アンころ | 「そそそ、それでは、椎木・北浦トンネルの特徴について教えてくださいっ…!」 |
インタビュー初挑戦のアンころ、ちょっと緊張気味?
サンキチ | 「まあまあ、リラックスして聞いてね(笑)。椎木・北浦トンネルは、羽咋郡(はくいぐん)市門前基幹農道の一部となるトンネルで、長さは1,107メートル。トンネルが完成すると金沢方面への流通が便利になり、輪島市で採れた農作物をより早く新鮮な状態で市場へ届けられるようになるよ。地域間交流の向上や災害対策も期待されているね」 |
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今回から「ゲンバる」コンビが交代!見た目によらずしっかり者(自称)の広報担当・アンころと、ちょんまげ&マロ眉がトレードマークのハザ麻呂が、全国の建設現場を訪問&レポートします。どうぞよろしくお願いします!
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アンころとハザ麻呂の初仕事、いったいどうなる!?やってきたのは石川県輪島市。
ハザ麻呂 | 「海と山に囲まれたのどかな土地じゃの〜」 |
アンころ | 「山には見事な“棚田”が広がってるね!能登の里山里海は世界農業遺産にも認定されているんだって」 |
ハザ麻呂 | 「ほほぅ、アンころ殿は見た目によらず物知りじゃな」 |
じつは初対面のこの2人。そんな話をしながら、のと里山空港から車で約50分。今回の現場に到着!
事務所で出迎えてくれたのは、所長のサンキチとイッちゃん。サンキチは数々の山岳トンネル現場を渡り歩いてきたエキスパートで、この道45年の大ベテラン!!
この現場では安藤ハザマの社員が現在4名在籍中。ほかの2名は後ほどの若手インタビューに登場するのでお楽しみに。
サンキチ | 「事務所は1階部分が居住スペースになっていて、全員が共同で生活しているよ。周囲にウィークリーマンションなどを借りられない現場ではよくあるんだ。トンネルの現場ではあたりまえだね」 |
イッちゃん | 「といっても個室が完備され、勤務後や休日は完全に個人の自由時間。僕は能登の海でゆったり釣りを満喫しているよ」 |
アンころ | 「そそそ、それでは、椎木・北浦トンネルの特徴について教えてくださいっ…!」 |
インタビュー初挑戦のアンころ、ちょっと緊張気味?
サンキチ | 「まあまあ、リラックスして聞いてね(笑)。椎木・北浦トンネルは、羽咋郡(はくいぐん)市門前基幹農道の一部となるトンネルで、長さは1,107メートル。トンネルが完成すると金沢方面への流通が便利になり、輪島市で採れた農作物をより早く新鮮な状態で市場へ届けられるようになるよ。地域間交流の向上や災害対策も期待されているね」 |
ハザ麻呂 | 「このあたりは世界農業遺産に認定されているらしいのぅ」 |
イッちゃん | 「能登の風土を活かした能登野菜や、甘みのあるしっとりとした能登棚田米が有名だよ。ハザ麻呂、よく知ってるね!」 |
ハザ麻呂 | 「ホ〜ッホッホ。取材前にその地のことを調べておくのは当然の礼儀じゃよ」 |
アンころ | 「(さっき僕が教えたのに…!)」 |
それではいよいよ事務所から車で数分のトンネル現場へ。ヘルメットと長靴を着用してアンころ&ハザ麻呂の気合も十分!
ハザ麻呂 | 「サンキチ殿、ところで山岳トンネルはどのようにつくるのかの?」 |
サンキチ | 「椎木・北浦トンネルは『NATM(ナトム)』という日本の山岳トンネルでは一般的な工法でつくっているよ。基本的な手順は以下の通り。『吹付けコンクリート』と『ロックボルト』を用いるのがNATMの特徴だね」 |
トンネルを掘る前の下準備。実際にトンネルが通る数か所のポイントで、山の上から垂直に円筒状のボーリング孔でくり抜き、取り出したものから岩の種類や硬さなどの性質を調べる。この結果から掘削の方法などの工事計画をたてる。
トンネル内を掘っていく。椎木・北浦トンネルの場合、岩の多い花崗(かこう)岩はダイナマイトで発破、楡原(にれはら)層と呼ばれる泥や砂でできた比較的柔らかい岩は機械で掘削している。掘削部分を補強するために、鋼製支保工と呼ばれる金属の支えを一定間隔で設置する。この鋼製支保工が後で現場の重要なカギを握ることに…!
トンネルの掘削面が崩れないようにすぐに固まるコンクリートを吹き付ける。
鋼製支保工と鋼製支保工の間にロックボルトという鉄の棒を打ち込んでさらに補強。より補強が必要な箇所のロックボルトは長く、打ち込む数も増やすなど、地質によって調整する。
トンネルの底面を補強するために、コンクリートを打設する。
トンネル内の水漏れを防ぐために、支保工と覆工(ふっこう)の間に遮水性のあるシートを入れる。
スライディングセントルという円形の移動型の型枠機械で、コンクリートを打設。
道路やトンネルの入口などの舗装、照明などの設備を整備して完成!
サンキチ | 「②〜④は掘削時に実施して、⑤以降は後方で一定の距離を保って行うよ。現在は入口から800メートル付近の掘削を進めている段階だね。一週間で掘削が平均12〜15メートル進むので、穴が貫通するまであと4か月くらい。完成はもう少し先になるね」 |
社内屈指のトンネルエキスパートであるサンキチのもと、完成まで順調に進んでいるように見られるこの現場。
ハザ麻呂 | 「百戦錬磨のサンキチ殿の手にかかれば、朝飯前じゃろう」 |
サンキチ | 「ところがどっこい、実は大変だったんだよ。というのも、このあたりの楡原層は軟質な砂岩・泥岩層からなっていて、国内でも屈指の厄介な地質といわれているんだ。突然ですが、ここでクイズです」 |
ハザ麻呂 | 「本当に突然じゃのう」 |
サンキチ | 「柔らかい泥の中に穴を開けたら、その穴はどうなると思う?」 |
アンころ | 「うーん…グニャグニャなら、穴がつぶれてしまう?」 |
サンキチ | 「その通り。同じことがトンネルでも起こったんだ。さすがに完全につぶれることはないけれど、吹付けコンクリートをして安定させたはずの壁面に、すぐにヒビが入って押し出されたり、掘った一部が沈んで穴が縮んでしまったんだ。『内空変位』という現象だね」 |
そこで応急処置をすることに。
サンキチ | 「まず、加工していないまっすぐな鋼材(仮ストラット)を使って支保工の足元を固定したんだ。こうすることで穴が鋼材で囲まれ、押し出しを仮に止めることができる。そこから掘削を進めて、あとから仮ストラットを鋼製ストラットとインバート、吹付けコンクリートに入れ替えて仕上げたんだ。本当に大変なところは『二重支保工』といって、支保工を二重にしたところもあるよ」 |
サンキチ | 「ちなみに、入れ替える鋼製ストラットは曲線になっているんだ。まっすぐな鋼材は『座屈(ざくつ)』といって、小さな力でも曲がってしまうんだ。曲線のストラットだと周囲の地山に支えられて、鋼材の強度を十分に発揮するんだよ」 |
アンころ | 「う〜ん、なかなか大がかりな応急処置だね。でも、もともと厄介な地質だとわかっていたのなら、何か対策はとれなかったのかな?施工前に地質調査もしているわけだし…」 |
サンキチ | 「もちろんしていたよ。ただ、予想をはるかに超えていたんだよね。想定としては、50mm程度の変位だと思っていたのだけれど、実際はその10倍以上の箇所もあったんだ」 |
イッちゃん | 「今だから落ち着いて話せますけど、あの時は困りましたねぇ〜」 |
ハザ麻呂 | 「2人とも肝が据わりまくっておる。まことの侍か…」 |
サンキチ | 「山岳トンネルづくりは予定通りにいかないことの連続なんだ。掘ってみないとわからない、しかも正解がない。なにしろ相手は大自然だからね。完成までに10のことが必要だとしたら、あらかじめわかるのは1、あるいはもっと少ないかもしれない。施工中に起こる問題を解決しながら、これまでの経験や新たなアイデア、自分の個性“マイワールド”で10(完成)に近づけていく。見えないものを扱うことはもちろん大変だけれども、そこがトンネルづくりの一番の醍醐味なんだよ」 |
アンころ | 「マイワールド…かっこいい!」 |
ハザ麻呂 | 「見事な生き様よ…あっぱれじゃ!」 |
少年のようにキラキラした目で話してくれたサンキチ、本当にかっこいい!マイワールドがいっぱい詰まった椎木・北浦トンネルの完成を楽しみにしてますね!
恒例の若手インタビューは、2年目のワッくんと3年目のネモっちゃん。約1年前、ほぼ同時期にここに赴任した2人は、いよいよ数か月後に控えたトンネルの貫通が楽しみなご様子。
ワッくん | 「真っ暗な山中を掘り進める期間が長いぶん、向こうの明かりが見える瞬間ってどういうものなのかワクワクしますね」 |
ネモっちゃん | 「楽しみな反面、トンネルが正しく通っているのか心配じゃない?測量は僕たち2人がメインでやってきたわけだし」 |
ハザ麻呂 | 「なぬっ、あさっての方向につながっている可能性もあると…?それは一大事じゃ!」 |
ネモっちゃん | 「いやいや、もちろん大丈夫ですよ!ちゃんと慎重に進めたから。測量の技術は相当鍛えられたと思います」 |
アンころ | 「ところで、内空変位が発覚した時期は大変だったんじゃない?」 |
ワッくん | 「大変だった…のかな?僕はここが初めての現場なので、これが基準になっちゃいました(笑)」 |
ネモっちゃん | 「予期せぬトラブルが起こるのが当たり前、というのは体感しましたね(笑)。でもそこがおもしろいのかなと。ここでのスキルを生かして今後もトンネルの現場を極めたいです!」 |
2人ともどんどんレベルアップしているようで、なんとも頼もしい限り。トンネルのエキスパートを目指してがんばって!!
椎木・北浦トンネルの現場を後にし、アンころ&ハザ麻呂は金沢市へ。
ハザ麻呂 | 「ほれほれ、初代コンビがやっていたように、我らも周辺の施工実績を回るんじゃろう?」 |
アンころ | 「わ、わかってますよ!(やりにくいなぁ…)」 |
ここで頼れる助っ人、金沢営業所のリンリンを仲間に加え、株式会社米心石川にレッツゴー!
リンリン | 「株式会社米心石川は、石川県最大規模の精米工場や弁当製造を行う会社で、県内から収穫されたお米が集まるんだ。石川県民には『マイハート』の愛称で親しまれているよ。安藤ハザマでは2008年6月に精米工場の新設と炊飯工場のリニューアルを手がけたんだ」 |
アンころ | 「椎木・北浦トンネルの現場近くで収穫されたお米もあるのかな〜」 |
ハザ麻呂 | 「昔は兵糧攻めなどがあったようじゃが、ここなら持ちこたえられそうじゃのう」 |
その他にも施工物件はまだまだたくさん!
帰りは北陸新幹線で東京へ!ひとまず初の現場見学を終えたけれど、まだお互いのことを知らない2人。
アンころ | 「ハザ麻呂は前任だったハザ丸の紹介なんだよね。いったいどういう関係なの?」 |
ハザ麻呂 | 「ハザ丸殿とは、とある“えす・えぬ・えす”でお友達になってな。アンころ殿こそ、前任のアン姉殿の後輩とのことじゃが…。そのような風貌でお仕事をされておるのかな?餅に間違えて食べられないようにせねばの〜。ホッホッホ」 |
アンころ | 「し、失礼な!自慢のチャームポイントなのに…!」 |
まだまだ謎の多いアンころ&ハザ麻呂。彼らが手を取り合う日は来るのか?次回の取材もお楽しみに!
<工事概要>
工事名称: | 広域営農団地農道整備事業 能登外浦第4期地区 椎木・北浦工区 トンネル工事 |
所 在 地: | 石川県輪島市門前町椎木、飯川谷 地内 |
発 注 者: | 石川県 奥能登農林総合事務所 |
設 計 者: | アルスコンサルタンツ株式会社 |
施 工 者: | 安藤ハザマ・宮下・石田 特定建設工事共同企業体 |
工 期: | 2015年3月~2018年3月 |
工事概要: |
掘削延長1,107m 掘削工法:補助ベンチ付き全断面掘削 内空断面積51.8㎡ 掘削断面積53.6〜57.5㎡ 地質:楡原砂岩・泥岩層・船津花崗岩層 |
用 途: | 農道 |
取材時期: | 2017年7月 |