リニア中央新幹線のスタート地点!品川駅ってどこにある?
ハザ麻呂 | 「ハァ〜〜。またダメだったか…」 |
アンころ | 「ハザ麻呂、どうしたの?珍しくため息なんかついて」 |
ハザ麻呂 | 「超電導リニアの体験乗車の抽選に毎回応募しているんじゃが、なかなか当たらなくて」 |
アンころ | 「リニアに興味があるんだ?それならとっておきの現場があるよ」 |
ハザ麻呂 | 「むむっ!?ということは、現場はリニア見学センターのある山梨県?」 |
アンころ | 「それは着いてのお楽しみ♪」 |
予想に反して到着したのは、品川駅。東海道新幹線をはじめ多数の路線が乗り入れる駅であり、周辺はオフィスビルがひしめいている。
ハザ麻呂 | 「工事をしている様子は見当たらぬ…。線路はどこに?」 |
まずは事務所で話を聞くことに。
アンころ | 「こんにちは〜。所長さんはいらっしゃいますか?」 |
職員さん | 「アンころとハザ麻呂だね!所長はいるんだけど、少しお待たせしちゃうかも。こちらでお待ちください」 |
しばらくして、お待たせしました〜!とあらわれたのは、所長のヤマちゃんと副所長のぐらっちの同期コンビ。
品川駅はリニア中央新幹線の最大の難所!?
ヤマちゃん | 「リニア中央新幹線は東京から大阪をつなぐ路線で、まずは東京〜名古屋間285.6kmの工事が進められているよ。最高設計速度は時速505kmで東京〜名古屋間を最速40分で移動できるんだ」 |
ぐらっち | 「安藤ハザマでは、そのうち5つの工区を担当しているよ」 |
①名古屋駅新設(東山線工区)
リニア中央新幹線の名古屋駅の新設工事。5つの工区に分かれていて、安藤ハザマでは東海道新幹線・名古屋駅の東側、名駅通り付近の地下エリアを担当する。
②第一中京圏トンネル新設(坂下西工区)
愛知県と岐阜県をつなぐ第一中京圏トンネルの一部で、延⾧約10.1km。すべて地下トンネルで、外径約14.0mのシールド機で掘削する。
③神領非常口新設
②のトンネルに設ける非常口のひとつ。直径約40.0m、深さは約75.0mにも及ぶ。2023 年3月に完成済。
④第一首都圏トンネル新設(小野路工区)
神奈川県相模原市から川崎市をつなぐ延⾧約12.0kmの地下トンネル。外径約14.0mのシールドマシンで掘削する。
ヤマちゃん | 「そして⑤が、我々が担当している品川駅新設工事。3つの工区に分かれていて、安藤ハザマが担当するのは非開削工区。リニア品川駅から名古屋方面に約380mのトンネルを施工するよ」 |
アンころ | 「非開削?」 |
ヤマちゃん | 「地上を掘り返さずに、地下を掘り進めるってこと。最小限の穴(立坑)を開けて、機材の搬入や排土をしながらトンネルを掘り進めていくんだ。リニアの品川駅は、東海道新幹線の品川駅のホームの真下、地下40mにつくるんだけど、東海道新幹線の運行を止めることなく工事を進めなければいけないので難工事なんだ」 |
ぐらっち | 「トンネルの断面は幅約35m、高さ約20m。トンネルの大きさを変えながら掘るため、高い技術が必要。まだ現在は立坑をつくっている段階で、残念ながらお見せできないんだけど」 |
アンころ | 「かなり大きなトンネルですね」 |
ハザ麻呂 | 「しかし、ここはオフィスビルが密集する品川であるぞ?立坑すらつくる場所なんてどこにも見つからなかったが…」 |
ヤマちゃん | 「実際に現場に行って確かめておいで!現場の案内は、わが現場が誇る若手三人衆に任せるよ」 |
颯爽と現れたのは、KIYO、HIRO、YASUの3人。ポーズも決まってる!
KIYO! HIRO!! YASU!!! 現場のエース若手三人衆
事務所から現場までを歩くゲンバる一行。なんでも聞いてください!という3人だが、やや緊張気味のようで…。
ハザ麻呂 | 「YASUは1年目なんじゃな。どうして安藤ハザマに入社したのかね?」 |
アンころ | 「面接官みたいになってる」 |
YASU | 「僕は香川県出身で、香川ってたびたび水不足に悩まされる地域なんです。そのときに生活を支えてくれたのが早明浦ダム。施工したのが安藤ハザマだと小学生の頃に知って、それからずっと働きたいと思っていたんです」 |
KIYO | 「僕も多くの人の生活に密着したものづくりがしたくて入社しました。なかでもリニアの現場は希望していたのでうれしいですね」 |
HIRO | 「日本初の事業に関われる機会なんて貴重な体験ですよね。僕は学生時代にバスケをやっていたので、チームワークを大切にした仕事に就きたくて。力を合わせて大きな構造物を施工することにやりがいを感じています」 |
アンころ | 「みんなやりがいを持って働いているんだね」 |
ハザ麻呂 | 「若き侍たちに負けぬよう、我らもしっかりリポートせねばじゃな」 |
到着した現場は品川駅港南口の駅ビルに沿った道路の一角。
KIYO | 「ここが品川駅非開削工区の現場ヤードです。道路の二車線分を使っているんです。施工が完了すれば工事用に設けた仮設立坑はふさいで、道路に戻します」 |
アンころ | 「空地のない都市型の現場ならではの工夫だね」 |
ハザ麻呂 | 「現場の敷地内に信号がある…。なんだかシュールじゃ」 |
「ここが工事用の仮設立坑です」とYASUが示したところに、2人はますますビックリ!
HIRO | 「すべての機材や資材の出し入れは、すべてこの仮設立坑から行います。大きな重機は分解して、地下で組み立てることも。トンネルを掘るシールドマシンもその予定です」 |
地下へ潜入!頭上に見えたまさかの○○
足場の入り組んだ階段を降りると、大空間が広がり、数十人の職員さんが作業を行なっている。
KIYO | 「ここは地下13mくらい。地上にスペースを確保できないので、ここを作業の拠点として、さらに地下へと立坑を掘り下げていきます」 |
ゴトン、ゴトン、ゴゴゴゴゴーー!!
突然、なにやら頭上から大きな音が。いったい何が!?
YASU | 「新幹線が品川駅に到着しましたね。ここは東海道新幹線の品川駅の真下なんです」 |
ハザ麻呂 | 「おおっ!これは、もしや新幹線のレール!?」 |
アンころ | 「新幹線を下からのぞくなんて、なんて貴重な機会!乗客もまさか真下で工事がされているなんて、思いもよらないだろうね」 |
KIYO | 「あえて気づかれないようにするのが大事なんです。掘り返した土の粉塵が舞わないように、工事の騒音がしないようになど、新幹線利用客の安心・安全に配慮した施工を心がけています」 |
アンころ | 「それにしても、新幹線の駅の真下に、どうやって立坑をつくるの?」 |
HIRO | 「あらかじめ、土留壁を立坑の外側につくり、その内側に鉄筋コンクリート造の“上床版”を構築して、新幹線の品川駅の荷重を受け替えます」 |
KIYO | 「これで上床板よりさらに下を掘り進め、立坑の躯体を構築していくんです」 |
若手に受け継がれるヤマちゃん所長の教え
「この足場、僕が設計したんですよ」とYASU。 |
アンころ | 「足場の設計って職員さんがやるものなの?」 |
ハザ麻呂 | 「YASU、一年目とはいえ勝手に足場を作ってはいかんぞ」 |
YASU | 「勝手に作ってません(笑)。所長から現場内の移動をしやすくする指示を受けて、僕とHIROさんで設計や計画を担当したんです。職員の仕事って、進行管理だけでなく、現場で施工を円滑に進めること全般なので、すごく幅広いんですよ。特に所長からは『仮設物にこそセンスが出る』と教わりました。正解が一つではないからこそ、試行錯誤の末に完成した自信作です」 |
KIYO | 「僕は所長の教えだと、『口だけで説明するな。絵を描け』というのが印象に残っていますね。新人の頃、引き継ぎの時間がなくて、搬入する機械の配置を口頭で説明したら想定外の伝わり方に…。ご覧の通り狭い現場なので、簡単に配置を修正できず周りにも迷惑をかけてしまい、所長に助けてもらったのは忘れられない思い出です」 |
アンころ | 「ヤマちゃん所長の教えが若手のみんなに受け継がれているんだね。素敵!」 |
YASU | 「困ったことがあると相談にのってくれますね。経験が浅くて自分で判断できないことも多いため、勉強になることは多いです。たまに怖いですけど」 |
ハザ麻呂 | 「そういえば、事務所では所長室の前に行列ができておったな。頼れる所長さんなのじゃな」 |
ヤマちゃん | 「わからないことは相談!大規模で人数が多い現場だからこそ、細かい情報共有が大切なんだよ。そこから自ら考えて行動できる人材に育ってほしいね」 |
と、事務所にいたはずのヤマちゃんが突然登場。なぜここに?
ヤマちゃん | 「気になって来ちゃったよ〜。で、なんの話かな?」 |
KIYO | 「い、いや、なんでもないです!」 |
YASU | 「失礼します!」 |
ヤマちゃん | 「あれ、行っちゃった…。情報共有がまだなっとらんなあ。もっと職場環境を改善しないと…」 |
ヤマちゃんの思いはしっかり届いてますよ〜、とホッコリするアンころ・ハザ麻呂だった。
<工事概要>
工事名称: | 中央新幹線品川駅新設(非開削工区) |
所 在 地: | 東京都港区港南 |
発 注 者: | 東海旅客鉄道株式会社 |
施 工 者: | 株式会社 安藤・間 |
工事概要: | 本工事は、リニア中央新幹線品川駅のうち、名古屋方の駅部(一部)と駅分岐部を、東海道新幹線品川駅の駅ビルならびに新幹線軌道直下で建設するものである |
取材時期: | 2023年2月 |