
[葛西臨海公園]は広場/観覧車/水族館/水辺/バードウォッチングエリアなどを擁し、子供や愛犬と一日を過ごせるスポットだ。入園無料(一部有料施設あり)
[地下鉄博物館]は車両のほか、トンネルを掘削するシールドマシンカッターディスク(写真)などコーナーごとに各種展示。鉄道ファンなら見逃せない
臨海エリアを横浜方面に向かうと、[川崎マリエン]という公園施設がある。公園内のタワー棟10階は、地上51m・360度ビューが広がる絶景スポット。日本夜景遺産にも登録されており、夜は21時まで楽しめる。湾岸高速道路を使って南下し、横浜の[大黒ふ頭PA]でUターンするのも臨海エリアのドライブの定番だ。
さらに臨海エリアには、東京と千葉を結ぶ東京湾アクアラインもある。空いていれば、20分ほどで千葉の木更津にたどり着く。朝早くに出発して、午前中に木更津にある[空と大地の丘 森本農場]で農業体験にでかけてくるのもいい。ちなみに、東京湾アクアラインは、途中にある[海ほたるPA]でUターンが可能だ。東京湾に浮かぶ海ほたるPAは、臨海エリアドライブ屈指の人気スポットだ。
もしも貴方が運転好きであれば、お台場にある23区内唯一の[シティサーキット東京ベイ]に行くといい。本格的な電動レンタルカートで、気軽にレーサー気分が味わえる。しかも手ぶらでOKなのだ。
東京には、ドライブ旅でこそ楽しめることも盛り沢山なのである。
Pick up
湾岸高速道路が通過する川崎市東扇島にある大きなコミュニティ施設が[川崎マリエン]だ。広場にBBQエリア、キャンプスペース、ビーチバレー場などがある
木更津の郊外にあるアクティビティ農園が[空と大地の丘 森本農園]だ。収穫体験やBBQ、流しそうめんなどが楽しめる。小さな子供の食育にお勧めだ
お台場にある本格的なレンタルEVカート場が、[シティサーキット東京ベイ]。ヘルメット類はすべてレンタル品が用意されているので、手ぶらでOK。予約がお勧め
Drive MAP
東京の臨海エリアの移動は高速道路が中心となる。東京から湾岸高速道路を使えば、千葉市や横浜市まで1時間弱でアクセス可能。また、東京湾アクアラインを使えば、最短20分ほどで東京湾を渡って木更津(千葉県)まで行ける。
Ⓐ隅田川近くの下町エリアにあるのが[東京スカイツリー]だ。首都高からの最寄りは7号線の錦糸町出口、6号線の駒形と向島出口
Ⓑ“しし鍋”料理の名店[もゝんじや]は墨田川・両国橋の東側、国道14号線沿いにある。大きな猪の看板が目印だ
Ⓒ[地下鉄博物館]は東京メトロ東西線・葛西駅の高架下にある。写真は丸の内線301号と1001号車である
Ⓓ[葛西臨海公園]内にはクロマグロの回遊やペンギンを観察できる国内屈指の大型施設を持つ葛西臨海水族園がある
Ⓔお台場エリアの隣の豊洲にある、東京市場に隣接するのが場外市場の[豊洲千客万来]だ。施設に専用の駐車場が用意されている
Ⓕジャパンモビリティショー(JMS)など、数々のビッグイベントを開催する東京ビッグサイト
Ⓖ東京23区唯一の本格カート場が[シティサーキット東京ベイ]。場内ではBBQが楽しめるブースもオープン。家族や仲間で楽しめる新しい施設だ
Ⓗ湾岸高速道路を東京から南下し、東京湾アクアラインの分岐となる川崎浮島JCTを通過、浮島ICで降りると[川崎マリエン]だ
Ⓘ全長約15㎞の東京湾アクアラインの中間地点にあるPAが[海ほたる]だ。東京側からも千葉側からも片道料金でUターン利用が可能
Ⓙアクティビティ農園[空と大地の丘 森本農園]は、東京湾アクアライン木更津金田ICを下車し、20分ほどのドライブで到着する
問い合わせ先・取材協力/ Ⓐ東京スカイツリー/☎︎0570-55-0634 Ⓑもゝんじや/☎︎050-5485-6391 Ⓒ地下鉄博物館/☎︎03-3878-5011 Ⓓ葛西臨海公園/☎︎03-5696-1331 Ⓔ豊洲千客万来/☎︎03-3533-1515 Ⓖシティサーキット東京ベイ/☎03-6380-7799 Ⓗ川崎マリエン/☎︎044-287-6000(受付) ⒾNEXCO東日本・海ほたる(総務課)/☎ 0438-41-7401 Ⓙ空と大地の丘 森本農園/☎︎0438-53-7273
【コンテンツ提供】CAR and DRIVER(株式会社カー・アンド・ドライバー)
※ このページは2026年6月時点の情報を元に構成しています。