東京ドーム4個分!巨大ショッピングモールの現場ってどうなっているの?
今回訪れたのは、埼玉県富士見市に建設中のショッピングセンター「ららぽーと富士見」。敷地面積約152,000m²(平方メートル)、延床面積約185,000m²(平方メートル)(東京ドーム4個分!)の中に約300店舗が入り、関東圏のららぽーとでも最大級の規模となる。2015年4月のオープンをひかえ、急ピッチで建設されている現場の様子はどうなっているのか?現場見学スタート!
現場はまるで学校のようだった!
当日、現場に到着したのはお昼12時を過ぎた、現場はちょうどお昼休みの時間。早速お話をうかがう作業所長のなべさんにご挨拶を、と事務所をのぞいてみると、昼食後の休憩中…。
そこで事務所付近をしばし探検することに。するとどこからともなくダシのいい香りが…。フラフラと誘われた先に、なんとそば屋を発見!中ではガタイのいい職人さんたちが大盛りそばをモリモリ食べている。私たちも注文しようとすると「もう売り切れなのよ〜」と店員さん。隣の売店にも行ってみたが、お弁当やパンは見事に売り切れ…。ウムム。現場での生存競争の激しさを、身をもって感じた。
事務所に戻ると、
休憩を終えた作業所長のなべさん登場。
こんにちはー!
なべさん | 「そろそろ昼休みが終わるから広場に集合してね」 |
広場?不思議に思いながら出てみると、作業服にヘルメット姿の人たちがわらわらと集まり始めた。その数、なんと1,200名超!
そこで始まったのは、「昼礼」というもの。午後の作業の前に、進行状況の確認や安全上の注意を報告しあう会で、朝礼と昼礼は毎日行われる。壇上では「匠会」と呼ばれる職人さんの有志で結成された現場の安全を取り締まる方々が、ゴミの廃棄や作業上危険な行為などを注意している。それはまるで学校集会で先生が生徒に注意している様子そのもの。食堂や売店といい、昼礼の様子といい、まるで現場内は学校のような雰囲気だ。
報告が終わると、全員で「指差呼称で安全確認 ルールを守って安全作業ヨシ! 午後からも安全作業でがんばろう!」と声を出して解散。
安全第一で午後の作業もがんばってください!
建設中の現場に潜入!
いよいよ建物内に潜入!現場では作業を行う職人さんがすれ違うたびに挨拶を交わす。みんなキビキビ働いていてかっこいいなあ…なんて思いながら歩き続けているが、まだテナントが入る前の建物内は果てしなく続く白とグレーの世界…。
ハザ丸 | 「う〜ん。いま自分がどこにいるのかさっぱり分からない」 |
なべさん | 「壁が立ち始めた頃は、作業員も迷子が続出したね(笑)。その対策として、壁には『通り芯』という位置を示す記号が貼られています。また、完成後はお客さんが迷子にならないように、エリア別にエレベーターの扉の色を変えるなどの工夫もします」 |
建物の中心部には大きな吹抜けがあり、開放感満点。
少しカーブを描く廊下や床のタイルにポイントカラーを入れるなど、随所に遊び心が感じられるデザインになっている。
なべさん | 「建物のデザインはオーストラリアの会社が担当しています。私たちは彼らが作ったデザイン画をもとに、どうやったらイメージに近づくのかを考えるんだよ」 |
ミヤモ | 「そのためにはかなりの苦労もあるんですよ〜」 |
と、いきなり現れたのは設計担当のミヤモさん。
ビックリした…。
ハザ丸 | 「苦労ってなんですか?」 |
ミヤモ | 「吹き抜け部分の上にある『ハチノス天井』ですね。既に設計を済ませていたのですが、2014年4月に建築基準法の改正があり、その耐震基準を満たす設計に変えるよう、お客様から要望があったんです。しかし、条件を満たしつつデザイン画のイメージに近づけるのが難しくて…。寝ているときも悩んでましたね」 |
ハザ丸 | 「そりゃ大変だ」 |
ミヤモ | 「溶接方法やビスの止め方、補強に曲線を加えるなど、かなりの工夫をしました。設計チームの自信作なので、ぜひ注目してください」 |
人手&時間不足を一気に解消する「PCa化」とは?
今回の現場の施工期間は約1年4ヶ月。じつは、これほどの規模の現場にしては工期が短めで、施工には効率化と省力化が重要な課題となった。そこでポイントとなったのは屋上部分の「PCa化」の採用だ。
ハザ丸 | 「PCa?PC…パソコンのこと?」 |
なべさん | 「残念でした。PCaは『プレキャストコンクリート』といって、現場で組み立て・設置を行えるように工場で先に鉄筋入りのコンクリートを作ったものを使用する工法のこと。通常の現場では、まず鳶さんが建物の周りに足場を組んでから、鉄筋工さんが鉄筋を組み、大工さんが型枠を立て、さらにコンクリート工がコンクリートを流して…という工程を行うのだけれど、今回のような大規模の現場でそれを行うと時間や労力はかなりのもの。すでに工場で作ったPCaを利用すればクレーンを使って組み立てるだけなので、ざっと200〜300人の労力が削減できたことになる」 |
アン姉さん | 「最近は職人さんの人手不足も深刻なのよね。安藤ハザマが得意とするやり方よ」 |
ハザ丸 | 「工期も早まり、人手不足も解消する。一石二鳥ってわけだね」 |
天高く舞い上がるエスカレーター!?
「PCa化と同様に、人手・時間の省力化を実現できたもう1つの秘密がコレ」となべさんが見せてくれたのが下の2枚の写真。
ハザ丸 | 「ヒャーッ!エスカレーターが浮かんでいる!?」 |
なべさん | 「フフフ、なかなかの迫力でしょう? ズバリ、エスカレーターの搬入に秘密があります。通常は、床にコンクリートを打った段階でエスカレーターを各階に持ち上げて横移動させながら指定の位置に取り付けるのだけれど、これがなかなかの重労働。そこで今回は、コンクリートを打つ前の鉄骨の段階で搬入する作戦をとったんです。骨組みの段階ならば、指定の位置まで直接エスカレーターを運び込むことができるので横移動の手間がなくなるというわけ。私も初めての経験だったけれど、大成功でしたね」 |
アン姉さん | 「ららぽーと富士見で設置されるエスカレーターは32台もあるから、かなりの手間が省けそう」 |
ハザ丸 | 「でも、そんなに便利な方法なら、どの現場でも行えばいいのでは?」 |
なべさん | 「実は施工条件が合わないとなかなかできないんです。例えば、エスカレーターを仮置きするのに、他の作業の邪魔にならない広大なスペースが必要だったり。また、先行搬入は、早い段階でお客様の承認をもらわなければならない。今回は広さとスケジュールの結果、見事条件がマッチングして実現しました」 |
ハザ丸 | 「状況次第でどのやり方がベストなのかを判断する能力が、現場では求められるんだな」 |
若手社員もゲンバってます
最後は現場で働く入社2〜3年目の若手社員たちに話を聞くことに。
アン姉さん | 「現場の広さと若手の体型は関係するってジンクスがあるのよ。大きな現場だと若手は現場を1日中動き回るから、どんどん体が引き締まっていくらしいの」 |
本当かな〜と思っていると、集まってくれた5名の若手たちは確かにスリム体型。ジンクス、侮れない。
体型はさておき、話題になったのが、年上の職人さんとの付き合い方。現場社員たるもの、職人さんや協力会社さんに指示を出して現場をうまく回していかないといけない。とはいえ職人さんって頑固そうだし、大半は年上で、中には親子ほど歳が離れた人もいる。うまく付き合うためにどうしているのだろう?
まえだまえだ | 「正直、入社して現場に来るまでは恐いなってイメージがありました」 |
たなとも | 「でも、怒られるのってやっぱり理由があるからだよね。お願いされたことができていなかったとか」 |
さるちゃん | 「上から目線で言ってしまうとか。きちんと向き合っていけば、気さくだし、可愛がってくれます」 |
はっしー | 「気持ちよく仕事をしてもらうことが大事だと思います。ケガしないように安全点検をしっかりしたり、連絡事項を細かく伝えたり。その準備で時には残業で遅くなっちゃうこともありますけど」 |
のむなお | 「細かいことでもなるべくやるようにして、自分も仕事を頼みやすくするように心がければいいんじゃないかな。もっとも、私は職人さんにガンガン言っちゃうので、『そんなにあおらないでくれよ〜』って言われちゃうほうだけど」 |
のむなお以外全員 | 「さすが姉御〜!」 |
現場からの帰り道
アン姉さん | 「ハザ丸、初めての現場見学はどうだった?」 |
ハザ丸 | 「外からはわからない建設現場の様子がいろいろ見られておもしろかった! 何より、現場で働くたくさんの人たちが魅力的だったな。 いろいろな課題をみんなで協力・工夫してクリアしていく話には引き込まれたよ」 |
アン姉さん | 「うんうん。建設現場は全国に数あれど、同じ現場はどこにもないのよね。 だからこそ、現場の人たちのがんばりが欠かせないの。 これぞ“ゲンバる”ってことよね」 |
ハザ丸 | 「完成まであと少し!オープンが待ち遠しいな」 |
ついに完成! オープンした「ららぽーと富士見」に行ってきました!
2015年2月に無事完成したららぽーと富士見が、4月10日に晴れてグランドオープン!アン姉さんとハザ丸が再び訪問しました。
ハザ丸 | 「わ~!お客さんがいっぱい!工事中はシンプルでどこまでも広い印象だったけれど、実際にお店が入るとガラリと雰囲気が変わるね」 |
アン姉さん | 「約300のお店が入っているそうよ。中には日本初や商業施設初となる店もあるの。どこから入ろうか迷っちゃう!」 |
なべさん・ミヤモ | 「いらっしゃい!よく来たね~」 |
そこに現れたのは、現場見学でも案内してくれた作業所長のなべさんと設計担当のミヤモさん。
ハザ丸 | 「おめでとうございます! いよいよ完成しましたね!」 |
なべさん | 「無事に終わって良かった〜!私を含め、現場の誰もが経験したことのない大規模工事で、解決すべき課題もありましたが、社内や協力会社の皆さんのご協力のおかげで今日を迎えられました。本当に人に恵まれた現場だったよ」 |
ミヤモ | 「おかげさまの大盛況で、本当にうれしいです!オープン後もいつでも来られるのが、商業施設を作る醍醐味ですね。お客さんが安全に過ごせて、迷子にならないように十分気を付けて設計したので、楽しい時間を過ごしてほしいです。あ、ご来店の際には、僕たち設計チームの自信作『ハチノス天井』もチェックしてくださいね!」 |
着工から約1年4ヶ月という大仕事を終え、こうしてお客さんが楽しむ様子を見て、2人とも喜びを隠せない様子。
ゲンバる人たちの自信作「ららぽーと富士見」、ぜひみなさんも足を運んでみてください!
<工事概要>
工事名称: | ららぽーと富士見新築工事・ららぽーと富士見立駐棟新築工事 |
所 在 地: | 埼玉県富士見市 |
発 注 者: | 三井不動産株式会社 |
設計・施工: | 安藤ハザマ |
工事概要: | 商 業 棟:鉄骨造 地上4階(店舗部分:地上3階) 駐車場棟:鉄骨造 地上5階 延床面積 約185,000m² |
用 途: | 商業施設・立体駐車場 |
取材時期: | 2014年11月 |