
九州の物流拠点、久山町
福岡県糟屋郡久山町(かすやぐんひさやままち)は、福岡空港や博多港、九州自動車道の福岡インターチェンジや古賀インターチェンジからのアクセスが良く、陸路・空路・海路を利用した物流に適していることから、九州における物流拠点として発展している。
数々の倉庫が立ち並ぶなか当社の設計施工で建設を進めている本現場は、2022年に竣工した「CBRE IM 福岡篠栗」に続く大型物流施設であり、前回の実績が活かされた現場となっている。
フロントローディングによる効率化
本現場では着工半年前から本社と施工工程や収まりの検討等について協議を開始し、想定できる懸念点を可能な限り解消した状態で施工に臨んでいる。このように工事着手前の段階で施工の計画や検討を行うことを、「フロントローディング」という。施工を進めながら設計を見直していく現場主導の方法ではなく、着工前の段階で検証やシミュレーションをより強化し本社との協力体制を深めた方法へ移行したことによって、現場の社員がより作業に集中できる環境をつくりだしている。
早い段階から3DCADやBIMモデルを作成することにより、従来の2次元の図面では行えなかった詳細設計を事前に行うことができ、鉄筋の配置だけでなく施工手順の確認も可能にしている。
また、本現場は搬入口が一か所しかなく、いかに効率よく資材を取り込んで施工を進めていくかが一番の課題となっていたが、敷地の奥から手前に施工を進めていく「建て逃げ方式」を採用し、ブロックごとに区切って工事を進めることで効率化を図っている。建物内には搬入車両用の道路をつくって施工箇所付近まで資材を運べるようにすることで、大型クレーンを使う必要をなくし、コスト削減も実現している。
このように計画段階で様々な施策を取り入れながら、工程の遅れや長時間労働を防ぎつつ、効率的な施工を実現している。
副所長兼工事長を務める岡田は語る。
「フロントローディングの活用により施工中に発生しそうな懸念事項について早い段階で協議したことで、工程はとてもスムーズになりました。例えば、この壁の凹みはフロントローディングが活かされた一例です(写真①)。着工前に検討した段階で、柱と壁が干渉することがわかりましたが、強度などの検証も行ったうえで内壁に凹みをつくったことでスムーズに施工することができました。」(岡田)

写真①:フロントローディング活用例

岡田副所長兼工事長
発揮される現場力
フロントローディングで緻密に協議された事前計画と、効率良く安全に細かい作業を積み重ねていく現場の努力が一体となっている。
本現場の特徴の一つに、自重曲げによる屋根折板工事がある(写真②)。これは、折板を敷地の奥から手前に向かって設置し、折板の自重を利用して自然に曲げることで、屋根の勾配を形成する方法で、施工効率と品質の向上を図ることができる。自然な曲面になるよう、フレームの高さや梁の高さに誤差がないか現場で確認し、調整プレートを入れてミリ単位での調整が行われた。

写真②:自重曲げによる屋根折板工事

写真③:寺﨑提案のレール
工事全般の管理を担当する主任の寺崎は、前回施工した物流倉庫現場での経験を踏まえて、鉄筋搬入用レールを提案した(写真③)。
「前回の現場でクレーン搬入後の鉄筋運搬が難しいことに気が付き、鉄筋搬入用レールを設置しました。当時は施工と並行して急ピッチでレールを設置することになったため、満足のいくクオリティのものを作ることができませんでした。今回は前回の経験を活かして余裕をもって取り掛かることができたため、より品質の良いレールを採用することができました。この鉄筋搬入用レールは社内で反響があり、早速図面や写真の共有が行われています。前回の現場で一緒だった協力会社のサポートもあり、現場の皆の力が合わさってより良い方法を模索できた結果です。」(寺﨑)
さらに、本現場で最重要事項とされたのが、床の仕上がり精度であった。物流倉庫のため、床や鉄骨は施工が完了した段階でほとんどそのまま仕上がりとなる。床はムラのないよう区切られ、入念に作業が進められた。クラック対策として、本社とコンクリートの配合検討や伸縮試験による確認、打設後には湿潤養生(湿らせて10日間置く・直射日光を避ける・風で急激に乾かないようシートで調節)等さまざまな対策が実行された(写真④)。

寺崎主任

写真④:床コンクリート養生の様子(湿潤養生)
次世代への礎
現場社員全14名のうち、多くが現場1~3年目の若手だという本現場では、先輩がフォローしながら、資材の搬入や重機の手配を若手に任せている。統括作業所長を務める森山は、一つの工程のみを任せるのではなく、さまざまな工程を経験してもらうことで、現場の一通りの流れを理解できるように工夫している。
「私は5年後10年後に主体的に現場を動かす人財を育成しなければならない立場です。社員たちには、失敗しても良い、それよりも経験から逃げないでほしいということを伝えています。一人が問題を抱え込むと現場全体へ影響してしまうこともあるので、いかに上司が話しやすい雰囲気をつくるか、話を聞き出すかというところが重要だと考えています。それぞれの考え方や性格・スキルは違うので、個性に合わせて指導できるよう悩みながら日々向き合っています。」(森山)
本現場は、九州のさらなる物流拠点としての発展によって地域の生活に貢献することはもちろん、安藤ハザマの礎、建設業の未来を育てる現場となっている。
Project Team

森山統括作業所長
お客様から任せていただいた現場を、工期内に確かなクオリティで引き渡すことが安藤ハザマの使命です。「安藤ハザマに任せて良かった」と思っていただけるよう、引き続き気を引き締めて取り組んでいきます。

寺崎主任

岡田副所長
兼工事長

Q:この現場で感じるやりがいは?
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ある程度の裁量を与えられており、作業所メンバーや協力会社の人々、関係者と協力し、
建物が完成に近づくたびにやりがいを感じます。(入社2年目)
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職人さんとコミュニケーションをとって楽しく仕事ができているところです。
(入社2年目)
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これだけの平米数のスラブを進めるにあたり各業務に大変苦労をしましたが、
経験豊富な主任にノウハウを教わりながらやりとげ、良い経験になりました。(入社9年目)
Q:竣工に向けての意気込みをどうぞ。
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担当職務を通じて、お客様に満足いただける「ものづくり」ができればと思います。
(入社29年目)
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社員と協力会社の全員で竣工に向け無事故・無災害で竣工を達成します。
品質の良い建物をお客様へ渡せるように管理します。(入社14年目)
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入社当初に決めた「変化・適応」のスローガンをモットーに、日々変化する現場の状況に適応し、
技術者として昨日の自分よりも成長できるように日々努力していきます。(入社2年目)
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良い品質の建物を作るために頑張ります。
(入社3年目)
工事概要
工事名 | (仮称)久山町物流倉庫計画 |
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発注者 | 福岡久山特定目的会社 |
設計・施工 | 安藤ハザマ |
用途 | 流通倉庫 |
工期 | 2023年12月~2025年3月 |
概要 | S造 地上3階 延床面積:55,189㎡ |