前例のない工法に挑戦!?既存ダムの改造事業、その現場を覗いてみると……
今回訪れたのは愛媛県大洲市にある「鹿野川ダム」。
鹿野川ダムは、愛媛県最大級の一級河川「
今なお現役で活躍しているこのダムでは、現在「改造事業」が行われている。
しかも現場では“珍しい工法” が行われているとか……!?そんな噂を聞きつけ、アン姉さん&ハザ丸の2人は興味津々で愛媛県へ。
しかし!松山空港に着くと、土砂降りの雨……。自称“晴れ男” のハザ丸のパワーを信じ、鹿野川ダムへとGO!
鹿野川ダムに到着!
松山駅から特急列車で25分、そこから車で山道を揺られること40分。あれ、だんだんと雨が上がっていく……!なんと、現場に到着する頃にはサンサンと太陽が降り注ぐ夏空に!
ハザ丸 | 「ね?だから言ったでしょ?(得意げ)」 |
アン姉さん | 「でかした!ハザ丸!!」 |
2人が上機嫌になっていると、目の前に鹿野川ダムが登場!まずは現場事務所を訪れると、作業所の皆さんがお出迎え。
そして奥からひときわにこやかな男性が。そう、作業所長のよっぽん。
明るく優しそうなよっぽんは、「平成に入ってからはダム一筋」というまさに“ダムのスペシャリスト”。ちなみに最近はまっているのは「お弁当作り」だそう。
まずは、工事の概要をお伺いすることに。
よっぽん | 「ダムは水をただ貯めておくだけでなく、洪水を防ぐために川の水量を調節したり、必要に応じて水を放水するのも役目の一つ。 その下流への発電用水、維持用水を放水する設備を『取水施設』というんだけど、そこを新しくする工事なんだよ」 |
ハザ丸 | 「なんで新しくするの?」 |
よっぽん | 「ダムに関する技術もどんどん進化していくからね。今回新たにする取水施設は、以前のものと違って、どの水深から放水するかを選べるんだ。ダムの水は太陽で温められるので、表面の部分は水温が高く、深い部分は低くなる。例えば水温が高くないといけない時期に冷たい水を放水してしまうと、下流域の田んぼなどの作物に被害が出てしまうこともあるんだよ。その他、下流への長期間の濁流放水を防止することも大切な役割だね。新しい取水施設にすることで、効率よく放水ができて、環境への影響も少なくすることができるんだ」 |
アン姉さん | 「へえ!ダムって、そんな役割もあるんですね」 |
よっぽんによると、肱川流域は昔から水害がたくさん起こっている地域だとか。この鹿野川ダムは、肱川流域の治水を担う大切なダムなのだ。
かつてない水中工事には、ひみつ道具が満載!?
いよいよダム改造工事の現場に潜入!
現場に着くと、まず眼に入るのがダムの湖面上に作られた大きな足場。
その足場から階段を降りて行くと、実際に作業を行う場所があり……
よっぽん | 「こういう取水施設の工事では、通常は囲いなどで覆って水を抜いた状態で作業をするんだけど、今回は全て水中で工事を行っているんだ。じつはダム湖内で工事をすべて水中で行うのは、全国でも初めてのことなんだよ」 |
ハザ丸 | 「全国初!?すごーい!!!」 |
アン姉さん | 「具体的に、工事はどうやって進んでいるんですか?」 |
よっぽん | 「まず、既存のコンクリート部分を『ワイヤーソー』というワイヤー型のノコギリで切り出していく」 |
ハザ丸 | 「これ、水の中でやるんですよね?」 |
よっぽん | 「そうだよ。だから今回の工事では、水中作業を行う『潜水士』が活躍中なんだ。例えばこの作業でワイヤーをかけるのもそうだし、場合によっては水中で溶接や切断を行うこともあるよ」 |
アン姉さん | 「水中でそんなことまでやっちゃうんですね」 |
よっぽん | 「でも水中作業は人間の身体には負担だし、危険も伴う。だから、いろいろな工夫をしているんだ。例えば切断の後、切断した面と新しくコンクリートで作る部分とがうまくくっつくように、コンクリートの表面を小さく削る“チッピング” という作業が必要になる。これを効率よく行うために、今回新たに共同開発されたのがこの『あざらし』!」 |
よっぽん | 「水中での基礎部分には『水中不分離コンクリート』という、水中でも分解しない高機能なコンクリートを使用しているんだ。また、新設部分はPCa を利用して、なるべく水中作業を減らせるよう工夫しているよ」 |
アン姉さん | 「あ、前回も出てきた『プレキャストコンクリート』工法のことね!なるほど、地上で作っておけば、水中作業も減るものね」 |
水中工事を支えるプロフェッショナル!潜水士のお仕事とは?
次は、いよいよ潜水作業を見せてもらうことに。
アン姉さんとハザ丸、潜水士のお仕事を目の当たりにするのは初めて。
装備を身につけた潜水士が、目の前で湖面にドボンと飛び込んでゆく。
ハザ丸 | 「潜水士さんの身体に付いてる、あの太いケーブルはなあに?」 |
よっぽん | 「スキューバダイビングなどと違い、潜水士の場合は地上から空気を送り込むんだ。 あのケーブルは空気、視界を確認するカメラとライト、水深計、通話という4つのラインが1本になっているんだよ。また、地上には常に別のスタッフがいて、潜水士の視界や状況を逐一確認しながら指示を出しているよ」 |
しかし、指示を出している小屋の中でモニターを見ていると……潜水士のカメラに写っている風景は、想像以上に濁った水と、ほとんど見えない視界!降雨の後でいつもより濁っているとはいえ、こんな状況で作業ができるなんて、潜水士さんスゴイ!
潜水士は連続して作業できる時間に制限があり、しかも潜る深さにより時間が決められている。そのため現場では常に交代で作業を行っている。
そのとき待機中だった2人、大ちゃん&マッキーに突撃インタビュー。
常に危険と隣り合わせの潜水士という仕事。安全に作業を行うためにも、さまざまなことに気を使うそう。自分たちの体調管理はもちろん、何よりも仲間たちとの信頼関係をしっかり築くことが大切。ちなみに厳しいのは水温の低さに、体力がどんどん削られる冬の仕事とか……想像するだけで大変そう!
大ちゃん・マッキー | 「大変ですけど、とてもやりがいのある仕事ですよ」 |
おお、頼もしい!完成のその日まで、ファイトです!
ダム現場でも、若手がゲンバってます
最後は、若手社員にインタビュー。この現場では最も若いムネちゃん、じつは入社7年目、ゲンバは5つ目!
「他ではやったことのない工事ですし、貴重な経験をしているなと毎日実感しています。
この現場では実際に作業してみないとわからないことも多くて、何か解決しなくてはいけないことが起こった時、それをアシストするのが僕の役割かなと。将来は『いろいろなことができる社員』が目標です」
ちなみに最近の楽しみは「四国支店で作った野球部の活動」だそう。
ムネちゃん | 「一番楽しみなのは練習よりも懇親会なんですけどね(笑)」 |
アン姉さん | 「あらら(笑)」 |
この鹿野川ダム改造工事は、来年以降に完成予定とのこと。皆さん、安全に工事を進めてください!
ゲンバからの帰り、ちょっと寄り道
鹿野川ダムの現場に、すっかり圧倒されたアン姉さん&ハザ丸。お土産に、全国のダムファンの間で話題の(!?)ダムカードをもらい、名残惜しくもゲンバを後に。
すると……なんと見学が終わった途端、先ほどの晴天が嘘のような土砂降り!実はこの日、松山市は1890年の統計開始以来、1時間の降雨量が最大を記録……。
アン姉さん | 「ハザ丸……晴れ男パワー、凄すぎない?」 |
ハザ丸 | 「うん……ちょっと、自分でもびっくりしてる」 |
ゲリラ豪雨が去った後、再びお天気は回復!せっかくなので安藤ハザマが施工した建造物を観て帰ることに。大州城、愛媛県庁舎、坊っちゃんスタジアム……
お城の復元、戦前に施工された建物、新たなスタジアムと、安藤ハザマの歴史、そして幅広い技術を改めて実感。
ハザ丸 | 「治水から公共施設、お城まで、建設の技術っていろんなことに役立ってるんだね」 |
アン姉さん | 「今回も、興味深い話がたくさん聞けたわね。次回の現場も楽しみだね!」 |
<工事概要>
工事名称: | 平成24-27年度 鹿野川ダム選択取水設備施設外新設工事 |
所 在 地: | 愛媛県大洲市 |
発 注 者: | 国土交通省四国地方整備局 |
設 計: | 日本工営株式会社 |
施 工: | 安藤ハザマ |
工事概要: | 重力式コンクリートダム 堤高61.0m 堤頂長167.9m 堤体積161,000m³ 総貯水容量48,200,000m³ |
用 途: | ダム(洪水調整用) |
取材時期: | 2015年7月 |