技術概要
安藤ハザマは、これまで施工を担当した伝統木造復元天守2棟および既存天守1棟について、常時微動測定や人力加振実験を実施し、測定結果の分析を行いました。また木造と同じく、耐震工学的な性能が明確になっていない煉瓦造についても、耐震補強工事を行った教会堂で常時微動測定・分析を実施し、耐震補強効果の簡易評価を行うとともに、今後の耐震設計に資する貴重なデータを蓄積しています。
特長
振動測定による耐震補強効果の評価
振動測定には常時微動測定や人力加振測定などがあります。常時微動とは、地盤に常時生じている0.1~数百ミクロン程度の微小な揺れのことです。この微動による建物の振動を振動計で測定し、波形データを分析することで、建物がどのくらいの振動数の揺れに反応しやすいか(固有振動数)、平面的・立面的にどのような形態で揺れているか(振動モード形)などの基本的な振動特性を評価できます。建物各層の剛性分布を推定することも可能です。安藤ハザマでは、文化財・歴史的建造物の耐震補強前後の常時微動測定を実施し、補強効果を確認しています。
人力加振実験では、人力により建物に一定の振動を加え、建物の揺れが減少する度合いを評価します。減衰定数の値が大きいほど、揺れが減少しやすくなり、耐震性能が良いと判断できます。これまでに、復元天守2棟で人力加振実験を実施しました。
人力加振実験による波形データ(大洲城四階小屋組)
宮城県白石城では、三階櫓竣工後10年目に常時微動測定を実施しました。その後、東日本大震災被災後と災害復旧工事後にも測定を実施、各層の変形量を比較し、振動モード形の変化状況から、補修の有効性を実証しました。
木造耐力壁パネルの構造性能実験
神奈川大学と共同で、木造耐力壁パネルの開発に取り組んでいます。このパネルは、古くから城郭建築や社寺建築などの木造建築物に用いられてきた壁下地の構造をもとに作られたものです。この研究開発を通じて、木造耐力壁パネルの構造性能特性の把握と、大規模木造建築への適用の実現を目指しています。