
水のネットワークを結ぶ
霞ヶ浦導水事業は、霞ヶ浦・那珂川・利根川を連結する「霞ヶ浦導水路」を建設するプロジェクトである。この導水路によって水を相互に行き来させることが可能となり、霞ヶ浦の水質浄化や、那珂川・利根川の水不足の軽減、さらに新たな都市用水の確保といった大きな効果が期待されている。
本プロジェクトでは、那珂川と霞ヶ浦を結ぶ約43㎞の「那珂導水路」と利根川と霞ヶ浦を結ぶ約2.6㎞の「利根導水路」の整備が進められており、当社は「那珂導水路」のうち約24.7㎞を占める石岡トンネルの第1工区(2024年5月掘削完了)と第3工区を施工している。

霞ヶ浦導水事業、本工事の概要を展示
(現場内インフォメーションセンター)

立坑の様子
安全性と施工性の両立
泥水式シールド工法では大量の土砂や泥水の処理が必要となるため、トンネルの掘削を始める前に、地上のプラント設備(写真①)や掘削した土砂を一時的にストックする仮置き場などの環境を造成する必要があった。
これまで数多くのシールド工事現場を経験してきた所長の才川は語る。
「シールド工事の現場では、滞りなく掘削を進めるため事前に環境を整える設備計画が非常に重要となります。私自身が約16年取り組んできた得意分野ではあるのですが、元々定められていた範囲よりも広大な土地を使用して大規模な伐採・造成工事を行うのは初めてだったので大変やりがいがありました。地上プラント設備のほか、例えば地盤の高さを合わせるために盛土を行うなどの環境造成も行いました。この現場の一番の強みであるフレッシュな若手の力を存分に活かしてもらい、些細な懸念点も皆で共有し解決しながら施工に取り組むことができています」(才川)
約1年半かけて広大な範囲の土地で着実に準備が行われたことで、現在は順調に掘削が進んでおり、今後はさらに、掘進のスピードを上げていく予定となっている。

トンネル坑口

写真①:地上プラント

才川作業所長
また、本現場では地下水位が低く、高い内水圧が作用する区間への対策として「P&PCセグメント工法」を採用している。この工法は、組み立てたセグメントにPC鋼線を挿入しプレストレスを与えることで、内水圧が作用するトンネルを全圧縮状態に保つことができる。これにより、トンネルの構造的な安定性と止水性を確保できる。

シールドマシン先端部

P&PCセグメントの施工手順
ICT技術による現場の生産性向上
本現場ではICT技術を積極的に取り入れ、施工精度と安全性の向上を実現している。なかでも、1人の作業管理者が複数台の自動運転バックホウの状態をリアルタイムで確認して同時に管理する“土砂積込バックホウの自動化”は、実用化に向けて関係各所と連携した安全のルールづくりにも取り組んでいる。この技術の活用により1人あたりの土砂積込量が有人運転時より増加し、省人化や生産性の向上に寄与することが期待されている。土木業界ひいては建設業界の働き方改革を推し進める重要な役割を担っている本現場では視察の機会も非常に多く、所長の才川は、そういった機会一つ一つに対して“お客様のご要望に確実に応える”という姿勢をいつも大事にしている。

土砂積込バックホウの自動化

遠隔操作も可能なコックピット
ICT技術の活用と若手社員の調整力・管理力の融合が現場を円滑に回している。この現場が2件目となる田代は、今回初めてシールドトンネル工事に臨んでいる。
「私は現在、トンネルを掘った後に地上に搬出される土砂の管理を担当しています。場内にストックできる土砂の量を確認しながら、1日に約90台出入りする土砂搬出のダンプトラックを手配するのですが、タイミングの調整が非常に難しいです。しかし、こうした責任のある仕事を任されることには大きなやりがいを感じています。自分の判断で現場が動くのを体感できる仕事です。困ったときは上司が親身に相談に乗ってくださり、同世代の仲間も多いので、コミュニケーションが取りやすい現場だと感じています」(田代)

土砂ピット

日々土砂の排出量を計算し、
分刻みでダンプトラックを調整している(田代)
若手の力を活かす“魅せる現場”
次席を務める新美は、上司と部下が互いに厚く信頼し合いながら、のびのびと仕事ができる風通しの良い現場をつくることを目指している。
「この工事が初めての現場となる若手社員も多いので、3交代制でも密にコミュニケーションをとることができるよう工夫しています。例えば、アナログな方法ですが、引き継ぎの際にはその日に起こったことを全て手書きでノートに記載するようにしたり、ビジネスチャットツールでのメッセージや写真でリアルタイムな情報を共有したりなど、些細なことまで具体的かつ頻繁に報告・連絡・相談し合えるようにしています」(新美)

些細なことでも言い合えるよう、積極的に後輩社員へ声をかけている(新美)
また、現場の特徴として挙げられる一つに洗練されたデザインの事務所がある。若手社員に少しでも肩の力を抜いて会話してもらいたいとの思いから所長室をなくしたり、化粧室の設置場所や床のタイルの色・外壁にまで現場社員の希望を反映したりと画期的な事務所となっている。才川は、“魅せる現場”をつくることが日々の安全に繋がると語る。
「綺麗で働きやすい事務所であれば、日々の片付けにもモチベーションをもってもらえると思うのです。極端ですが、落書きが多い場所は犯罪率が高い事例の逆で、綺麗な事務所、現場をキープすることが安全に直結すると考えています。こうした基本的な部分から無事故無災害を意識・徹底し、“さすが安藤ハザマ”と言っていただけるように、引き続き作業所一丸となって取り組んでいきます」(才川)

事務所外観

事務所内の様子
Project Team

才川作業所長
シールドトンネル工事は安藤ハザマがこれまで多数の実績を重ねてきた軸ともいえる分野なので、社内外からの厚い期待に応えられるよう、気を抜かず慎重に工事を進めてまいります。

新美

田代

Q:この現場で感じるやりがいは?
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自身の段取りした内容で打合せから施工が問題無く進められたとき。
1日の仕事を漏れなく進められたときなど。(入社2年目)
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協力会社とのコミュニケーションを密に取り、
段取りよく資材の手配、検査、品質保持を実施することにやりがいを感じます。(入社3年目)
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担当になった工事が完成した後や任された業務がミスなく完成した時にやりがいを感じます。
(入社3年目)
Q:竣工に向けての意気込みをどうぞ。
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日々の点検や指差呼称に妥協せず取り組んで、突発的な事象にも柔軟に対応できるように頑張りたいです。
(入社2年目)
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自らがけが無く、協力会社の皆さんにけがをさせないようにするため、
日々現場の状況の確認、改善に努めます。(入社2年目)
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線形が直線なトンネルのため、仕上がりの際に出来栄えが一目でわかる工事となっています。
お客様に満足・信用してもらえるような現場にしたいです。(入社4年目)
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現場職員・作業員さん共に掘進作業に慣れてきているので、
ここからさらに速度を上げつつ無事故・無災害で工事を終えられるよう努めます。(入社4年目)
工事概要
工事名 | R5霞ヶ浦導水 石岡トンネル(第3工区)新設工事 |
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発注者 | 国土交通省 関東地方整備局 霞ヶ浦導水工事事務所 |
工期 | 2023年6月~2026年6月 |
概要 | 泥水式シールド工法 延長4,880m、仕上内径3.5m |