安藤ハザマの建築工事では最大規模となる、株式会社ニコンの新社屋建設プロジェクトを潜入リポート!所長や若手社員が明かす、大所帯の現場ならではのユニークな取り組みとは?
街ぐるみで愛された、ニコンの歴史が詰まったゆかりの地へ
アンころ | 「あれっ。ハザ麻呂、いいカメラ持ってるね!」 |
ハザ麻呂 | 「ほっほっほ、先日買ったばかりのニコンのミラーレスカメラじゃ。どれ、おぬしも撮ってしんぜよう」 |
アンころ | 「かっこよく撮ってね!そのお礼に、ニコンの新社屋の建設現場に連れて行ってあげるよ」 |
到着したのは、東京都品川区の大井町駅。西口を出て歩いていると、黄色い看板が見えてきた。
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黄色に黒文字が書かれた、おなじみのNikonのロゴ。この通りの名は…!?
ハザ麻呂 | 「“光学通り”?」 |
アンころ | 「光学通りは、ニコンの旧社名『日本光学工業株式会社』が由来になっているんだよ。これから向かう建設予定地の大井製作所は、ニコンが100年以上にわたって拠点を構えてきた場所なんだ。大井町駅から現場へと向かうこの道は、通勤時には多くのニコンの社員たちで行列ができるほどだったことから、いつしか『光学通り』と呼ばれるようになったんだよ」 |
ハザ麻呂 | 「ニコンの歴史が詰まった場所なのじゃな。道路の愛称にまでなるとは、ニコンがこの地で愛されてきたのがよくわかる。きっと地元の人も、新社屋の完成を待ち望んでおられるだろう」 |
12分ほど歩くと、現場の大井製作所が見えてきた。
…おや?道先で誰かがこちらに向かって大声で手を振っている。
??? | 「アンころ〜ハザ麻呂〜!待ってたよ〜!」 |
アンころ | 「誰だろう?安藤ハザマの社員さんかな」 |
ハザ麻呂 | 「我輩のファンに違いない。まったく有名人はどこへ行っても大変よの」 |
まずは所長にごあいさつをすることに。そこに現れたのは…。
アンころ | 「あれ!さっき手を振っていた人!?」 |
ハザ麻呂 | 「こらこら、これから所長殿に会う大事な用があるのじゃ。サインが欲しいのかな?特別サービスじゃ。ツーショット写真もいいぞ。忙しいから手短にな」 |
つと兄 | 「お待ちしておりましたよ。ここの統括所長をやっているつと兄です。」 |
ハザ麻呂 | 「なんと!おぬしが統括所長殿であったか!」 |
カタシン | 「そして私は所長のカタシンです。よろしくね」 |
アンころ | 「さっきは、外で何をしていたんですか?」 |
つと兄 | 「現場周りのパトロールも兼ねて、ゴミを拾っていたんだよ」 |
ハザ麻呂 | 「統括所長殿ともあろうお方が、自らゴミ拾いを?」 |
つと兄 | 「この一帯は住宅街でしょう?極力配慮はしているけれど、どうしても資材の搬入や騒音などでご迷惑をかけてしまうこともある。少しでも住民のみなさんに安心・安全に暮らしていただくためにできることをするのも、我々の大事な仕事のひとつなんだよ」 |
ニコンと安藤ハザマの意外なご縁とは?
つと兄 | 「この現場は、もともとニコンの工場だった跡地を利用して、新社屋を建設しているよ」 |
カタシン | 「地上6階建で延床面積は約4万2000㎡。本社のほかにも、一般の方が見学できる『ニコンミュージアム』も併設されるよ。100年を超える長いニコンの歴史の中で培われた技術、製品など貴重な資料が多数展示されるんだ」 |
ハザ麻呂 | 「古い貴重ものから最新のカメラまで一挙におがめるとは、なんて贅沢な空間!」 |
アンころ | 「そんな歴史のある会社の新社屋の建設なんて、すごいですね」 |
つと兄 | 「じつはニコンと安藤ハザマには昔からご縁があってね。昭和40年代に、合併前の安藤建設が栃木県でニコンの工場の建設を担当したり、タイでニコンの工場が水害被害に遭った際に、当社の現地法人が救助に向かったりしたこともあったんだ」 |
アンころ・ハザ麻呂 | 「へ〜!」 |
つと兄 | 「大事な新社屋の建設を我々に任せてくれているのは、過去の実績を認めてくれたことでもあるので、とても誇らしいね」 |
着工前の建設地の様子
街ぐるみで愛された、ニコンの歴史が詰まったゆかりの地へ
アンころ | 「この現場の推しポイントはどこですか?」 |
つと兄 | 「なんといっても規模の大きさだね。安藤ハザマの建築部門としては最大級で、ここにいるだけでも協力会社を含めて現在850名、多い時期は1000名を超える人が働いていたんだよ」 |
アンころ | 「そんなに!働く人数が増えると、大変なことってあるんですか?」 |
カタシン | 「情報の共有や方向性を合わせるのが難しくなってくるね。担当する業務内容や施工場所などで組織が細分化されるから、同じ現場にいながらも他の組織で起きている問題に気づかないこともある」 |
ハザ麻呂 | 「確かに、学校でも他のクラスのことまではわかりにくいものじゃ」 |
つと兄 | 「だからこそ、僕たち統括所長や所長のような、常に全体の動きを把握しておく存在が必要なんだ。課題を抱えている組織の相談にのったり、具体的な目標を提示したりしながら、みんなが同じベクトルを向いて進めるように工夫するのが腕の見せどころだね」 |
カタシン | 「協力会社の職人さんたちも含め、現場の全員が参加する毎日の朝礼は大切な時間だね。全員の前で話す際には、みんなに伝わる簡潔な言葉で伝えるように心がけているよ」 |
ハザ麻呂心の声 | (((ゴミ拾いだけでなく、多くの人の心をまとめあげるとは、見事じゃ。あとでサインをいただこう…))) |
全員の努力が実を結んで迎えた「立柱式」
カタシン | 「一人ひとりが自分のすべきことを明確化して、責任をもって働くことも欠かせないね。多くの人が作業に関わるから、資材の遅れや搬入の車の手配など、1つの作業の遅れがいくつもの遅れにつながる恐れもある」 |
アンころ | 「みんなでひとつのものを作るからこそ、どこか一部分が欠けると全体のバランスが崩れてしまうんですね」 |
つと兄 | 「その点は、この現場の社員たちは本当によくがんばってくれているんだ。無事に立柱式の日を迎えられたのも、本当にみんなの力があってこそだね」 |
カタシン | 「そうですねぇ。あれは忘れもしない2023年6月19日のこと…」 |
ハザ麻呂 | 「立柱式?」 |
カタシン | 「立柱式は、建物の最初の柱を建てるときに行う儀式で、今後の工事の安全を祈願するんだ。今だから言うと、正直間に合わないかもと思うこともあった。でもメンバー全員で絶対に間に合わせる!という思いがひとつになったんだ」 |
つと兄 | 「自ら動き、問題を解決しながら仕事を進めていく仕事ぶりは、長い現場経験の中でもトップクラス。みんなの前では照れ臭くて言ってないけれど、最高のメンバーだと思っているよ」 |
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みんなの努力が実を結び、晴れて立柱式を迎えられたことは、つと兄とカタシンの忘れられない思い出になったそう
たちまち団結力がアップするあいさつの魔法
カタシン所長の案内で、いよいよ現場へ。3か月後に完成を控え、現在は内装工事を進めている段階だそう。
職人さん | 「おつかれさまです!」 |
職人さん | 「おつかれさまでーす」 |
職人さん | 「おつかれ〜っス!!」 |
すれ違う職人さん全員が、笑顔であいさつしてくれる勢いに思わず圧倒。
アンころ | 「みんなすごい元気ですね!」 |
カタシン | 「あいさつ運動として、社員、作業員一人ひとりがあいさつをすることを推進しているんだよ。積極的にコミュニケーションをとることで『仲間意識・身内感』が生まれ、相手との心の距離も縮まるよね」 |
アンころ | 「なるほど〜。大人数が働いていて名前を知らない人も多いけれど、確かにあいさつしただけで、もう仲間になった気分」 |
ハザ麻呂 | 「現場で働く一員という自覚も芽生えるな」 |
カタシン | 「また、いざという時に気軽に注意もしやすくなる。こうした環境をつくって、不安全行動を防ごうという役割があるんだ」 |
アンころ | 「僕らも負けずに元気にあいさつしよう!」 |
社員のいのちを守る!天井に隠された秘密
3階に到着したゲンバる一行。ここは、ニコン社員たちが実務を行うオフィスフロアになっている。
アンころ | 「広〜い!」 |
カタシン | 「個室で仕切らないオープンフロア・オフィスになっているよ。耐震性を確保しながら、間仕切りや柱のない広い空間をつくるために、天井には強度のある鉄骨入りのPC材を使用している。PC材ひとつの長さは14mもあるんだ」 |
アンころ | 「14mものPC材を、どうやって現場まで持ち込んだんですか?」 |
カタシン | 「栃木県の工場で製造したものを、25tポールトレーラーに1本ずつ載せて搬入したよ。全部で400本以上あるから大変な作業だったね」 |
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4本に1つは鉄骨の梁(はり)で、PC材とは色も形もまったく別物だが、統一感を出すためにデザインや色を似せるという芸の細かさ!あなたは、どれが鉄骨かわかりますか?
ハザ麻呂 | 「…むむっ!?」 |
アンころ | 「ハザ麻呂、どうしたの?」 |
ハザ麻呂 | 「天井のPC材の間…照明で隠れているが、隙間が空いているようじゃ。いったいなんじゃ?ほら、あそこにも、あそこにも!!」 |
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PC材とPC材の間に設置された照明の奥に隙間を発見。これはいったい!?
カタシン | 「あれは“排煙スリット”といって、火災時に煙を屋外へ排出するために、あえて隙間を作っているんだ。天井と上階の床の間に溜まった煙は、排煙堅ダクトを通じて屋上へ排出されるよ」 |
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天井の排煙スリットから煙を逃し、天井と上階の床の空間に溜め込む。溜まった煙は、排煙堅ダクトを通じて屋上へ排出される
アンころ | 「なるほど。煙が立ち上る習性を利用しているんだね」 |
カタシン | 「煙がフロアに充満するのを防ぐことで、避難時間を確保するメリットがある。あまりメジャーではないツウ好みの設備だけど、多くの社員が働く場所だからこそ、みんなの安全を守る素晴らしい工夫だね」 |
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1階と2階をつなぐ階段を利用したエントランスホール。製品の発表会などに利用される予定
安藤ハザマの常識①:「大きな現場あるある」とは?
大所帯の現場だけに、若手社員も多い。ということで、今回は入社4年目のたまやんとたつやん、2年目のともやんとねもやんが登場!
ハザ麻呂 | 「こちらの現場の印象はいかがかな?」 |
たまやん | 「なんといっても、とにかく大きいですね。働く人の多さ、そしてとにかく広い!」 |
たつやん | 「広いからとにかく歩きます。現場内を移動しているだけなのに、みるみる体重が落ちていくよね」 |
ねもやん | 「この現場に来てから1年間で7kg減りました」 |
ともやん | 「体重が落ちるのは、大きな現場あるあるだね。そして、ご飯のおいしさも格別なんだよね」 |
たまやん・たつやん・ねもやん | 「わかる〜!」 |
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多い日には、一日で2万歩以上歩くことも!
安藤ハザマの常識②: チャットツールで効率大幅アップ
アンころ | 「現場で働くうえで、気をつけていることはありますか?」 |
ねもやん | 「その日の問題は、その日のうちに解決するようにしています。材料が足りない、材料の寸法が図面通りでないとか。どんなに準備したつもりでも、予定外のことってどうしても起きてしまいます」 |
ともやん | 「軽い気持ちで後回しにしたことが、後に大きな遅れの原因になっちゃうこともあるんだよね」 |
ハザ麻呂 | 「ふむふむ。つと兄やカタシンも言うておったな」 |
たまやん | 「でも、私たちは経験も浅いぶん、自分だけで判断できないことも多いです。だから、わからないことはすぐに質問することが大事なんです」 |
ねもやん | 「そこで活用しているのが、チャットツールです。社内や協力会社の職長さんがグループに入っていて、スマホで情報共有が簡単にとれます。例えば、図面に変更があるか知りたいときは、工務担当へメッセージを送信すると、確認後に返答がもらえます。文字だけでなく写真や動画も送れるので、自分の持っている図面を撮影すれば相手にも伝わりやすいです」 |
ともやん | 「電話だと相手の都合が気になっちゃうし、チャットのほうが質問しやすくて助かりますね」 |
たつやん | 「返信を待ちながら他の仕事を進められるし、効率面でもすごくいいです。特に今回の現場は広いから、事務所に戻って直接確認するとなると、移動だけで30分はかかっちゃいますから」 |
ハザ麻呂 | 「まさに、良いことずくめ!つと兄とカタシンが感動した現場の頑張りには、こうしたツールの活用も欠かせなかったのだろうな」 |
ともやん | 「大変なこともあるけれど、楽しい現場ですね。3か月後の完成が楽しみです!」 |
たまやん・たつやん・ねもやん | 「わかる〜!」 |
取材を終えて…
アンころ | 「あー、今日もおもしろかった!大きな現場ならではの工夫が満載だったね」 |
ハザ麻呂 | 「完成したら、またニコンミュージアムにも参らねば。ところで、帰り道なのだが。どうやらここは大井町駅よりも、西大井駅のほうが近いようじゃが」 |
アンころ | 「ハザ麻呂、運動不足でしょ?みんなを見習って歩きましょう。目指せ2万歩!」 |
ハザ麻呂 | 「2万歩はご勘弁を…。でも完成を心待ちにしているであろうニコン社員の皆様の気持ちになって、光学通りを帰るとするか」 |
アンころ | 「レッツゴー!」 |
作業服が新しくなりました!
2024年4月から、安藤ハザマの作業服が当社発足以来、初めて全面リニューアルしました!
若手社員を選抜したプロジェクトチームを立ち上げ、デザイン・素材選びを検討。全社アンケートやヒアリング調査、作業所での試着を重ねながら、1年越しに製作した自信作です。早くも現場では、「かっこいい!」「動きやすい!」と好評の様子。次回のゲンバるからは、新しい作業着での安藤ハザマ社員の活躍をお楽しみに!
<工事概要>
工事名称: | (仮称)新社屋建設計画 |
所 在 地: | 東京都品川区西大井1丁目5番20号 |
発 注 者: | 株式会社ニコン |
設 計 者: | 株式会社三菱地所設計 |
施 工 者: | 株式会社安藤・間 |
工 期: | 2022年7月19日〜2024年5月31日 |
工事概要: |
構造:鉄骨造、一部鉄筋コンクリート造 規模:地上6階、塔屋1階 延床面積42,423.89㎡ |
用 途: | 事務所 |
取材時期: | 2024年2月 |